表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界少女と家族生活 〜たまたま契約したので、世界救ってみていいですか?〜  作者: MATA=あめ
〜忍び寄る魔の手から、救ってもらっていいですか?〜
82/112

最終章 賭け


 ———カワードとの決戦(けっせん)から、1週間後の放課後。



 あれ以降(いこう)は特に【執行者(しっこうしゃ)(がわ)からの接触(せっしょく)もなく、 平穏(へいおん)日常(にちじょう)へと(もど)った俺たちは、またいつものように“保健室の華君はなぎみ”の(はこ)(にわ)——— 保健準備室(ほけんじゅんびしつ)へと(おもむ)く。



 ———そう。


 そこには、レイと鏡美(かがみ)と、不知火(しらぬい)とジル•ドレさんがいて、【レジスタンス】への接近(せっきん)禁止(きんし)を言い渡されていた俺も、フブキとともにここにいる。



 誰1人として()けることもなく、(どく)()りナイフに切られたフブキも、五月雨(さみだれ)先生のおかげで、今ではすっかり良くなっている。



 まさしく、大団円(だいだんえん)とでも呼ぶべき最高(さいこう)結末(けつまつ)にして、正真(しょうしん)正銘(しょうめい)のハッピーエンド。



 ......と言っても、さすがにいつまでも明るい(ふん)囲気(いき)()かっているというわけにもいかず、皆それぞれにあの時のことを口にし始める。



 「......静観(せいかん)していた秩序(ちつじょ)が動きだし、視線すら向けない暴虐(ぼうぎゃく)がこちらに(かたむ)く、か......なるほど、確かに(いや)な響きだね。想像(そうぞう)したくもない」



 直接(ちょくせつ)会うのは久々(ひさびさ)不知火(しらぬい)は、カワードが最後に言い残した不吉(ふきつ)忠告(ちゅうこく)復唱(ふくしょう)する。



 うん......彼女に()られてというわけではないが、何度耳にしても(いや)な響きだ。



 (わす)れようとしても、脳裏(のうり)(そこ)にはあの異様(いよう)(あい)(ひとみ)がチラつき、気がつくと、ジッとこちらを見つめている。


 対面(たいめん)であの(くら)深淵(しんえん)魅入(みい)られてしまったのが大きいのか、俺は(いま)だに、その呪縛(じゅばく)からは解放(かいほう)されていなかった。



 「秩序(ちつじょ)と、暴虐(ぼうぎゃく)...... 宇野(うの)君。それって、もしかしなくても......」


 「ああ」



 言い(よど)鏡美(かがみ)横目(よこめ)に、(みな)誰しもが()けていたであろう決定的(けっていてき)一言(ひとこと)を、俺は(しず)かに口にする。



 「〈3王〉のやつらが動き出す———カワードの野郎(やろう)はきっと、そう言いたかったんだろうな」



 ——— 〈3王〉が動く。



 その響きはやはり重苦(おもくる)しく、そして仰々(ぎょうぎょう)しい。



 〈3王〉———【執行者(しっこうしゃ)】の頂点(ちょうてん)に立つ絶対的(ぜったいてき)な王にして、あのカワードやハスティルたちよりも上位(じょうい)(しゃ)とされる存在(そんざい)


 つまりは、俺たち【レジスタンス】の最大(さいだい)(てき)であり、同時(どうじ)に学園の実質的(じっしつてき)最高(さいこう)権力(けんりょく)(しゃ)でもある。



 その実力(じつりょく)も学園内でトップレベルと言われており、不知火(しらぬい)(いわ)く、学園の教員(きょういん)をも(しの)ぐ力を持っているやつもいるとか。

 


 「〈3王〉......一体、どんな人たちなんだろう......」


 「分からん。......ただ、間違いなく一筋縄(ひとすじなわ)ではいかない相手なんだろうな」



 ......あの時、奴らは確かに『オーダー』なんて言葉を口にしていた。



 奴らが『オーダー』なんてものを受けている以上、必然的(ひつぜんてき)に、それを出している人間がいるということになる。


 カワードたちは俺のことを本気(ほんき)(ころ)しにきていたわけだし、それを命令(めいれい)する〈3王〉も、奴らと同等(どうとう)以上(いじょう)危険(きけん)思想(しそう)を持っているということになる。



 ......だいたい、今まで会ってきた【執行者(しっこうしゃ)】の幹部(かんぶ)が皆あれな奴ばかりなんだ。


 普通(ふつう)に考えて、その上位(じょうい)存在(そんざい)たるやつらが、まともじゃないのもまた(しか)り。



 そんな、まともじゃない奴らが尋常(じんじょう)ではない力を持っているというその事実(じじつ)が、今の俺にとって、何よりも恐怖(きょうふ)だった。



 「はぁ......本当、想像(そうぞう)したくもない未来(みらい)だな。

 皆や鏡美(かがみ)にもまた、負担(ふたん)をかけることになっちまうな......」



 あの時だって俺は、カワードの(ねら)いを読み切れず、結果的(けっかてき)に彼女のことを危険(きけん)(さら)してしまった。


 今回は彼女が勝てたから良かったものの、例えば、俺やレイが〈3王〉と対峙(たいじ)してる中、カワードが鏡美(かがみ)(おそ)いかかってきたとしたら、今度は勝てるかどうかは分からない。



 ———そんな、絶望的(ぜつぼうてき)未来(みらい)の中で、また誰かが()けてしまうという結末(けつまつ)(こわ)い。


 今のこの(いと)おしい時間が(こわ)れてしまうのが(こわ)い......まさしく、そんな臆病(おくびょう)(やみ)の中へと、意識(いしき)がまた引きずり()まれそうになるも———



 「大丈夫だよ。私なら、大丈夫......宇野(うの)君が信じてくれる(かぎ)り、絶対にいなくなったりなんかしないから」



 へにゃっとした———だけど勇気(ゆうき)()ちた表情(ひょうじょう)で、鏡美(かがみ)は俺の手を取り、そして笑いかける。



 そこにはかつて、(つみ)()(つぶ)されそうになっていた少女の姿はなく、(てき)()()から守るべき仲間(なかま)を守り抜いた、勇気(ゆうき)ある少女がただただ微笑ほほえんでいたのであった。




 「お姉ちゃん......ずっと(だま)ってどうしたの?」


 「お前、まだその呼び方続けてるのか......」



 そんな、世にも(めずら)しいフブキのボケ(?)にツッコミながら、俺も視線を彼女に合わせる。



 しかし、そこには彼女の言うようにずっと顔を(うつむ)かせているレイがいて、俺もついそんな彼女に声をかける。



 「まぁでも、確かにそうだな。レイ、今日のお前、なんか(へん)だぞ?」


 「もしかして、お(なか)(いた)いとか......?」



 いやいや、コイツに(かぎ)ってそんな可愛いことでどうこうなるタマじゃだろ———なんて言いたくなったが、それを飲まざるを()ないくらいに、今日のレイは(しず)かだ。


 家にいる時もそうだし、本当に()りてきた(ねこ)としか言いようがないくらいにはおとなしい。


 ......これは何かの前触れか、はたまた本当に調子が悪いだけなのか。


 いろんな意味で、俺の中に不安(ふあん)(つの)っていく。



 「ん......たくさんの心配(しんぱい)感謝(かんしゃ)。しかし、今日の私もいたって正常(せいじょう)。むしろ、1人お散歩(さんぽ)プレイをしてきて調子が良いくらい」


 「うん......それは決して、正常(せいじょう)ではないからな?」



 声は冷静(れいせい)なままに、相変(あいか)わらずのノリ......一見(いっけん)すると、本当にいつも通りの彼女だ。


 本人(ほんにん)(もう)()にもあるように、1人お散歩(さんぽ)プレイができるくらいには平常(へいじょう)運転(うんてん)である。



 ......というか、今さらだけど1人お散歩(さんぽ)プレイって何?



 朝飯(あさめし)にも来ないで、1人で首輪(くびわ)つけて散歩(さんぽ)していたとでもいうのか?


 だとしたら......うん、やっぱり行動(こうどう)もいつも通りの彼女だ。


 普通(ふつう)に考えれば奇行(きこう)(きわ)みだが、西条(さいじょう)レイという少女を媒体(ばいたい)に考えれば、その行動(こうどう)(いた)って正常(せいじょう)なのである。



 「......(かなで)大事(だいじ)な話がある。落ち着いて聞いてほしい」



 お、おう......そんな真剣(しんけん)表情(ひょうじょう)で言われると、俺もいろんな意味でドキドキしちゃうぞ?



 その(おそろ)しく(ととの)った顔が至近(しきん)距離(きょり)にあるっていうのもそうだし、また何か突拍(とっぴょう)()もないことを言い出すんじゃないかと、そちらの方でも胸がドキドキする。



 一見(いっけん)すると(あい)告白(こくはく)のような、あるいは顔にびっくり(ばこ)でも()きつけられるんじゃないかという緊張感(きんちょうかん)の中、彼女は(つや)のある形の良すぎる(くちびる)を動かす。



 「......長い時間、大変(たいへん)世話(せわ)になりました。

 私、西条(さいじょう)レイは、今日から自分の家に(もど)ります」


 「え———?」



 おふざけや、その他のイタズラ心みたいなものは()じえない、レイは至極(しごく)真面目(まじめ)態度(たいど)でそんなことを口にする。



 その普段(ふだん)の彼女からは考えられないギャップに(おどろ)きつつも、俺はなんとか、次の言葉を(つむ)ぐ。



 「自分の家に(もど)るって......お前、なんでまたそんな突然(とつぜん)に」


 「というか、レイちゃん宇野(うの)君のお家にお()まりしてたの!? 年頃(としごろ)男女(だんじょ)がそんなの———」


 「分かる。皆まで言わなくとも、私にはよーく分かる。

 ......私だって、本当は(さび)しいよ? 特に、今まで(ぬく)もりに(つつ)まれてた分、夜はより一層(いっそう)(さび)しく感じると思う」


 「っ......ちょっと、それどういう意味!?」



 うん。


 どういう意味も何も、多分そのまんまの意味なんだろうね。



 わざと誤解(ごかい)されるように言ってんだろうけど、それうちの布団(ふとん)のことだからな。



 我が家の(あたた)かい布団(ふとん)にくるまってぬくぬくと......しかもフブキよりもさらに早い、夜の10時にはレイは夢の中だったからね。



 「誤解(ごかい)のないよう言っておくけど、今回(こんかい)私がずっと(かなで)(そば)にいたのは護衛(ごえい)任務(にんむ)のため。

 ......少し長めにお世話(せわ)になってたのだって、またアイツらが何か仕掛(しか)けてくるかもしれなかったからに過ぎない」


 「そう言ってレイちゃん、また()()けしようとしてたんでしょ!」


 「()()けではない。いずれは私が(かなで)(つま)になり、一緒(いっしょ)()らすことになるのだから、何も問題(もんだい)はない。

 ......そのためにもまずは、叔父(おじ)さんともちゃんと話をして、(かなで)心配(しんぱい)するようなことを全て()(のぞ)いた上で、こってりしっぽりと(かなで)のことを(ささ)える」


 「言い方。......まぁ、お前がそれでいいなら止めはしないけど。

 何回(なんかい)も言うが、お前はもう罪悪感(ざいあくかん)(さいな)まれる必要(ひつよう)なんてないんだ。お前には感謝(かんしゃ)もしてるし、俺でよければ、その勘違(かんちが)いがなくなるまで全力(ぜんりょく)()()うよ」


 「「「「............」」」」



 その瞬間、俺以外の女性(じょせい)(じん)表情(ひょうじょう)が、なぜか一気(いっき)(こお)りついたような気がした。



 具体的(ぐたいてき)に言うならば、『え、コイツ何言ってんの......?』的な。

 

 そんな(あき)れにも()生暖(なまあたた)かい視線(しせん)たちが、四方(しほう)八方(はっぽう)より()()さる。



 「......もしかしなくてもこれは、意図(いと)(てき)放置(ほうち)プレイ......? 

 だとしたら興奮(こうふん)———じゃなかった、俄然(がぜん)()えてくる」


 「あはは......まぁ、そこが(かなで)さんの良いところではあるんですけどね」


 「うん......うん......そうだよね、レイちゃん。大変(たいへん)だろうけど、お(たが)いがんばろうね......」



 なんだろう......この俺だけ世界(せかい)から隔絶(かくぜつ)されたかのような会話(かいわ)は。


 

 ジル•ドレさんは苦笑(にがわら)いでフォローのようなものをしてくれて、さっきまでずっとケンカしてたはずなのに、鏡美(かがみ)なんて泣きながらレイの手を(にぎ)っている。



 うん......なんだかよく分からないが、とりあえず何かやらかしてしまったのだけは分かった。



 やっぱり俺には、まだまだ女心(おんなごころ)というのは(むずか)しい。




 と———




 「———必ず、振り向かせて見せる。レイちゃんの魅力(みりょく)で、メロメロきゅんにしてあげるから」



 右手(みぎて)(じゅう)()()くようなポーズを取りながら、突然(とつぜん)、俺向かって見事(みごと)なウィンクを決めて見せるレイ。



 その可愛らしくも、茶目(ちゃめ)()のある仕草(しぐさ)にやられ、俺は(あわ)てて目を()らしてしまう。



 ......どうやら、この様子(ようす)だと彼女の勘違(かんちが)いは、まだまだ続いていくらしい。


 いちいち破壊(はかい)(りょく)(すさ)まじいし、自分が変な気を起こさないか少し心配(しんぱい)ではあるが、そこは上手くやっていくしかないだろう。




 ———ただ、もしその過程(かてい)で本当に俺が落ちてしまったら......いやいや、きっとそんなことはないはず。


 今はそんなことを考えている余裕(よゆう)などないし、そんな気分(きぶん)にだってなることはない。



 ただ、まぁ———いつか、その全てが終わる時が来たのなら、一度くらい、そんな未来(みらい)を考えてみるのもいい......のかもしれない。



 「さてさて......(かなで)のヘタレっぷりが分かったところで、今日のところは解散(かいさん)としようか。

 いろいろ考えることも山積(やまづ)みで、皆も(つか)れただろう? また明日、こうして皆で———」


 「ちょっと待ってくれ、不知火(しらぬい)



 と、本日(ほんじつ)終了(しゅうりょう)音頭(おんど)を取り始める彼女に、俺は待ったの声をかけた。


 一瞬、意外(いがい)そうな緋色(ひいろ)(ひとみ)がこちらに向けられてくるが、すぐにまた、いつものキザったらしい表情(ひょうじょう)へと切り替わる。



 「(きゅう)にどうしたんだい、(かなで)? 君の方から話しかけてくるなんて(めずら)しいじゃないか」


 「いや......一つお前に聞きたいことがあってな」



 相変(あいか)わらず、全てを見透(みす)かしたような緋色(ひいろ)(ひとみ)が俺のことを射抜(いぬ)くが、俺も負けじと、彼女の目を()()ぐに見据(みす)える。



 「なぁ、不知火(しらぬい)。お前は———本当に俺たちの味方(みかた)なのか?」



 と———俺がその言葉を口にした瞬間、先程とは違った意味で、場の空気(くうき)(こお)りつく。



 感情(かんじょう)(ゆた)かな鏡美(かがみ)は思いっきり動揺(どうよう)し、あまり表情(ひょうじょう)を変えないレイやジル•ドレさんですら、目を見開(みひら)(おどろ)いたような顔をしている。



 ......当然(とうぜん)だ。


 俺の立場(たちば)を考えれば、今の発言(はつげん)爆弾(ばくだん)以外(いがい)何物(なにもの)でもない。



 ———しかし、そんな時が止まった中でただ1人、不知火(しらぬい) (ほむら)だけが、悠然(ゆうぜん)とティーカップに(くちびる)をつける。



 「......話が、よく見えないのだけど、(くわ)しく説明(せつめい)してもらってもいいかな、(かなで)?」


 

 ゆっくりと頬杖(ほおづえ)をつきながら、不知火(しらぬい)(おだ)やかな微笑(びしょう)を浮かべる。



 その()えるような(ひとみ)(おく)(きら)めく(つめ)たい何かに若干(じゃっかん)身じろぎそうになってしまうも、俺は視線を()らさずに、自分の胸の内を(かた)り出す。



 「アイツとの戦いを通して思ったんだ。俺はまだ、何も知らなすぎるんじゃないかって。

 ......考えてみれば俺は、【レジスタンス】の———お前が戦う理由だって、ちゃんと聞いたことがない」



 無論、神藤(しんどう)店長(てんちょう)から話は聞いているが、それだって彼女にとってはほんの一部(いちぶ)に過ぎない。



 悪意(マリス)による襲撃(しゅうげき)の後、彼女は何を思って戦い続けるのか———はたまた、孤独(こどく)に戦い続けるその先に何を(のぞ)んでいるのか。



 ......カワードの言葉ではないが、彼女が何を後ろに背負(せお)っているのか、これからのために、俺は知らなきゃいけなかった。



 「この前の戦いだって、俺1人じゃどうしようもなかった。これからもっと強い(てき)が出てくるっていうならば、多分相互(そうご)利用(りよう)の関係なんかじゃダメだと思うんだ。

 ......無論、俺も言える範囲(はんい)のことは全て話そうと思う。自分からこんなことを言う以上、ちゃんと(すじ)は通す。だからお前も......お前の戦かう本当の理由も、聞かせてほしい」



 ———本当の仲間(なかま)として。



 あぁ、ほんと......こんな言葉が出るなんて自分でも、(おどろ)いている。



 お(たが)いがお(たが)いを利用(りよう)し合って、フブキのことさえ守り切れればいいなんて考えていた時期(じき)のことを思えば、自分でも(おどろ)くべき変化(へんか)だ。



 ......だけどきっと、この先でそれは必ず必要(ひつよう)になる。


 例え不知火(しらぬい)自身(じしん)が良く思わなかろうと、さらなる戦いのため———そして、1人の彼女の仲間(なかま)として、それを知りたく思うのだ。



 「......本当、君には(おどろ)かされてばかりだ。私もこの立場(たちば)になって長いが、そんなことを言われたのは君が初めてだよ」


 「............」



 対面(たいめん)不知火(しらぬい)肯定(こうてい)せず......されども否定(ひてい)することもなく、ただただそんな言葉を口にする。



 その表情(ひょうじょう)もどこか挑戦(ちょうせん)(てき)で———だけど、普段(ふだん)の彼女からは想像(そうぞう)もつかない、(あきら)めのような、(さび)しげな色を()びている。



 だんだんと、隣に(たたず)むジル•ドレさんの表情(ひょうじょう)(くも)っていく中、やがて彼女は乗っている車イスの向きを変え、体の向きを()正面(しょうめん)へと変えて見せる。




 「いいよ。そこまで言うなら教えてあげよう。

———ただし、一つだけ条件(じょうけん)がある」


 「条件(じょうけん)?」



 すると、いつぞやの時のように———されども、あの時は違う挑戦的(ちょうせんてき)仕草(しぐさ)で、不知火(しらぬい)右手(みぎて)を差し出す。



 「宇野(うの) (かなで)君。君———私と一つ、()()をしてみないか?」




 と———彼女の放つその一言(ひとこと)が、またもや、俺たちを数奇(すうき)運命(うんめい)へと(いざな)うのであった。





 次回投稿は、9月21日 日曜日 12:00と


 9月18日 木曜日です。


 よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ