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部員2名から目指す甲子園〜人数足りないなら連合チームを組めばいいじゃない〜  作者: ウエス 端
夏の地方予選・2回戦

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125/187

第125話 迷い

「外角低めツーシーム、もらったです〜!」


 3回裏の攻撃で9番のひょ〜ろくくんが外角へ逃げていくボールをバシッ! と右へおっつけた。


 強いゴロが一二塁間へ……そこを抜けて打球はライトまで到達。練習試合も含めて遂に初ヒットが出たのだ!


 これぞ古池監督との特訓の成果と言っても過言ではない。


 彼が非力というか、ボールを捉えたインパクトの瞬間に力が上手く伝わらない原因は構えにあったのだ。


 グリップを握る両手に力が入りすぎて、スイングする際に逆に力が分散していた。


 そこで監督は、昔のとあるプロ野球選手がやっていた『こん◯ゃく打法』を参考にして、脱力の構えを身に着けてもらって……見事に実を結んだというわけだ。


「やったなひょ〜ろくくん! おめでとう〜!」


 ベンチからの祝福の声に塁上で照れるひょ〜ろくくん。1回戦ではスタメンを外れていたし、心の中では大喜びしているに違いない。


 さて、一死一塁で打順は1番のしょーたに戻った。チャンスを広げてオレに回してくれ!


「あだぁあっ!!」


「デッドボール!」


 なんと、腰のあたりにスッポ抜けたボールを避けきれずに当たってしまった。


「おいしょーた! 立ち上がれるか?」


「イテテ……当たったのはお尻だから問題ないよ。とにかくチャンス広げたから、あとは頼んだぞ!」


 しょーたはお尻を掌で擦りながら立ち上がり、1塁へゆっくり駆けていった。まあ大丈夫そうだな。


 それにしてもコントロールのいい鎌刀かまとがあんなボール投げるなんて……自分で言うのもなんだが、オレが控えているからランナーをこれ以上出したくないって力が入ったのかな。


 何にせよ、ここでオレが2打席連続ホームランを打てば一挙に3点が入る。


 さっきはスライダーを打ったけど、相手バッテリーはどういう攻め方してくるかな? それによって狙い球が変わるし……。


 などと考えていたら相手ベンチから伝令が出てきた。ちょっと早いかなと思うけど、ここが勝負どころと考えているのだろう。


 間をとってピッチャーを落ち着かせる……それともピッチャー交代だろうか?


 いや、鎌刀はマウンドに立ったまま伝令が戻っていく。


 それならあとは狙い球を絞るだけ。さあどれにしようか……。


「バッター、1塁へ行きなさい!」


「へっ!?」


「申告敬遠が相手から出てるよ」


 ま、マジか。まさか2回戦で……いや一発勝負の高校野球において迷いは許されない。こういうピンチになればそうするのをあらかじめ考えていたのだろう。


 だけど一死満塁でランナーが3塁まで進んでしまったのだから、果たしてどっちの方が良かったのやら。


 ここは中地さんに託す……前の打者が歩かされた屈辱をバネに是非タイムリーを!


 と思ったが、中地さんの顔を見て嫌な予感を覚えた。緊張と気負いが入り交じったガチガチの表情で打席に入ってきたのだ。


「中地さーん! しっかり見て振っていこー!」


 1塁ベース上から大声で呼びかけたが反応がない。完全に入り込んじゃってる……!


 2塁にいるしょーたを見たが、やはり打つ手が無いようだ。せめてしょーたがベンチにいたら、もっと近いところで声をかけられるのに。


 逆に一息入れて落ち着きを取り戻した鎌刀はセットポジションから各塁のランナーを鋭い視線で牽制し、そこからしっかりと外角に投げ込む!


「ストライク!」


 初球は外から中に入ってくるバックドアのスライダー。しまった……さっきの声がけが裏目に出た。


 いつもは早いカウントから思い切りよく打っていくのが中地さんの良いところなのに……呆然と見逃しちゃった。


 2球目は、内角高め……いやボール球!


 ブンッ!


「ストライク! カウント0−2!」


 今度は焦ってボール球を振らされた。このままじゃ……。


 ベンチはどうする気だ。このまま任せるのか。


 と、ここで古池監督からサインが出た。うーん、今になって……だが出た以上はやるしかない。


 そして3球目は、ど真ん中……からの!


 スカッ!


 スクイズバントが見事に空振った!


 相手バッテリーはそれを見透かしたかのように鋭く落ちるフォークを投げてきたのだ。


 ただでさえバントが苦手な中地さんにその対応は難しかった。


「挟まれたです〜!」


 そして飛び出していた3塁ランナーのひょ〜ろくくんも挟撃プレーであっさりアウト。


 あっという間にスリーアウトチェンジ……。


 ピンチを脱して笑顔で引き揚げていく甘岬ナインとは裏腹に、重苦しい雰囲気に包まれた我らが連合チーム。


 選手もベンチも全て裏目に出るという……こういう時に迷いという形で実戦経験の差が出てしまうのかもしれない。


「すまない。こっちの判断ミスだ」


 落ち込みながらベンチに戻ってきた中地さんに古池監督がフォローを入れる。オレとしょーたもドンマイと声をかけつつ守備につく準備を急いだのであった。

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