第107話 初回表裏の攻防
カキーン!
「外角ストレート、捉えたです〜!」
2番のひょ〜ろくくんが一二塁間にいい当たり……と言いたいところなのだが。
「ん! 予測どおりだ!」
飛んだ先にセカンドの別府さんが待ち構えていた。
というか、芯で捉えたはずなのにあまり強くないゴロはあっさりと捕球され、難なくファーストへ送球される。
というわけでワンアウト。ひょ〜ろくくんが頭を掻きながらベンチに戻ってきた。
「すみません〜。指示通りに追い込まれる前にストレートを狙ったんですけど、ダメでした〜」
「いや、悪くなかったよ。芯で捉えてたし飛んだ場所が悪かっただけさ」
慰めの言葉をかけたが、原因は残念ながらひょ〜ろくくんの非力さにある。明らかに右方向へ打たされたとはいえ、芯でも弱いゴロしか打てないとなると……どうしたものか。
そんなやり取りをしていた間に3番の田白が粘ってカウント3−2。出塁のチャンス……!
マウンドの石元さんにはフォークとスライダーがあるので、できれば追い込まれる前に積極的に打ちにいってほしいけど……こうなりゃ話は別だ。
あとはストライクを取りに来たストレートを狙いつつボールになる変化球を見極められるか。
注目の6球目は……右打者の外角へ逃げながら落ちるスライダー。
パシッとキャッチャーミットに収まったが……僅かに低い。田白は際どいコースを見極めてバットを振らなかった。
よっしゃ、これでフォアボールだ!
「ストライク、バッターアウト!」
「えっ!? い、今のボールでしょ?」
「いや、ストライクだったよ」
田白は球審役の上中野監督に抗議したが判定は当然覆らず。
「なあしょーた。あれって」
「ああ。あの田村ってキャッチャー、1年生とは思えないフレーミングの上手さでストライクにしちまった」
うーん、キャッチャー出身の上中野監督にストライクと見せるとは……素直にスゲーなと脱帽だよ。
結局1回表はオレのホームランによる1点止まりとなった。
さあマウンドへ行くか。練習試合とはいえ目標はもちろん無失点……いやできれば全部三振に仕留めたい。
などと考えながら投球練習を終えて迎える1番打者は、し、白城さん?
「……さあ来いオージロウ」
淡々と左打席に入った白城さん……旧連合チームでは常に4番だったのになぜだ?
だけど多岐川側のベンチを見てその理由は分かった。
ネクストバッターズサークルには別府さん。そして急いでプロテクターを外す田村の姿が見える。
田村は3番か……つまりは強打者なのだろう。そして多岐川は強打者3人を上位に集めてきた。
今回だけの打線なのか、夏の大会ではどうなるのかはわからないが……とにかく初回から気が休まらないことだけは確かだ。
それにバットコントロールに優れた白城さんを1番に据えるのは理に適っている。どうやって打ち取ろうかな。
まずは様子見で外角低め!
「ストライク!」
全く手出しする素振りもなかった。狙い球じゃなかったのかな。
しかし何考えてるか読みにくい白城さん。ゆえに2球目はこうだ!
「うりゃあっ!」
「高め……!」
「ボール!」
ピクッとバットが動いたが釣られなかった。どうやら高めが狙いで間違いはなさそうだ。
じゃあ、これでどうだ。内角高め!
「うりゃああっ!」
「……!」
バコォッ! と鈍い音を立てて打球は低いライナー……というか途中でバウンドしてセカンドへ。
「楽勝です〜!」
ひょ〜ろくくんが難なくさばいてワンアウト。守備ではホントに頼りになるぜ。
「……思ったほどホップしなかった」
引き上げる白城さんのボヤキ声が聞こえてきた。やっぱりか……。
白城さんの狙いは、おそらくこの前しょーたがやったみたいなストレートがノビてホップし始めるところに合わせていく打ち方だろう。
思ったよりもオレに対する対策が考えられているんだな。何となく察した今回はわざと回転数を抑え気味にしたのだ。
「ん! さあきたまえオージロウくん!」
次は別府さん。相変わらず顔面の圧……もとい威圧感が凄い。しかしオレも以前のようにはビビらないぜ!
「うりゃああっ!」
ズバン!
「ストライク、バッターアウト!」
「ん! 以前にも増して素晴らしいボールだったぞ!」
なんか威圧感とは裏腹に全球見送られた。というかじっくり球筋を見られたような。
まあそれはともかく、遂に田村との対決。ワクワクしてきたよホント……!




