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部員2名から目指す甲子園〜人数足りないなら連合チームを組めばいいじゃない〜  作者: ウエス 端
夏の予選前の練習試合編

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第118話 阿戸さんの伝説

「なあお前。もしかして『タコ殴りの阿戸』じゃねーの?」


 マウンドの坂平が右打席に入った阿戸さんに向かって、よく分からない二つ名みたいなので呼びかけた。


 普段は相手から挑発されても動じない阿戸さんだが、この時ばかりは顔面の血の気が引いていくのがはっきりわかるほどだ。


「……俺はテメーと会ったことなんてねえんだが。なんでそんな呼び名知ってんだよ?」


「こう見えて顔が広いからさー、俺の知り合いでそういうのに詳しい奴がいて。聞いてた顔の特徴とかピッタシだし、名前も珍しい方だからさあ」


「……で、何が目的なんだ、テメーは?」


「何もねーよ。ただ気になったから尋ねただけ」


「あぁ!?」


「だってお前、中学時代に族を相手にして派手な喧嘩やらかして、あまりに凄惨だったから所属してたシニアチームを大会出場停止に追い込んだって。そんな伝説の持ち主らしいじゃん?」


「……出場停止にはなってねーよ。俺が自分から辞めただけだ。勝手に捏造すんじゃねえぞコラァ!」


「それは俺じゃねえよ。言ったろ、聞いたことあるから尋ねただけだって。それともここで言っちゃ、マズかったのかな〜?」


「君たち。お喋りはいい加減にしてプレーに集中しなさい!」


 球審から注意を受けて、一触即発の雰囲気はとりあえず収まった。


 確かに阿戸さんは見た目チャラいヤンキーだけど、そういうスタイルなだけだろうと思ってたのに。


 ところで『タコ殴り』ってなんだろう。ヤンキー用語っぽいけどよくわからん。タコで相手を殴るとか……さすがにないか。


 後で監督たちに聞いてみたところ、どうやら比較的古くからの用語で『多数で一人を殴る』『一人で喧嘩相手をフルボッコにする』みたいに場面や地域で意味が変わるらしい。


 それはともかく、坂平はオレにホームランを打たれた直後にも関わらず、これまでと同じスタイルを貫いてツーシームとカットボールだけで投球を組み立てている。


 阿戸さんは2球連続で明らかにファウルを打たされてから……。


 ブンッ!


「ストライク、バッターアウト!」


「ハハッ、バットを派手にぶん回してくれるから3球で片付いたわ〜!」


 内角低めに落ちるカットボールであえなく三振した。


 阿戸さんにとって最も得意なコース……いつもならヒットにはできなくても最低限ファウルで粘るのに。


 ちくしょう。完全に坂平の思うツボになっちまったぜ。


 トボトボ歩いてベンチへ戻って来る阿戸さんにオレたちはなんて言えばいいのか分からず、誰も声をかけない。


 いや、キャプテンのしょーたが近づいていく。


「あの、おれたちここで何も聞いたりしませんから。今まで一緒に練習してきたおれたちは、阿戸さんのことよく知ってますから」


「……すまねえ」


 そうだ、腫れ物に触るみたいな扱いも良くない。オレも阿戸さんに声をかけよう。


「二つ名とか伝説とかあるらしいですけど、オレはビビって避けたりしませんから。なにせオレのほうがデカいホームラン飛ばしますからね、ハハハ!」


「お前はひと言多いんだよ! 次はお前よりデカいの打ってやらあ!」


 な、なんか怒らせてしまった。慰めるのは難しいなあ。


 でも阿戸さんは顔を上げてベンチにグラブを取りに行った。とにかく元気は出たみたいだし、オレも八ツ頭打線をこのまま抑えてやる。

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