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部員2名から目指す甲子園〜人数足りないなら連合チームを組めばいいじゃない〜  作者: ウエス 端
夏の予選前の練習試合編

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120/186

第120話 マジ本気

 1−1の同点に追いつかれた直後の4回裏の攻撃。


 先頭打者はしょーた。出塁頼んだぜ!


 というオレの願いは残念ながら難しいようだ。


「ファウル!」


「ダメだ! 引っ掛けないように引きつけたらファウルになってしまう!」


 しょーたも坂平の手元で変化する変化球には苦戦させられている。


 軌道が読めていればもう少しポイントを前に置いて打てるんだろうけど……坂平はツーシームもカットボールも1球ごとに変化を微調整して投げてくる。


 かといってギリギリまで引きつけて見極めると、外野に弾き返すのにある程度パワーが必要になるんだよなあ。


 そして追い込んだら恐らくあれを投げてキメに来る。


「前の打席みたいに粘られるとダルいからさぁ、さっさと終わらせるよ〜? オラッ!」


 内角膝元へ……鋭く落ちるカットボール!


 バコォッ!


 前の打席と同じボールでやられまいと、何とか食らいついて前に飛ばしたしょーた。


 だが結果はショートへのボテボテのゴロ。


 仕方がない、2打席連続ホームランを目指すか……とネクストバッターズサークルから立ち上がった瞬間だった。


「うわっ! バウンドが!」


 ショートがゴロを捕球する直前で、バウンドが急に跳ねて取り損なったのだ。


 うっしゃ! ラッキーでも何でも、勝ち越しのランナー出塁だぜ!


 まあでもショートの人からすればアンラッキーなわけで……敵ながら心の中でドンマイと言っておく。


 坂平は……うわぁ。


 明らかに不機嫌な顔でマウンドの足場を固める、というか強く踏みつけたり蹴ったりしている。


 ショートの人は完全に引きつった顔で、恐る恐る頭を下げてる。


 打ち取った打球をエラーされたら腹立つのは、オレもわかるよ?


 でもあんな風に態度に出されたら……。


 だが他の野手がたしなめる様子もないし、チームメイトを威圧して支配してるんだろうな。


 それはともかく、今は打席に集中しよう。せっかくのチャンスを生かして、新連合チームの練習試合の戦績を無敗で締めくくるのだ。


 オレは左打席で気持ちを高めながら構える。


 そして坂平は投げる前に不気味なことを言ってきた。


「このままお前にやられっぱなしじゃあ、腹立って今晩眠れそうにないからよぉ。コスパ悪いけどマジ本気出すわ! キャッチャー、ちゃんと捕れよ!」


 あれ? マジと書いて本気と読む……いや逆だっけ。散髪屋に置いてたかなり古いヤンキー漫画のセリフに従えば、同じことを2回続けていってるんじゃ?


 ってそんなこと考えてる間にヤツは投球フォームに……お、オーバースローだと!?


「オラァッ!!」


 ズバンッ!!


「す、ストライク!」


 球審も思わず驚くような変わりよう!


 これまでとは比べ物にならない球速のフォーシーム……!


 ほぼど真ん中なのに手が出ない威力だった。


 オレが動揺してるのを見透かしてか、ヤツは間を置かずに2球目を、またオーバースローで!


「オラァッ!!」


 真ん中……いやさっきより低め!


「うりゃああっ!」


 バチィーッ!


「ファウル!」


 クソッ! 振り遅れて打球は三塁側スタンドへ!


 それにしても手が痺れてる……ヤツが長身なのもあってボールに角度があって、微妙に芯を外したか。


 だがこれでタイミングは掴めた。次もフォーシームで甘いコースなら……!


「最後はこれでトドメ刺すぜ! オラァッ!!」


 さ、3球目はほぼサイドスローだと!?


 だが真ん中高めでコースが甘い。そんなチャチな目眩ましは通じねえぜ!


「うりゃあああっ!!」


 バコォッ!!


 い、痛えっ!


 両手がメチャ痺れる……そして打球はファースト側ファウルソーンへのポップフライ。


 パシッ!


 そのまま一塁側スタンドに……という願いもむなしくあっさり捕球された。


「これでグッスリ眠れるわ〜。ハハッ!」


 ちきしょう。こうなった原因は分かってるだけに余計に悔しい。


 バットでボールをとらえようとした瞬間、オレの目に入ったのは……急激にオレの方へと真っ直ぐ曲がってくるボール、つまりシュートだった。


 それにしてもあんな手元からあのキレ……伝説のカミソリシュートはこんな感じだったのだろうか?


 これで終わりか……いや阿戸さんが後ろに控えているのだ。


「オージロウ! 手は大丈夫なのか?」


「まあ何とか。ヤツはシュートを投げてくるんで注意してください」


「わかった。あとは任せろ」


 阿戸さんは意気込んで右打席に入る。そして……。


 グワッシーンッ!


「クソがっ。前の打席じゃ空振りしたボールをなんで?」


 坂平は阿戸さんをナメてマジ本気を出さず、前の打席と同じく内角膝元にカットボールを投げたのだが。


 阿戸さんは見事にとらえて、ホームラン……いや残念。


 パシッとレフトがフェンス手前でキャッチしてしまった。打球が高く上がりすぎたかな。


 何にせよ、阿戸さんは前の打席の出来事を払しょくできたみたいで良かった。


 そして試合はこのまま両チーム勝ち越し点をうばえず、結局引き分けで終わった。


 まあ、八ツ頭学園は午後から多岐川とも試合があるのでこの試合は5回で終了だからやむを得ない。


 オレはなんか疲れて、ベンチに座ってからしばらく立ち上がれなかった。

いつも読んでいただいてありがとうございます

次の更新は11月15日(土)朝方の予定です

よろしくお願いします

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