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部員2名から目指す甲子園〜人数足りないなら連合チームを組めばいいじゃない〜  作者: ウエス 端
夏の予選前の練習試合編

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第114話 八ツ頭学園のキャプテン登場

「さあ〜、張り切ってやるぞ〜!」


 オレたちは朝起きてメシを食ってからすぐにグラウンドへ飛び出した。


 昨日の夕方から降り始めた雨は夜中に止んだみたいだが、試合ができる状態か心配になったのだ。


 マウンドとホームベース付近には防水シートを張っておいたが果たして……恐る恐るグラウンドに入る。


 そうして実際に確認すると、ところどころ水たまりができていたが状態は悪くない……ホッと安堵するオレたち。


 というわけで、多岐川高校があらかじめ用意してくれた雑巾や吸水スポンジを使って少しでも乾かそうと、オレたち全員で手分けして作業を始めたところだ。


 八ツ頭学園が到着するまで時間はまだあるとはいえ、今日は午前中がウチと八ツ頭、午後は多岐川と八ツ頭でタブルヘッダーの予定なので、試合開始があまり遅れないようにせねばならない。


「ふう。これくらいでいいかな」


「おはようオージロウ! 朝から頑張ってるじゃない!」


 姉ちゃんの声だ。女性陣がいつの間にかグラウンドに到着していたのだが作業に夢中で気がつかなかった。


「おはよう。とにかく試合できるようにしないといけないからさ」


「わたしたちも手伝おうっか?」


「いや。それよりも部室棟の大部屋と食堂の掃除を頼むよ。今日は試合が終わったらすぐに引き上げる予定だからさ」


「わかった……のはいいのだけど」


「雛子さん……いやコーチ、おはようございます! おれに試合前の気合いの注入をお願いします!」


「ぼくにもよろしくです〜!」


 しょーたとひょ〜ろくくんが目ざとく姉ちゃんの姿を見つけて面倒くさい要求をしてきた。


 しょーたのヤツ、まただらしない顔して……深夜のあの真剣な眼差しは何処へ消えたんだ?


 オレは呆れつつも注意しようとしたのだが、ここで予想だにしない展開が待っていた。


「しょーた! 雛子先輩が迷惑そうにしてるのがわからないの!? いい加減にしなさいよね!」


 なんと、昨日は姉ちゃんに張り合っていた鯉沼さんがしょーたの前に立ちはだかったのだ。


「な、なんでよっちゃんが。関係ないだろ!」


「いいえ、関係あるから! あたし、雛子先輩のためなら何でもするって決めたの。どうしてもっていうなら、あたしが先輩に代わってアンタたちに気合いを注入してやろうかしら!?」


「よ、よっちゃんのやり方はおれが望んでるのとは違うから! お助け〜!」


「ひいっ! なんでぼくまで〜」


 2人は鯉沼さんの迫力の前にさっさと逃げていった。いったい何がどうなってるんだ?


「ありがとう。助かったわ、よっちゃん。でも、わたしのためにあそこまでしなくてもいいのよ?」


「いえ、しょーたはあれくらいしておかないとすぐ調子に乗りますから。それに先輩のお役に立てるなら何でもないです!」


 なんなんだ、この甘い雰囲気は……昨日の状態からはとても想像できない光景だ。


 それはともかく、今度は向こうから由香里さんと仲尾さんが並んで歩いてくる。ヤバい、一触即発の状況じゃないか!


 と思ったが、今のところ何事もなく姉ちゃんに近づいてくる。


「ひなちゃん、何かあったの?」


「いえ、何も。それよりもオージロウから部室棟の掃除を頼まれちゃって。今から行こうかなって」


「それなら私に任せて。先に行ってあらかた片付けといてあげる」


「それには及ばないよ由香里ちゃん。多岐川の女子マネであるあたしがやった方が早いんだから」


「でもね彩乃ちゃん。私、昔から掃除とかお片付けが得意なの」


「……それならどっちがより多く片付けられるか勝負しない?」


「うふふ、望むところよ。ひなちゃんはゆっくり歩いてくればいいからね!」


 2人は猛ダッシュで部室棟に向かった。


 昨日は『ただ取り合うだけの関係』だったのが『ライバル関係』に変化している。


 姉ちゃんのヤツ、自分を中心として拗れた女子の人間関係を、たった一晩でここまで修復したというのか。


 目を丸くして何も言えないオレの心を見透かしたように、姉ちゃんはフフンとオレにだけドヤ顔を見せた。


 なんというコミュ力モンスター。我が姉ながら恐ろしい人……!



 色々と準備も済んで、あとは八ツ頭学園の選手たちを出迎えるだけとなった。


 まずはオレとしょーたで相手のキャプテンと挨拶を交わすべく2人並んで待っている。


「えーと、八ツ頭学園ってこの県下では有名なヤンキー校なんだよな?」


「オージロウ、また話をちゃんと聞いてないな」


「悪い……もう一度教えてくれ」


「それは7年前までの話だ。その頃に学園の経営者が変わって、悪名を払しょくすべく様々な改革をしたんだよ。共学化にヤンキーたちを更生させる手厚いサポート……今では県内でもスポーツが盛んな高校として躍進してる」


「野球部もか」


「ああ。この数年で甲子園が狙える所まで急激に強くなってる」


「そうなのか……あっ、来た来た」


 すげー! 40人くらいいるんじゃないか?


 でも恐らくもっといるんだろうな……今日はさしずめ1軍と2軍を連れてきたってか。


 それだけウチと多岐川を要注意の相手と認識してるってことだろう。ダブルヘッダーでも準備万端ってわけだ。


 そしてその先頭を歩くのは……身長は180半ばくらいで細マッチョな体型、そして浅黒い肌のちょいワル風イケメンの男だ。


 もしかしてあれが……。


「アンタらのどっちかが連合チームのキャプテンかな? 俺は八ツ頭学園キャプテンの坂平さかひら。今日はよろしく」


「ああ、どうも。おれがキャプテンの田中です。こっちは山田」


「……へえ。アンタが噂のオージロウくんか。お手柔らかに頼むよ」


 一見穏やかな微笑みでオレたちに挨拶する坂平という男……口調も爽やかで、とても中学時代に悪行三昧だったとは思えない。


 だが、次の瞬間にオレたちは凍りついた。


「あっ。そこにいるのって、確かひょ〜ろくくんだっけ? 中学時代はすぐやめちゃって残念だったよ〜!」


 お、覚えてやがる! 1ヶ月で辞めた新入生のことを!


 ひょ〜ろくくんはウチの他の連中に紛れ込ませていたのに……目ざとすぎる。


 何よりも笑顔だけど目が笑ってない。ひょ〜ろくくんは身体が固まっちまってる。


 まさに不意打ちでもオレとしょーたもどうしたら……。


「あー、坂平さん! こんちわっす!」


「おう、田白と能町も連合チームにいたのか。それなら連絡くれたらよかったのに」


「へへっ、色々忙しくて」


 ふう。田白たちが間に入ってくれて助かった。


 でもにこやかに接してる田白の首筋には汗が……。


 やっぱり聞いてる通りの人物なのか、それとも高校では更生したのか。


 気が抜けない1日となりそうだぜ。

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