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部員2名から目指す甲子園〜人数足りないなら連合チームを組めばいいじゃない〜  作者: ウエス 端
夏の地方予選・2回戦

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第127話 何処に投げれば

「申告敬遠しないってことは、勝負するってこったな? そいじゃ4打席連続ホームランは達成したも同然やね!」


 右打席に入った甘岬あまみさき高校の湖岳こだけは人が良いのか挑発的なのかよくわからん煽りを入れてきた。


 まあ、煽ることで相手ピッチャーへの闘志を高めてるのかもしれん。


 それにイチイチ返したりはしないが、オレも左手に持つボールをじっと見ながら集中力を高めていく。


 さて湖岳に対しては投球をどう組み立てようかな。


 前の打席で感じたのは……狙い球がどうこうよりも、まずはストライクゾーン内に甘く入るのを極力避けねばならない。


 とにかく湖岳が『打てる』と思ったら驚異的なスイングスピードと反射神経で捉えられてしまうのだ。


 あえて言えば手元で鋭く落ちる変化球があれば有効だと思うけど……オレにはそういう持ち球が無いのだから仕方がない。


 さて、セットポジションで静止して。一応は2塁ランナーを視線で牽制して……。


 初球は外角高めを攻める!


「うりゃああっ!」


 ズバンッ!


「ボール!」


 うーん。ストライクゾーンからホップしてノビる高めのボールに反応無しとは。


 これまで数々のバッターからこのボールで空振りを奪ってきたというのに。なんであんなに余裕を持って見切れるんだろう?


 同じストライクゾーン内でもある程度は好きなコースみたいなのがあると思うのだが、実際に試しながら投げるのはさすがに怖い。


 でも何処かには投げないと……じゃあここをもう一度試そう。


 前の打席で空振りさせた、内角高め!


「うりゃああっ!」


「……!」


「ボール! カウント2−0!」


 1球目よりは僅かに反応あり! やっぱり内角の方が思わずスイングしたくなるってか?


 でも実際に打たれたのは外角低め……判断するのは早い気がする。


 というわけでここはどうしても確かめざるを得ない。


 3球目は、外角低めストレート!


「うりゃああっ!」


「……」


「ボール! カウント3−0!」


 反応は薄かったけど、外角高めに比べたらちょっとした目の動きとかバットの揺れ方とか動きはあった。


 うーん。何となく見えてきたような、そうでもないような。


 などと考えていたが、甘岬高校側スタンドからヤジが飛んできて集中しづらい。


「申告敬遠しなくても結局逃げてんじゃん!」

「そんなにビビるならピッチャー交代したほうがいいぞー!」


 うっせーな。こっちにはこっちの考えがあるんだっつーの。


 まあそうは言っても、一つもストライクが入っていないのは事実。ここからどう攻めていこう。


 ……オレ的には諦めた。しょーたもその可能性を考えて守備位置の指示を出していたはず。


 というわけでコントロールミスがないように、そしてバッターだけに意識を集中する。


 ランナーは俊足ではないようだが、そっちの警戒はしょーたに任せる!


 セットポジションから力強く右足を踏み出して。


 4球目はインコース胸元だ!


「うりゃあああっ!」


「るおああっ!」


 バコォッ!


 うっしゃ! ノビるストレートを詰まらせてキャッチャーフライ……。


「ファウル!」


 バックネットまで行ってしまった。惜しいなあ。


「あんなに押し込まれるとは。反応をもっと早めて引っ張らないと」


 湖岳が険しい表情でブツブツ言っているけど、こちらも考えがあって投げたボールなのだ。そしてほぼ狙い通りと言っていいかな。


 そういうことで、5球目もほぼ同じコース!


「うりゃあああっ!」


「続けるか! るおああ!!」


 バコォーーッ!


 さっきよりは捉えてきた! だがっ!


「ファウル! カウント3−2!」


「引っ張ったつもりが1塁側スタンド……まだ押されてる」


 湖岳は戸惑いを隠せない様子。


 でも本人だって問題には気づいてるはずだが。


 まあ、自分でいうのもなんだが並のストレートならレフトスタンドに力で持ってかれてると思うから、同じようにできなかったことに戸惑ってるのかも。


 さあ最後のボール……向こうも追い込まれたからゾーンギリギリなボールでも手を出してくるだろう。


 もちろん同じところばかり続けるのは怖いよ? タイミングも合ってきてるし、次はもっと合わせてくるかも。


 だけど、他のコースでは結果どうなるか見込みが立たない。ならば少しでも見込めるところで乾坤一擲の一撃を放つのみ。


 ということで6球目はギリギリを狙う内角高めストレート!


「うりゃあああっ!!」


「……るおあああっ!!」


 バコォーーンッ!


 詰まり気味の打球音にも関わらず、打球は勢いよくセンターへ飛んでいった。


 オレは……もうそっちを見るつもりはない。


 渾身のスピンをかけて目一杯体重を乗せて投げつけてやったんだ。絶対にパワーで負けたりはしない。


 単純な話だが、どこに投げても捉えられるなら三振を諦めて力で押し切るしかない。それを最もやりやすい場所、内角高めで勝負しただけだ。


 というのも湖岳は、内角高めだけは余裕を持ってボールを見送れていない。


 内角打ちは基本的に腕をたたんでコンパクトなスイングになるけど、高めはかなり窮屈なスイングになりがちだ。


 湖岳もまさにそのパターン……それで振り切ることに気がいって余裕が無いのだろう。


 他のコースは反射的に振り切れるけど、内角高めは僅かながら始動が遅くなるので判断に余裕が少ない。


 本人もわかってるだろうけど、フォームの修正には結構時間も手間もかかるからなあ。


「バッターアウト!」


「やっぱり届かんか。それにしてもパワーで押し負けるなんて」


 湖岳が嘆くのが聞こえてきた。まあ、他のコースだったら勝てたかわからんけど。


 外野に目を向けると、深い守備位置を取っていたセンターがライト側へ数歩移動したところで、ボールをグラブに収めているのがオレにも見えた。


 よっしゃ! これでワンアウト!


 いや一つにしては大き過ぎるアウトなんで、ウチの野手たちはみんな安堵した表情なのがわかりやすいぜ。


 でも喜んでばかりもいられない。二塁ランナーはタッチアップでワンアウト三塁のピンチなのは変わらない。


 続く4番キャッチャー稔田みのだは強攻策か、それとも……。


 初球はここで様子見だ、うりゃっ!


「外角高め……弾き返す!」


 ズバンッ!


「ストライク!」


 強攻策か。結構思い切ったスイングだったけどオレの投げたボールの通過の方が速かった。


 次はどうするしょーた……まだ警戒はしてるのか。


「うりゃあっ!」


「ボール!」


「これでいいぞオージロウ!」


 バシッと勢いよく返球をキャッチすると、しょーたの指の動きをよく見て……今度はそれで行くのか。


 まあ後先考えてたら失点を防ぎきれない。


 行くぞ、3球目は外角高めストレート!


「うりゃあああっ!」


「もらった!」


 バントの構え! やっぱりスクイズか!


 しかししょーたは読んでいた。


「うわっ! ボールがいきなり外へ曲がった!?」


 ズバンッ! とバントが届かずにボールはミットに収まった。オレは取っておきの変化球シュートでバントを空振りさせたのだ。


 オレの場合、シュートを投げるとその後投げるストレートがシュート回転になる危険もあるのだがやむを得ない。その時はその時さ。


 ランナーをアウトに……いや飛び出していない。セーフティスクイズかよ。


 だがスクイズを見破って空振りさせたのが気持ちよくて。勢いに乗ってバッターを仕留めに行く!


「うりゃあああっ!」


 ズバーンッ!


「ストライク! バッターアウト!」


 稔田に粘らせずに終了。そして次のバッターも三振に切って取ったオレたちは、ようやくピンチを脱することができた。


 この調子で早く追加点を取りたい……!

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