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部員2名から目指す甲子園〜人数足りないなら連合チームを組めばいいじゃない〜  作者: ウエス 端
夏の地方予選・2回戦

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128/185

第128話 シュート回転し始める

 試合は早くも6回表まで進んだ。


 スコアは1−1の同点のまま……両チームともに1回に1点ずつ入れただけ、しかもどっちもホームランによる得点。


 この結果だけで言えばおよそ高校野球らしくない展開だが、実際にはエラーもあればお互いにスクイズ失敗したりと結構高校野球っぽい内容なのだ。


 但し、一つだけオレ的に不満なことは……2打席目と3打席目に申告敬遠されたことだ。


 どちらもランナーが2塁まで進んでいたとはいえ……あー、ホームランが打ちてぇ!


 2020年春から高校野球に導入された当時は『へ〜』と他人事のように思っていたけど、まさか自分が地方予選から申告されるとは考えていなかった。


 まあ余談はこれくらいにしておこう。オレはマウンド上で甘岬あまみさき高校打線を相手に投げ続けている。


 先頭の9番バッターを仕留めて、今は次の1番バッターと対戦中なのだが……。


「うわあっ!」


「ボール! フォアボール!」


 遂にやっちまった。


 4回表のピンチでシュートを投げて切り抜けたのはいいが……徐々にシュート回転するボールが増えてきた。


 さっきのは左打者の足元に食い込む程度だったからいいけど。制球が定まらず意図しない変化とかし始めるといよいよヤバくなる。


 なんとか修正したいのだが、今のところは誤魔化すので精一杯ってところだ。


 とにかく次のバッターは何としてでも抑えないと。さらに次のバッターは3番の湖岳こだけ……極力ランナーを溜めたくない。


「タイム!」


 ん? 急に誰だ……ってウチのベンチか。伝令役の勝崎さんがそこそこの駆け足でマウンドにやって来る。


「貴重な伝令の回数使って、なんの用事でここに来たんですか?」


「お前なあ。自分でもコントロールがヤバい状態なのが分かってるだろ? もちろんそのことだ」


 やっぱりそうだよな。わかってはいたけど、何となく認めたくなくてつい悪態をついてしまった。


 そして周りを見渡すと、しょーたを始めとして集まった内野手全員が『そらそうよ』と言いたげな表情をしており、オレは現実を認めざるをえなかった。


「それはわかりました。で、ちょっと間を開けて気分転換させようってことですね?」


「いや違う。俺なりに思ったこと指摘しておこうと思って監督に許可もらった」


「つまり原因ってことですか。そんなの、投げる時に肩が開いちゃうからでしょ? 気をつけてますけど何故か悪化するんですよ。なあしょーた?」


「いや、おれよりもキャッチャー歴長い勝崎さんの思うところ、聞かせてほしいです」


「うん。それじゃ手短に言うけど、オージロウくんもよく聞いて……肩もだけど、それよりも踏み出す足の膝が段々と外側に傾いてきてる」


「膝、ですか」


「あとは手首の角度も寝てる。たぶん肩の開きに気を取られすぎて投球フォーム全体が崩れてきてるのが本当の原因かなって」


「なるほど、言われてみると。じゃあフォームを元通りに直すのに有効な方法は何ですか?」


「うーん。そんな都合のいいのは無いよ。自分の元のフォームを頭の中でイメージして、さっき言ったことを地道に修正するしかない」


「試合中にそんな悠長な……もっと手っ取り早いやり方はないんですか?」


「あくまで応急処置っていうなら……ボールの握りっていうか、人差し指と中指を中心から少し外側にしてみるとか」


「それってスライダーじゃないですか」


「うん。真っスラみたいになると思うけど、それでとにかくシュート回転は抑えられる……というのが俺の経験上の話。まあ参考にしてみて」


 勝崎さんは伝えたいことだけ話し終えるとベンチに戻っていった。


 だけど難しいな。実戦で投げながらフォーム全体を修正なんて。


 オレの不安が伝わったのか、しょーたはこのあとの方針を決めてくれた。


「とにかくフォームの修正に取り組もう。だから外角中心の組み立てにして……握りを変えるならサインはスライダーで首を振ってくれ」


「ああ、わかったよ」


「で、ダメそうならその次のバッターをどうするか真剣に考えないといけない」


 真剣にか。要するに湖岳を敬遠するってことだろうけど。


 そういうわけにはいかないな。何としてもここで修正しないと……やる気が出てきた。


 さて、2番打者が右打席に入ったからこちらも投球準備を始めよう。


 まずはセットポジションで一塁ランナーを牽制しつつ……軸足を安定させて、慎重に右足を踏み出す。


 そして膝がキャッチャーの方を向くように……そして左腕を振り下ろす!


「うりゃっ!」


「ど真ん中! もらったぁ!」


 バコォッ! と思い切り振り抜いたバットから芯を外した打球音が響き渡る。


「ファウル!」


「ちくしょう。カットボールか、真っスラ投げてきやがった。データにないぞ」


 バッターが文句をつけるかのように呟いてる。


 まあその通りで、保険として握りを変えておいたのだ。


 外を狙ったのが、まさかど真ん中に行っちゃうとは。まだ修正が足りないようだ。


 次も同じように慎重に投げ込む!


 ズバンッ!


「ボール!」


 今度は内角に行った。でもボールの勢いが戻って来たかな。自分でも安定し始めたのが……しょーたが立ち上がって送球体勢に入る。


 慌ててしゃがんだオレの頭上をボールが飛んでいく……フォームのことに集中しすぎて盗塁を仕掛けられちまった。


「セーフ!」


 あちゃー。これはオレの責任だ。


「スマンしょーた!」


「いいから投げる方を何とかしてくれ!」


 そうだな。安定して強いボールを投げられれば細かいことは気にしなくて済む。


 というわけで、オレは軸足を安定させてから踏み出し、キャッチャーミット目掛けて、力強くスピンをかけて投げつける!


「うりゃああっ!」


 いいぞ、狙い通りに外角へ強いボールが……しまった、スライダーの握りのままだった。


「中に入ってきたボール、いただき!」


 バシィーッ!


 ファースト横へ強くて低いライナーが!


「抜かせんっ! うがあっ!」


 パシッ!! とグラブから響き渡る捕球音!


 中地さんが逆シングルでバッチリとキャッチしてくれたぜ!


 飛び出しかけてた二塁ランナーは……残念ながら戻ってしまった。


 それでもあの男が打席に入る前に1点リードを許さなかったのは大きい。


「中地さん! ナイス守備でした!」


「ヘヘっ。俺だってやりゃあできるんだよ」


 これなら行ける。自信を持って強いボールを投げ込んで湖岳と勝負できるぜ……!

いつも読んでいただいてありがとうございます

次の更新は11月24日(月)朝方の予定です

よろしくお願いします

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