第100話 フリー打撃で飛ばしまくる
バシィーンッ!!
「うわあっ! ど、どこまで飛んでいくんだよこれ〜!」
「うっしゃあ! 会心の一撃ぃ!!」
午後はバッティング練習で、今はフリー打撃をやっている最中。そしてオレは恐らくサク越えした打球を連発しているのだ。
なんで恐らくなのかっていうと、球場ではなくグラウンドなのでフェンスとか無いから。一応はホームベースから100メートルで白線を引いているが、球場とは形状が違うから大体の目安でしかない。
ちなみに埜邑工業のグラウンドは広く、幅は確実に150メートル以上ある。
それと周囲に高い防球ネットが張り巡らされているので遠慮なく全力でかっ飛ばせる。
おまけに午後は埜邑工業の他の部活でグラウンドを使用するところは無いので、気を使わずに済むのが有り難い。
「ああ〜。なんかオージロウくんの打球を見てるとピッチャーとしてホントに自信なくすよ」
「そんなことないですよ惣司監督。程よいスピードで丁度いいところに投げ続けてくれるのでメッチャ打ちやすいです」
「うーん。学生時代は主にバッピ役だったのが役に立って嬉しいやら悲しいやら。じゃあ次行くよ!」
「はい! うりゃああっ!!」
またもやバシィーンッ! と真芯で捉えた打球音を轟かせながら打球はセンター方向へかっ飛んでいく。
「ちょっ! 今度は150メートル超えるんじゃねえの?」
「あの背丈でパワーが噂より凄すぎて理解が追いつかねえ〜!」
ふふふ。惣司監督には悪いけど、まるで◯ワプロのホームラン◯タックモードの如く飛ばしまくれて、きんもちいい〜っ!!
◇
「オーライ、オーライ……」
オレは今、外野の球拾い役としてレフトのポジションについている。
といってもただ拾えば良いわけじゃなく、フリー打撃のついでにケースバッティングとその守備練習もやってるのだ。
今回はワンアウトで3塁ランナーという設定なので、バッターには最低でも犠牲フライは打って欲しい。
そして期待通りにレフトの定位置より少し深くまで打球が飛んできたというわけだ。
だけど簡単に点を取らせちゃ面白くない。ここはもちろん狙うは補殺!
まずは落下予測地点より少し後ろに下がって。
そこから前に移動しながらパシッとグラブに打球を収めて……同時に助走つけて、投げる体勢に入る!
「ホームいくぞっ!」
「おい! こっち!」
ん? ショートの大岡がなんか言ってるけど邪魔すんなよ。オレは大して気に留めずにボールをホームベース上にいるしょーたのミット目掛けて投げつける。
「うりゃあっ!」
ボールはミットに一直線にバシィッ!と突き刺さった……自分でも気持ちいいくらいのレーザービームがキマったぜヒャッホー!
「アウト! だな、このタイミングだと」
おっしゃ! 補殺一ついただいたぜ!
「マジですか古池監督。俺、結構本気で走ったのに」
「まあ、あんな返球が来るなんて予想してないしね。気にしなくていいよ能町くん。それはともかく……オージロウくん!」
「どうですオレの返球……いやレーザービームは!?」
「0点だ」
「な、なんで?」
「先に言ったろ? 今回は中継を交えた連係プレーの練習で行くって。直接本塁に返したら意味ないでしょ!」
「そうでしたっけ」
「まあとにかくオージロウくんはこっちに戻って!」
別にアウトにできてるんだからいいじゃん。と思いつつも、内野手が連係プレーを練習する機会を奪ってしまって申し訳ないとシュンとなって下がっていく。
あとは大人しくキャッチャーの後ろに逸れたボールやファウルの球拾いをしよう。
そう思ってキャッチャーの後ろへ行こうとすると古池監督から呼び止められた。
「オージロウくん! ちょっとこっち来て!」
「あ、はい」
やっぱり怒ってるよな……お叱りを覚悟して近づいたが、思わぬことを指示された。
「今のケースバッティングが終わったら、あとは惣司監督に代わってオージロウくんがバッピやってくれる?」
「えっ? い、いいですけど、オレはあんなに打ちごろのボールを上手く集められないですよ?」
「もちろんそんなことは期待してないよ。むしろ
全力投球してもらう。今日は投球練習できてないんだし丁度いいでしょ?」
「でもみんなが気持ちよく打てないんじゃ」
「それも大事だけど、オージロウくんのボールに今から慣れておけば大会でどんなピッチャーと対戦しても気後れしないと思うんだよね〜」
それは正論だけど……みんながどう思うのか。
「ええ〜、いきなりそれは」
「バッティング練習というより真剣勝負になるじゃん」
「そう、真剣に打ってもらうつもり。それで丁度、練習は終わりの時間になるしね」
「うーん」
「それじゃこうしよう。ヒットを打った人には俺がラーメンおごってあげよう。これでやる気出たかな?」
「なんかビミョーだな」
「まあでもタダで食えるなら悪くねえ」
「いっちょやるか!」
「みんなノッてきたね〜。オージロウくんも全員抑えたら……」
「いや結構です。普通に全員抑えられるんで」
「テメー! よくも言いやがったな!」
「絶対にヒット打ってやるからよぉ!」
しまった、みんなの心に火をつけちまった。オレはただ、古池監督から時々おごってもらったラーメンに飽きていたから断るつもりだったのに……言い方を間違えた。
でもこれはこれで悪くない。真剣勝負で全員を三球三振に仕留めてやるぜ……!




