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ダークガーネット 〜滅びゆく王国編〜  作者: 柴犬
第二章 傭兵団での日々
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第六話 誤算

 シュバルツは目の前の魔物をじっと見つめた


 剣を構えて斬りかかる体制に入り、

 じわじわ距離を詰め、

 殺気を放つ


 雨水が地面に滴り落ちる中、集中力を研ぎ澄まして相手の動向を伺った


 

 少しの沈黙の後、

 その殺気に押されて「ダークウルフ」が少し後ずさったのをシュバルツは見逃さなかった


 地面を蹴り、猛スピードで標的との距離を詰める

 そして剣を握る手に力を込め、斬撃を放った



 バシュゥゥ…



 魔物が消滅する音が聞こえ、振り返ると、そこには紫の輝きを放った一つのモンスターパール、そしてさらに奥にはシュバルツがここ五分間で倒した一八匹分のダークウルフのモンスターパールが落ちている


 「ハァ…」


 パールを拾い集めながらシュバルツは溜め息をついた


 

 誤算だった


 ヴァイザーと別れてから、シュバルツは冒険者として生きていくことを決めた


 小さい頃、冒険者の本をよく読んでいたシュバルツは、本に書いてあるようなスリリングで、ロマンのある出来事に出くわすのだろうと期待し、少し興奮していたのをよく覚えている



 しかし、現実はそう甘くなかった


 まず出発してから4日も経たずに所持金が底をついた。

 

 シュバルツはクロイツェンから2日かけて「ドイアー」という街にたどり着いたのだが、ドイアーはクロイツェンと比べてかなり規模が小さく、マーケットのような大規模な商業エリアもなかったため、道中手に入れたモンスターパールを売ることが出来なかったのだ。


 おまけに物価も高く、3日も過ごせばルビーでパンパンだった財布は一瞬にして空になった。

 もっとも、飯と宿の居心地は良かったが


 たまらず、ドイアーから次の街を目指すことにしたが、食料も金もろくにない中、しかも一人で一日中荒野を歩き続けるのは苦痛でしかなく、肉体的にも精神的にも限界だった



 やっとの思いでたどり着いた3つ目の街「フロイデン」という街は幸い首都に近いのもあって規模も大きく、宿や店がたくさんあり、マーケットのような商業エリアもある場所だったため、無事3日は過ごせる猶予ができた


 しばらくはフロイデン(ここ)に滞在しようと思ったが、シュバルツには定職がなく、他の冒険者が在籍しているギルドにも参加していなかった


 そのため、シュバルツは収入を得るためには街の近くのダンジョンに入り浸るしかなく、毎日ダンジョンでモンスターパールを集めては売る日々を過ごしていた



 十八匹目のモンスターパールを回収し終わると、パールが入ったポシェットの中を覗いた。


 ダンジョンに潜り始めて七日目になるが、今日の成果は決して良いものではない

 ダンジョンで出くわす魔物の数には偏りがあり、時には一食分の食費すら稼げない日もあった


 明日は月が出ない

 明日も十分な成果は期待できないだろう


 


 安定した収入を得られれば、お金に困るようなことはなくなるのだろうか

 

 コツコツお金を貯めて、家を建てて、自分の好きなものを買って、

 そして誰かと結婚して…


 

 首をブルブル振り、そんな理想をかき消す


 「…バカじゃないのか?」

 

 そんな日が来るわけない。十年間ずっとこのままに決まっていた


 


 「………」


 憂鬱な気分で出口に引き換えそうとした時、奥から声が聞こえた気がした

 

 シュバルツは人目をなるべく避けるために深夜にダンジョンに潜ることが多く、他の冒険者と出くわすことは今まで滅多になかった


 「………!!」


 もう一度同じような声がはっきりと聞こえた


 単語は聞き取れないが、人の声だ

 しかも、どこか争うような叫び声に聞こえるような声な気もする



 

 シュバルツはじっと洞窟の真ん中で立ち尽くしていたが、気づけば声のする方へと走り出していた






 

 


 

 












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