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部員2名から目指す甲子園〜人数足りないなら連合チームを組めばいいじゃない〜  作者: ウエス 端
夏の予選前の練習試合編

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第113話 しょーたの中学時代を語ってもらう

「よっこらせっと。しょーたも横に座れよ」


「それはいいけど、その掛け声はオッサンみたいだぞ」


「今日は久しぶりに試合でキャッチャーやったから太腿が張ってるんだよ……まあとにかく座れ」


「はいよ」


 オレたちはみんなが寝静まってから洗面所横の休憩スペース……といっても壁沿いに長椅子が置いてあるだけなのだが、そこで話そうとしている。


 それでも十分だ。しょーたが話しづらかった中学時代のことを聞かせてもらうには。


「で、多岐川第三の木崎とは何があったんだ? んん?」


「いきなりピンポイントで質問かよ……そうじゃなくて順番に話させてくれ」


「だってオレはそれしか知らねーんだから。まあいい、しょーたが思うように話してくれ」


「コホン……まずは中学1年生の春、大化東おおばけひがし中野球部に入部したところから始めよう」


「えー! そんなまだるっこしい事しないで面白いところだけでサクサク進めろよ」


「おれはそんな器用なことできない。それに多分面白くはないと思うぞ……その時の新入生はおれを含めて6人で、その中に木崎もいた」


「ヤツとは最初から仲が悪かったのか」


「そうじゃない。っていうか、みんな仲が良くて。練習が休みの日でもおれの家に集まって一緒に宿題やったり遊びに行ったり、テクニックを教えあったり……楽しかったなあ」


「なんでしょーたの家で?」


「入部当初からおれが6人のリーダー格みたいなもんだったから。自慢じゃないが、その時は6人の中で実力が頭一つ抜けてたんだ」


「へえ〜、あの木崎よりもか」


「ああ。小学校時代のおれは、兄貴に練習を見てもらえて色々テクニックを身に着けてたから。だから正確には『実力が上に見えてただけ』だった」


「そりゃシンイチさんに教えてもらえたら、そうなるのも納得だな。でも中学時代も練習したんだろ?」


「したさ……でもどこか『おれがこの中で一番だ』って驕りがあったんだろうな。昔の栄光にすがるみたいにやり方を根本的に変えなかった」


「つまりこうか。しょーたの実力が伸び悩む間に木崎に追い抜かれたと」


「2年生になったあたりからね。おれは元々サードだったけど、あっという間にポジション奪われた。それから他の4人も覚醒したかのようにドンドン抜かれて……気がついたら全く手が届かない位置まで突き放されてた」


「それで木崎みたいにしょーたをバカにし始めたのか、他の4人も」


「違う! 確かに実力では追い抜かれたけど、みんなはおれが色々教えてくれたからだって持ち上げてくれた。兄貴からの受け売りなのにね……。それで総体が終わって新チームになっても、おれをキャプテンに推薦してくれたんだ」


「じゃあなんで今はあんなことに」


「まずは試合で出番を失い始めてから歯車が狂い始めた。下の学年にも打力が伸びてきたヤツが出てきて、おれはベンチを温めることが多くなって。3年になったら木崎たちの態度が少しずつ変化してきた」


「なんだよそりゃ、ひでえな」


「最後まで聞けって。でもそれはバカにするとかじゃなくて、戦力としてはアテにしないってだけでキャプテンとしては尊重してくれてた」


「ふーん。そういやユーティリティプレイヤーになったのも関係があるのか?」


「ああ。チームの役に立ちたい……ってのは表向きで少しでも試合に出たかったからだけど。それ自体は評価してもらえたよ」


「ということは……最後の総体で何か決定的なことが起きたってことか」


「うん。その前提として、木崎たちの実力はこのあたりじゃ突出したレベルになって、もしかしたら全国まで行けるかもって評判が立つほどになった」


「へえ〜。で、しょーたはどう振る舞ってたのさ」


「そこからが最悪なんだよ……思い出したくないくらいに」


 頭を抱え込んだしょーたを見てもうやめようかと思ったが……いや、この際だから全部吐き出してもらおう。その方がスッキリして前を向けるはず。


 オレはそう信じて続きを促すことにした。


「辛いだろうけど全部出しちゃえよ」


「そうだな、オージロウになら。おれは急に怖くなったんだ。このままじゃ木崎たちに置いていかれる、見捨てられるって」


「それで」


「あろうことかキャプテンとして尊大に振る舞っちまった。今から思うと存在感を示したかったんだろうな。木崎たちに『おれが色々教えてやったから、おれがチームを纏めてるから上手くいってるんだ』って態度でイキがってしまった」


「うわぁ……それはオレでも引くわ」


「それでも木崎たちはおれを立ててくれたのに……あと少しで全国大会進出って試合でおれはやらかした」


「な、何をさ」


「おれは負傷したショートの代わりに入ったんだけど……一死満塁のピンチでゴロが来て。1塁ランナーが俊足だったからセカンドかホームどっちに投げようか迷いが出て、気が散ったせいか……トンネルやらかした」


「それで負けたのか」


「いや、まだ1点リードして最終回の裏まで行った。守りきれば勝利ってところでおれは決定的なミスを」


「……聞いてもいいか?」


「ああ。二死二、三塁でまたもやおれのとこに打球が来て、慎重にさばいて……でもミスできないって緊張したせいか指がちゃんと動かなくてファンブルしちまった。その後も焦ってボールを何度も取り損なって、一気にサヨナラホームインされた」


「……」


「おれのミスのせいで負けたんだ。普段は尊大にしてたくせに、ここぞという時にやらかして……その後の木崎たちのおれに対する態度は知っての通りさ……ウウッ」


 なんとまあ、そんなことがあったとは。


 これで木崎が『自分たちの活躍にタダ乗りした』『肝心なところでミスをする』ってしょーたを罵った理由がわかった。


 そして、しょーたが普段テキトーな感じで振る舞ってるのは、この体験が原因なのではと思った。


 連合チームのキャプテンをなかなか引き受けなかったのも……責任のある立場に自分はふさわしくないと思ったのかも。


 それじゃ姉ちゃんの前でだらしなくしてるのも……いやあれは本能そのままって感じだから関係ないか。


 それはともかく、オレはしょーたがこの後話すであろう言葉を否定するつもりだ。過去にやらかしたのは事実だが、それを真に悔いているヤツこそ連合チームのキャプテンにふさわしい。


「なあオージロウ。おれなんてやっぱりキャプテンにふさわしくないだろ? 今からでもお前が」


「いいや! さっきの話を聞いて、オレは益々しょーたにしか務まらないと思った。だから意地でも交代しねーぞ」


「なんだよそれ。どうなっても知らねーからな」


「大丈夫、このオレがいる限り連合チームに負けはない」


 フフッとお互いに声が出て、ようやくしょーたにも笑顔が戻った。


 これで明日は八ツ頭学園の例のキャプテンに2人で対峙できる。どんなヤツが来ようが負ける気がしねーぜ。 

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