第111話 捕球し損ねる
「うりゃあああっ!」
バシィーンッ!!
「これも駄目なのか〜!」
石元さんの内角に食い込んでくるスライダーを振り抜いたオレの打球は、自分で言うのもなんだけどミサイルの如くライトスタンドに突き刺さった。
今回はスライダー攻めだった。フォークは見せてもらえなかったな……。
そういやカーブはこの試合で1球も投げてないんじゃないか?
それに結局石元さんが一人で投げきるみたいだし。
どんな控え投手がいるかを見れたらよかったんだけど、やっぱり意図的に隠しているのだろうか。
まあそれを考えるよりもオレにはやることがある。
この練習試合は6回で終了のルール。そしてこれから6回裏でウチは守備の時間なのだが。
マウンドには5回からショートの大岡が上がっているので、オレはDH解除となってキャッチャーとしてプレーしている。
こちらも轍くんは投げさせないことを決めていたのだ。ここで余計なデータを相手に与える必要はない。
それはともかく、予報通り雨が降ってきそうだ。既にポツポツと頭上に感じることがある。
というわけでさっさと終わらせよう……と思っているのだが。
「うわっ! しまった!」
「何やってんだオイッ!」
大岡の決め球である、浮き上がってくるスライダーを捕球しきれずにグラブから落としてしまったのだ。
「こなくそっ!」
これまた自分で言うのもなんだが矢のような送球を1塁に送って振り逃げの出塁を防いだ。
ふう〜、やれやれだぜ。と安堵したところで大岡の怒鳴り声が響き渡る。
「いい加減にしろよテメェー! 何回ポロポロこぼしたら気が済むんだ、あぁ!?」
「それは本当にすまねえ。次はちゃんと取るからさ」
「もう信用できるか! 監督、コイツ替えてくれよ!!」
「ちゃんとアウトにしたんだから、そこまで言わなくてもいいだろ!」
「ちょっと! アンタら何やってんのさ、止めな! あ、降ってきちゃったね……」
球審役の上中野監督が止めに入ったところで雨がザーザーと降ってきて、試合はここで終了となってしまった。
あー、後味が悪い終わり方だぜ……。
「オージロウくん! はいタオル。ちゃんと身体を拭いて!」
「あ、ありがと」
慌てて観客席からベンチへ駆けつけた松花の女子マネ泉さんと埜邑工業女子マネ鯉沼さんがタオルを選手たちに配っている。
多岐川の女子マネ仲尾さんも向こうでやってるようだ。
こんな時にサポートしてもらえるのはとてもありがたい。おかげでほっこりした気分でクラブハウスに戻って着替えたのであった。
いつも読んでいただき有難うございます。
次の更新は11月4日(火)となります。
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