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ダークガーネット 〜滅びゆく王国編〜  作者: 柴犬
第二章 傭兵団での日々
7/9

第七話 出会い

 ああ、終わった


 カイ・クレマーはそう思った


 持っていた剣は真っ二つに折られ、

 回復に使っていた魔力もついに底をついた

 もちろん体力もない


 あとはこの食中植物のような魔物に食べられるだけだ


 

 一年前、些細なことから勤めていた飲食店をクビになり、途方に暮れていた時に傭兵団員募集のチラシが目に入った


 一度しか魔物と戦った経験がないにも関わらず、何故か自信が湧き、傭兵団に入団した


 今思えば傭兵団に入るしか生きる道はなかったのかもしれない


 

 まともな戦闘経験のない僕は毎日の演習で、他の屈強な軍人、冒険者あがりの人たちについていくことが出来なかった

 やっとの思いで掴んだ実戦の機会でも、明らかに周りの足手纏いだった

 

 

 それでも傭兵団のみんなは、団員で一番小さかった僕を可愛がり、色々なことを教えてくれた


 その優しさに応えるためにも一生懸命努力したつもりだった

 剣だけでなく弓や魔術も試したが、剣と同様、僕には才能というものがなかった


 

 強くなりたい


 それだけだった

 ダンジョンに一人で入り、低級の魔物を倒して調子に乗り、このまま中級も倒してみんなを驚かせようと思ったのがバカだったんだ


 

 「ああ…」


 魔物が涎をたらしながら、こちらに近づいてくる

 

 体がガクガクと震えた

 死にたくない…

 

 お母さん、そして傭兵団のみんなの顔が頭の中に浮かんだ

 我慢していたが、目から涙が溢れる


 「せめて、お別れの言葉くらい言いたかったな…」


 魔物が口を開け、僕を丸呑みしようとしたその時だった



 「ギャッッ!?」


 突然魔物が叫び声を上げて体を捻った

 

 驚いて閉じた目を開けると、魔物の背中に小さな刃物が突き刺さっているのが見えた

 ダガーだ。一体誰が──


 

 

 周囲を見渡すと、洞窟の奥に右手に剣を持った男が立っているのが見えた


 魔物は男の姿を認めると、怒り狂ったように突進していった


 「危ない!」そう言いかけた瞬間、僕は目を見開いた



 男は魔物の繰り出した触手の攻撃をいとも簡単にかわすと、そのまま2本の触手を流れるように切断してしまった

 洗練された無駄のない動きだった


 「ギエエエェェ!?」

 

 触手を失った魔物は絶叫し、半狂乱になりながら毒を吐くが、

 男はこれも見透かしたように避けると、

 左手を前に出し、氷魔術を魔物の足元へと放った

 

 『極寒の息吹(フロストブレス)』だ。それもかなり高度なもので、無詠唱


 

 男は足元が凍り、身動きの取れない魔物の正面に立ち、腰を落として剣を構えた


 (綺麗な構えだな)


 ぼんやりそう思い、瞬きした瞬間、男が魔物の正面から背後へと瞬間移動していた

 思わず自分の目を疑ったが、すぐに悟った

 速すぎて見えなかった、彼の斬撃を目で捉えられなかったのだ


 「グエエェ…」

 

 斬撃が放たれてからワンテンポ遅れて魔物が消滅していく

 


 

 呆気に取られていると、男はモンスターパールとダガーを回収し、こちらにゆっくりと近づいて来た

 あれほどの戦闘があったのに、疲れた素振りを全くみせていない


 

 年は僕より少し年上だろうか、

 背が高く、黒髪で、整った顔立ちをしているが、目つきが悪い。それになんだか不気味な雰囲気を感じた


 「大丈夫か?」


 そんなことを思っていると、男が口を開いた


 「あ、はい!助けていただき、ありがとうございます!危うく死んじゃうところでした…」

 「助け……た」

 

 僕の言葉を繰り返すように男が呟いた

 助けるつもりなどなかったのだろうか、

 とりあえず謝ろうとするが、男はそんな考えとは裏腹に噛み締めるような表情を浮かべている


 ズキッ

 

 ポカンとしていると、右足に激しい痛みが走った

 見てみるとひどく足首が腫れている。恐らく魔物に地面に叩きつけられた際にできたのだろう


 「あの…すみません、こんなことを言ってはなんですが、出口まで肩を貸していただけ……あ、カイ・クレマーといいます!あなたの…」

 お名前は、

 そう言い終わる前に男は手を差し伸べながら「シュバルツ」と名乗った

 

 

 

 

 




 

 

 

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