第105話 対戦が楽しみな相手
「お久しぶりです。別府さん、石元さん、白城さん」
「ん! オージロウくんも元気そうで何よりだ」
「解散から2ヶ月しか経ってないのに、なんだか長い間会えなかったみたいに感じるよ」
「……会えて嬉しい」
「こちらもです。ところでウチの……新連合チームのキャプテンからも挨拶がありますんで。なあ、しょーた!」
「おい、あんまりそれを強調するなって! あ、あの、今日は招待していただいてどうもです……」
「ん! しょーたくん、キャプテンを務めるならばもっと自信を持って堂々としたまえ! チームメイトを不安がらせてはいけない」
「でも、あのしょーたくんがキャプテンに推されるようになって帰ってきて、お兄さんたちは嬉しいよ」
「……シンイチさんには報告したのか?」
「いえ、まだです……なんとなく」
「それはいかんな。俺から報告しておいてやろうか?」
「あ、蒼田監督! お久しぶりです。それよりいずれ自分でやるんで勘弁してください!」
しょーたの慌てっぷりに思わず笑い声が出て場が和やかな雰囲気に包まれた。
今日は多岐川高校から招待されて臨んだ3校参加の練習試合のために、多岐川高校のグラウンドへと移動してきたのだ。
ちなみに今日は6月中旬の土曜日だが。私学の進学校である多岐川高校は午前中授業がある週があって、今回は午後からのスタートとなる。
というわけで今回は冬の合同合宿以来の泊まり込みで、今日の試合はウチと多岐川高校のみだ。
オレたちは午前中から余裕を持って移動してきたので大した負担もなく……と言いたいところだが実はそこそこ疲れている。というのも……。
「あっちゃん、優子ちゃん! 久しぶり〜!」
「……こんにちは」
「会いたかったよ〜、ひーちゃん! あ、河合さんだったっけ。こんにちは」
「どうもお久しぶりです」
今回、姉ちゃんは由香里さんと一緒に「父兄とその知人」枠を勝手に設けてついてきたのだ。
練習の毎日だったので気晴らしに……と言ってたけど、7月下旬から女子硬式野球の全国大会が開催されるのに悠長だなあ。まあ姉ちゃんらしいとも言えるが。
ちなみに女子硬式野球には地方予選は無く、いきなり全国大会から始まる。まだ参加校が60校程度で必要がないからだ。
詳しくはよく知らないが、まずは兵庫県の丹波という所と淡路島に分かれて複数球場で試合を行い、決勝戦のみ甲子園で行われるというのが例年の開催方式らしい。
余談が長くなったが、おかげで移動中の車内が狭くなって疲れたのだ。
古池監督のクルマは年式こそ古い中古だが最大7人乗りのホンダ・◯リードなので普段は余裕なのに……オレとしょーた、ひょ〜ろくくんは最後部の3人席で押し合いとなった。
「おい〜す、別府とその仲間たち! それとオージロウたちもよぉ!」
「うっす」
「こんちはだっしゃ!」
松花高校も到着した。1年生の近海の態度に多岐川の人たちは面食らってたが、生意気だけど憎めない性格なので割とすぐ馴染んでる。
続いて升田高校の3人組も到着。あとは埜邑工業の人たちだが……電車とバスで来るということでもう少しかかりそうだ。
多岐川高校は田舎にあるので近くを通るバスは1時間に1本らしい。
なお御野ヶ島高校の原塚さんは移動の負担が大きいということで今回は参加を見送っている。
バシィーッ!!
な、なんだ突然!
とんでもない打球音……そういえば多岐川の選手たちは既に置きティーも始めて準備万端ってところだけど、そこから続けて聞こえてくる。
「別府さん、あの音は」
「ん。今、練習をやっているのはウチの期待の新入生。キャッチャーで強打の田村 一真くんだ」
音の方向を見ると新入生にしてはガッチリした体格の男が右打ちで次々とネットを強く揺らしながら練習を続けている。
いきなり対戦が楽しみな相手が現れるとはねえ。なんかワクワクしてきた!




