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ダークガーネット 〜滅びゆく王国編〜  作者: 柴犬
第一章 戦いの後日譚
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第二話 決戦の後Ⅱ

ーーーブランセン王国 クロイツェンーーー


「お客さん!あんた、あまり見ない顔だな。冒険者かい?」

「ん…まあそんなとこだ」


ベーゼとの激闘から四日後、シュバルツは「クロイツェン」という街のバーにいた。

白髪混じりの、初老のおっさんがマスターだったが、ガタイがよく、豪快で活力に満ちていた。


遅い時間帯だからか、客はシュバルツ1人だけだ。




あれから下山した後、シュバルツは看板を見て、近くに街があることを知ると、徒歩でそこへと向かった。


道中モンスターなどに襲われまくって、あまり寝れなかったことに加えて、ろくな物も口にできなかったため、街に着いたときにはヘトヘトだった。


「お客さん、疲れてるようだなァ。どこから来たんだい?」


シュバルツは頼んだビールを一気飲みするとマスターの質問に答えた。


「首都のグランツからだ」


ぶっきらぼうに答える。もちろん嘘だ。


「へ〜随分遠いところからじゃないか、今そっちは結構大変なんだろ?」


シュバルツはパンを口に運ぼうとした手を止めた。


「大変っていうのは、どういう意味だ?」

「知らないのかい?今王家の政治に反対する連中が色々騒ぎ立てていて、中々物騒と聞いたぞ?」


シュバルツは「ああ」と安堵した。

まさかベーゼが死んだことがもう広まっているのかと思った。


確かに、以前から王政に不満がある人が増えていると耳にしたことがあるが、今はそんなことどうでもいい。


「ところでマスター、少し聞きたいことがあるんだが、いいか?」

「おう!なんでも聞いてくれ!」


マスターはドンと胸を叩いた。


「ここらへんにいい宿はないかな?」


「ちょっと待ってろよ」とマスターは答えると、奥から街の地図を引っ張り出してきて、指をさした。


「ここがオススメだぜ。部屋は狭いが、費用は安い。ここに来る冒険者には人気の宿だぜ」

「そうか、4泊ぐらいしたいのだが…」


「おお、そうなのか!じゃあ、それまで毎日ここに来いよ、兄ちゃんの武勇伝聞かせてくれ!」


シュバルツはマスターの言葉に苦笑するが、ここで食べたパンとビールが美味かったので首を縦に振った。


ーーーーーーーーーー


「待ってるぜ!兄ちゃん!」

シュバルツはマスターの声に手を振って応じ、外に出た。




紹介された宿は、バーから歩いて5分くらいのところで、昔ながらのレトロなものだった。


受付で聞かれる前に「4泊、一番安い部屋で」と伝えると、案内された部屋に入った。

部屋は机と椅子、ベッドがあるだけの狭く、質素なものだったが、滞在するには十分だろう。


シュバルツは身につけていた装備を机に置き、すぐにベッドに横たわると泥のように眠った。





ーーーどこかの洞窟にてーーー


ヴァイザーは遅刻ギリギリで招集場所に間に合った。

洞窟の入り口では炎の神「ガーレ」が腕を組んで待っていた。


「遅れてすまないね」

「全く、今回も来ないと思ったぞ」


ガーレは呆れたように口を開いた。


「そう怒らないでくれ、あの日はどうしても行きたいカフェがあったんだ。お詫びに今度奢って…」

「分かったからさっさとしろ」


ヴァイザーはガーレに背中を押されて洞窟に入り、平たい岩の上に座った。

ヴァイザー以外の神々はもう着いていたらしく、他の神々は席に着いていた。



「今回の召集は知っての通りベーゼの死亡についてだ」

リーダー格のガーレが神々の中心に立ち、声を張り上げる。


「今から3時間前、闇の神の『命の蝋燭』が消えた。誰かベーゼの死について知っている人はいないか」


ガーレはそう言うと神々を見渡した。


ちなみに、命の蝋燭というのは神の力を継承した者が生きている間、火を灯し続ける蝋燭だ。命の蝋燭に火をつけるのは、新たな継承者が天から下された義務として最初に行う儀式でもあった。



「ベーゼの遺体はあるのか」

森の神ウッドが沈黙を破った。


「遺体はまだ見つかっていない。それにベーゼが死ぬ直前どこで何をしていたのか、なぜ死んだのかなど何の情報もない。とにかく今は遺体を発見し、ダークガーネットを回収することが最優先だ」

ガーレは冷静に答える。



「全く…こんなことになるならさっさと闇の神など消滅させておくべきだったんだ」


そう口を開いたのは風の神ブリーズだ。彼はガーレを指さして、さらに続ける


「以前、ベーゼを殺そうとなった時、お前が反対したせいで保留になったよな?ダークガーネットが紛失したともなれば、その責任はお前に負ってもらうぞ。それにヴァイザー!お前はこの前の召集に参加しなかったよな?最近ブランセンをほっつき歩いてばかりいるようだが、お前は一体何を企んでる?」


ヴァイザーは呑気に足を組んで話を聞き流していたが、突然自分の方に矛先が向いてきたので慌てて姿勢を正した。


「企むも何も、私はいつも通り旅をしているだけだよ。ブランセン王国は居心地が良くてね、つい長居してしまったんだ。」

そう言い終わると同時にブリーズは風のように斬りかかり、ヴァイザーの喉元に『雨雲の刃(クラウドダガー)』を突きつけた。


「いいか…?俺は、お前が最近ブランセンで変な動きをしているのは知ってるんだよ。吐け、お前は3時間前何をしていた?」


ブリーズの鋭い眼光にヴァイザーは思わず両手を上げた。


「おいおい、なんだよ(笑)、私がベーゼを殺したとでも?そんなことをすれば、私が天から罰を受けることになるじゃないか」

「迷信だろ」

「試してみるかい?」


ヴァイザーは『聖なる威厳(ホーリーディグニティ)』を発動し、ブリーズに狙いを定めた。



「おい!お前ら喧嘩している場合ではないぞ!さっき言った通り、ダークガーネットを見つけなければならん。人間に見つかると面倒なことになる」

2人が睨み合っていると、ガーレが声を上げた。


「ガーネットの捜索は手分けして行う。見つけたものは直ぐに連絡せよ。以上だ!」


ガーレがそう言うと、神々はそれぞれ地域ごとに飛び立って行った。



             









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