表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界少女と家族生活 〜たまたま契約したので、世界救ってみていいですか?〜  作者: MATA=あめ
〜忍び寄る魔の手から、救ってもらっていいですか?〜
74/112

第7章 悲しき死闘 ♢4


 「やれッッ、ドラゴニス!!!!!!」



 ———放課後の訓練場(くんれんじょう)にて、関村(せきむら) (まもる)荒々(あらあら)しい声が響く。


 すると、すぐさま竜人(りゅうじん)右腕(みぎうで)(かま)え、フブキ向かって(こぶし)が飛んでくる。



 ドラゴニカル•ハンド。


 〈救命(きゅうめい)〉ドラゴニスの能力(のうりょく)にして、変幻(へんげん)自在(じざい)(うで)変化(へんか)させることのできるという、彼らの持つ最大(さいだい)武器(ぶき)


 その真の(おそ)ろしさは追尾(ついび)機能(きのう)とリーチを(かせ)ぐことにあり、フブキがどこに逃げようとも、執拗(しつよう)に距離を()めてくる。



 「ていっ!」



 と、フブキがドラゴニスの右腕(みぎうで)()()ばしたことにより、その追走劇(ついそうげき)終止(しゅうし)()が打たれた。


 まるで、生き物かのようにぐにゃぐにゃと動き回る(うで)ではあるが、結局(けっきょく)は体の一部(いちぶ)であることには変わりない。


 つまりは、攻撃されれば(いた)みを感じ、反撃(はんげき)を受ければそれは必ず(すき)となる。



 今この瞬間に生まれた(すき)も、フブキは決して見逃さないが———



 「ふっ......(あめ)ぇな」



 (すき)を見せれば()()んでくる......というのは、相手にとっても予測(よそく)容易(ようい)


 フブキがそこに到着(とうちゃく)する前に背中(せなか)から(つばさ)()やし、空に逃げることによって、ドラゴニスは攻撃を回避(かいひ)する。

 


 (やはり、この前のようにはいかないか......)



 タイミング、スピードともにこちらのベストだったはずなのに、ドラゴニスはいとも簡単(かんたん)にそれに(おう)じて見せた。



 無論、彼女だってなんの(さく)もなしに()()んでいったわけではない。


 この前の行動(こうどう)や奴らの戦法(せんぽう)予測(よそく)した上で()()み、あわよくば〈共心(きょうしん)〉の力の範囲(はんい)(ない)に入り()むという作戦(さくせん)だった。


 今回のフブキは始めから本気(ほんき)モードなわけだし、この前のドラゴニスの反応(はんのう)速度(そくど)からは、とてもじゃないが考えられない状況だった。



 「へっ、(すき)だらけだぜ......ドラゴニス! ドラゴニカル•クロー!!!!!」



 と、空中(くうちゅう)両腕(りょううで)(やいば)変化(へんか)させ、ドラゴニスが一気(いっき)(きゅう)降下(こうか)攻撃を仕掛(しか)けてくる。


 空と地面。


 しかも、攻撃を(かわ)された直後(ちょくご)ということもあり、フブキの(すき)致命(ちめい)(てき)になり()るが———?



 「フブキ」


 「ん」



 俺の指示(しじ)に合わせ、フブキがバク(ちゅう)要領(ようりょう)でドラゴニスの奇襲(きしゅう)(かわ)す。


 ちょうど後ろ側に飛んだためにドラゴニスの背中(せなか)はガラ空きになり、フブキがそこに自分の右手(みぎて)を近づける。



 「......! ......!?」



 すると、ドラゴニスはすぐに並行(へいこう)感覚(かんかく)(うしな)っていき、(なか)強引(ごういん)地面(じめん)着地(ちゃくち)を決める。

 そんなドラゴニスは、先程のようにまたすぐに起き上がり、再び空に飛び立とうとするも失敗(しっぱい)


 何度同じことを()(かえ)そうと、全て結果(けっか)は同じに終わる。



 ———この戦いにおいて、実は俺たちには大きなアドバンテージがある。


 それは、相手が〈共心(きょうしん)〉の力について全く理解(りかい)していないという点だ。


 もう言わなくても分かるとは思うが、今回フブキが共有(きょうゆう)したのはドラゴニスの並行(へいこう)感覚(かんかく)

 地面(じめん)に立っているというフブキの感覚(かんかく)()()まれてしまえば、さすがのドラゴニスも飛行(ひこう)はできない。


 相手にフブキの力が知られていないからこそ使える、不意打(ふいう)(けん)()みに(つな)がる一手(いって)である。



 「ちっ、なんだか知らねぇが、小癪(こしゃく)なことやりやがって......! ドラゴニス、もう一度だ!!!」


 「............」



 関村(せきむら)たちが感覚(かんかく)共有(きょうゆう)理解(りかい)できない以上、空からの奇襲(きしゅう)()可能(かのう)......そんなふうに考えていた俺だったのだが、それは大きな間違いだった。


 飛行(ひこう)そのものができないことを知ったドラゴニスは、足に小さな(つばさ)()やし、そのまま跳躍(ちょうやく)


 飛行(ひこう)するのではなく、()()()()()()()()()()()()姿()()()()()()()()()()()()()()空中(くうちゅう)でバランスを(たも)つ。



 「この(なが)れはマズい......フブキ!! アレが来るぞ!!!!!」



 そんな俺の(さけ)びを肯定(こうてい)するかのように、ドラゴニスが両腕(りょううで)をキャノン(ほう)———ドラゴニカル•キャノンの形状(けいじょう)へと変化(へんか)させる。


 (いそ)回避(かいひ)行動(こうどう)を取ろうとする俺たちだったが次の瞬間、(ふたた)砲弾(ほうだん)の雨が上空(じょうくう)より()(そそ)いだ。



 「ははははははは!!!!! いいぞ、いい気味(きみ)だ!!! 

 ドラゴニスのことを裏切(うらぎ)るくそ野郎(やろう)なんざ、この世界に存在(そんざい)する価値(かち)はねぇ!!! そのまま(だま)って殲滅(せんめつ)しろぉッッ!!!!!」



 回避(かいひ)すれど回避(かいひ)すれど、上空(じょうくう)からは無数(むすう)砲弾(ほうだん)(おそ)いかかる。


 それはフブキにだけでなく近くにいる俺にも()(そそ)ぎ、容赦(ようしゃ)なく(いのち)(けず)っていく。


 一撃(いちげき)一撃(いちげき)が人間で俺にとっては、致命(ちめい)(しょう)にも(ひと)しい連撃(れんげき)


 一瞬で意識(いしき)()()びそうになる激痛(げきつう)の中、俺の脳裏(のうり)には、ある言葉たちがよぎる。

 




 『......ドラゴニスのことをバカにする悪党(あくとう)なんざ、この世界に存在(そんざい)する価値(かち)はねぇ!!!』


 『その鉄槌(てっつい)は俺が(くだ)さなければならない! お前はただ、(だま)って俺に(したが)ってればいいんだよ!!!!』





 「........ふざけるなよ......お前、それがドラゴニスにとってどういう意味(いみ)になるのか、分かって言ってるのか......?」



 全身(ぜんしん)激痛(げきつう)(さいな)まれる中、俺は(しず)かに立ち上がっていく。


 足の辺りの(ほね)がきしみ、(うで)筋肉(きんにく)痙攣(けいれん)を起こしているが、全くというほど気にもならない。



 それと同じくして、近くで(たお)れていたフブキも立ち上がり———やがては辺り一面(いちめん)を、()()()()()()()()()()()()()



 「しゃらくせぇ!! んな手品(てじな)やったところで、俺たちに()くわけが———」



 と、そこまで言いかけたところで関村(せきむら)が言葉を止め———(いな)、言葉が途切(とぎ)れた。


 辺り一面(いちめん)()りしきる宝石(ほうせき)のような(ゆき)無数(むすう)砲弾(ほうだん)を消し、関村(せきむら)の体をも(つつ)()んだからだ。

 


 「なんだよ、これ......全身(ぜんしん)から、力が、抜けていく......?」



 ———フブキの世界(せかい)との〈共心(きょうしん)〉は、世界(せかい)(こば)邪悪(じゃあく)を消し去り、世界(せかい)(こば)事象(じしょう)(かい)(へん)させる。


 まさしく、神にも近い究極(きゅうきょく)の力。



 ———だからそれ(ゆえ)に、(おに)が少年へと()いた邪悪(じゃあく)な力は浄化(じょうか)され、蹂躙(じゅうりん)されていく。



 「お前のその力は仮初(かりそめ)で、そしてお前自身(じしん)の心を喰らっていく邪悪(じゃあく)なもの......やがてはそれがドラゴニスにも完全(かんぜん)(なが)()み、二度と(もと)には(もど)らなくなる」


 「んなわけねぇだろ......! 自分が劣勢(れっせい)だからって調子の良いことを———!!」


 「だったら、今ドラゴニスがどんな顔をしているのか、その目でよく見やがれッッ!」



 ......それはきっと、過去(かこ)にその場に立っていた自分(じぶん)自身(じしん)にも向けた言葉だったのだろう。

 

 過去(かこ)の俺とぴったり姿が(かさ)なった関村(せきむら)はあの時とは違う、振り返って、ドラゴニスの顔を直視(ちょくし)する。



 「な、んで......お前が、そんな顔をするんだよ......俺はただ、お前を(きず)つけた、あの男を......」


 「まだ気づかねぇのか、テメェは。(やさ)しい心を持つドラゴニスは、始めからそんなこと(のぞ)んじゃいない。お前のそれは、そう思わせるように仕向(しむ)けられただけだ」


 「嘘だ、そんなわけない......そんなのは、ただのまやかしだ......だって、俺は......うッ!」



 すると、関村(せきむら)突然(とつぜん)頭を()さえ、苦しみの声を上げ始める。



 「何だ、これ......頭が......!! うっ、ぐあぁ!!」


 

 自分(じぶん)自身(じしん)の中にある矛盾(むじゅん)、タナトスの呪縛(じゅばく)邪悪(じゃあく)な力の浄化(じょうか)色々(いろいろ)なものが()ざり()い、関村(せきむら)がその場でのたうち回る。


 俺とフブキが(しず)かに見守る中、動きを止め、ようやく彼はその顔を上げた。



 「なんで......気づかなかったんだ......? 俺は、今まで何をやっていたんだ?」



 彼が放ったその言葉が、今の彼の全てを物語(ものがた)る。


 あの時の鏡美(かがみ)と同じ、タナトスの呪縛(じゅばく)から解放(かいほう)されたようだった。

 


 「ようやくお目覚(めざ)めか、関村(せきむら) (まもる)? お前、ずっと悪い(ゆめ)にうなされてたんだぜ」


 「ああ......そうみたいだな」



 そう自虐(じぎゃく)(てき)()らす関村(せきむら)横顔(よこがお)は、(さび)しげだけど、なんとなく()(もの)()ちているようにも感じた。


 本来(ほんらい)の彼、そして本当の彼の言葉で、弱々(よわよわ)しくも、自分の胸中(きょうちゅう)を口にする。



 「ほんと......俺はドラゴニスのパートナー失格(しっかく)だ。俺は......本当に、なんてことを......!


 「そう思う気持ちがあるならば、アイツにもそれを言ってやれ。俺みたいに、気づかず手遅(ておく)れになる前に」


 「ドラゴニス......ごめん......俺は、俺は———」


 『あーア、つまラネェの』


 「「!!」」



 そんな関村(せきむら)の言葉を(さえぎ)るかのように、突如(とつじょ)聞き心地(ごこち)の悪い機械(きかい)音声(おんせい)が響き渡る。



 ———いつの間に? しかも、一体どこから?



 キョロキョロと辺りを見回している間も、(なぞ)の声はペラペラと一方的(いっぽうてき)に話し続ける。



 『せっカくイイ感ジになっテきたの二こレで終わリだナんて、ほんと駄作(ださく)モいいトコろ。色々(いろいろ)苦労(くろう)しテ手回(てまわ)シもしてヤッたッテのニ、これジャとンダ(ほね)()(ぞん)だナ?』


 「......なんなんだ、テメェは!! さっさと姿を(あらわ)しやがれッ!!」



 (するど)い声で(うなが)すも、拡声(かくせい)()でも使っているのか姿は見えず、出てくるような気配(けはい)もない。



 やがて、ひとしきり(かた)り終えたのか、その機械(きかい)音声(おんせい)(ぬし)(たの)しげに、ようやく俺の()いかけへと答える。



 『——— 特務(とくむ)情報(じょうほう)執行官(しっこうかん)......って、言エば分カるだロ、宇野(うの) (かなで)?』


 「っ!?」



 いきなり知らないやつに名前を呼ばれた———というよりも、特務(とくむ)情報(じょうほう)執行官(しっこうかん)というその単語(たんご)に、俺は思わず言葉を(うしな)った。


 

 【レジスタンス】を3度も壊滅(かいめつ)させた張本人(ちょうほんにん)が、このタイミングで......?


 あの時、奴の名前が出てきた以上、いつかはこうなると思ってはいたが、いざそれが目の前で起きるとやはりくるものがある。



 『()っテる演者(えんじゃ)が良クってモ、その演目(えんもく)がダメなラ駄作(ださく)にナる......結末(けつまつ)がコレじゃ、観客(かんきゃく)だっテ満足(まんぞく)しチゃくれナいでしョ? 舞台(ぶたい)監督(かんとく)としテは、もう胸が(いた)くてイタクて仕方ナいヨ』



 ......やれやれ、とでも言わんばかりの物言いだが、俺には奴の言っていることが何一つとして理解できない。


 これだけ多くの人間を()()むというのもそうだが、それを舞台(ぶたい)がどうこうって表現(ひょうげん)する観点(かんてん)意味(いみ)不明(ふめい)


 神藤(しんどう)店長(てんちょう)の言うように、本当に狂人(きょうじん)としか言いようのない発言(はつげん)だった。



 『しかし()しいな......せっかく手に入れた逸材(いつざい)だっていうのに、こんなところで終わっちまうなんて。失敗(しっぱい)したと分かったらあの真面目(まじめ)ちゃん、必ずやコイツのことを()()しようと動くだろうな』


 「処分(しょぶん)だって?」



 言ってて俺は、マリスが何を言いたいのかをようやく理解(りかい)することになる。



 ......奴の言うその真面目(まじめ)ちゃんというのは、おそらくカワードのことだ。


 関村(せきむら)のことを(うら)(あやつ)っていたのがアイツだとして、それが失敗(しっぱい)したと知ったらどうなるか?


 黒幕(じぶん)という存在(そんざい)を知っている人間を、()たして、奴はどうするつもりなのか?


 言っているやつが言っているやつだけに完全(かんぜん)信用(しんよう)はできないが、その実奴の言うことは、簡単(かんたん)想像(そうぞう)がついてしまう。



 『本当は、一度見つけた演者(えんじゃ)は大切にするっていう性分(しょうぶん)なんだけど、アイツの顔も見られている以上、それを(かな)えるのも(むずか)しいか........ならば、仕方ナイ』



 すると、マリスは口調を(たの)しげなものへと(もど)し、道化(どうけ)(ごと)くおどけて(わら)う。



 『———アイツに消サレるくらイなラ、このマリス様が盛大(せいだい)()()()をプレゼントしてやルよ!!! ギャハッ!!!!』



 そんなマリスの奇声(きせい)にも()嘲笑(ちょうしょう)とともに、いつの間にか、周囲(しゅうい)無数(むすう)の〈ネオ•ワイヴァーン〉が(あらわ)れる。


 ()っかのような陣形(じんけい)で俺たちのことを取り(かこ)み、そのままクルクルと時計(とけい)(まわ)りに(まわ)っていき———次の瞬間、(まばゆ)い光を放ちながら、一斉(いっせい)爆発(ばくはつ)を引き起こした。



 (ッ!? 爆発(ばくはつ)......神藤(しんどう)店長(てんちょう)から聞いた通りか......!)



 爆風(ばくふう)から目を守りながらも、俺はギリと歯噛(はが)みする。



 改造(かいぞう)された〈ネオ•ワイヴァーン〉を爆弾(ばくだん)()わりにし、(いのち)もろとも周囲(しゅうい)の全てを()()ばす。

 人造(じんぞう)(しゅ)であるが(ゆえ)に、個体(こたい)(すう)の多い〈ネオ•ワイヴァーン〉を()(ごま)(あつか)いするそのやり方———まさしく、外道(げどう)と呼ぶにふさわしい(いのち)冒涜(ぼうとく)


 フブキが咄嗟(とっさ)に〈デュアル•ムービングフォース〉を使ってくれなければ、彼らと一緒(いっしょ)に俺の(いのち)()っていたことだろう。



 「(かなで)、大丈夫!? 今、何かすごい音が聞こえてきたけど!?」


 「レイか......ううん、それよりも、奴は......?」



 爆発音(ばくはつおん)を聞き()けつけてくれたレイとともに辺りを見渡してみるも、マリスの姿はおろか〈ネオ•ワイヴァーン〉たちの姿も見えない。


 爆発(ばくはつ)(けむり)(まぎ)れてか完全(かんぜん)に姿を消しており、〈ネオ•ワイヴァーン〉で辺り一面(いちめん)()()くされていた(そら)も、何事もなかったかのように(もど)っている。



 「(いや)気配(けはい)は消えた......多分、ここにはもういない」


 「そうか......」



 フブキの察知(さっち)能力(のうりょく)は人間のそれを大きく上回っており、俺なんかでは到底(とうてい)(かな)うものではない。


 そんな彼女がもうここにはいないと言うのだから、本当にこの場からはいなくなってしまったのだろう。



 それにしても......くそっ、本当にひどい有様(ありさま)だ。

 地面(じめん)()(くろ)()()げ、(えぐ)られている。辺りには、さっきまで〈ネオ•ワイヴァーン〉だった残骸(ざんがい)散乱(さんらん)しており、見ているだけでも気分(きぶん)(わる)い。



 これだけのことをたった1人で()()げてしまう実行力(じっこうりょく)......店長(てんちょう)の言うように、一体何者(なにもの)なのか?


 はたまたそれとは別に、俺の中には一つ疑問(ぎもん)(のこ)る。



 ———それはズバリ、奴の目的についてだ。



 今回の件で、奴がカワードと手を組んでいるのは確実(かくじつ)となったが、それにしては関係が(うす)い。

 さっきのマリスの発言(はつげん)もそうなのだが、(なか)が悪いというか、連携(れんけい)協調(ちょうちょう)のようなものが、まるで感じられなかった。


 もし、奴もカワードと同じ俺のことを排除(はいじょ)するのが目的ならば、今のこの状況は好機(こうき)以外(いがい)何物(なにもの)でもない。俺たちが戦闘(せんとう)(よわ)り切ってる今のうちに、さっさと目的を()たしてしまえばよかったのだ。



 だというのに、奴はそうしなかった。


 

 あろうことか、俺にはさほど興味(きょうみ)(しめ)さず、盤面(ばんめん)をぐちゃぐちゃにするだけして去っていった。

 言うなれば、やっていることの何もかもが中途(ちゅうと)半端(はんぱ)なのだ。



 店長(てんちょう)の話を聞く(かぎ)り、奴ならばこれくらいの盤面(ばんめん)をひっくり返すのだって簡単(かんたん)なはず。


 それだけの力があるやつが、なぜこんな意味(いみ)不明(ふめい)行動(こうどう)に出ているのか———?



 .......いや、これ以上はやめておこう。


 狂人(きょうじん)思考(しこう)なんて知っても仕方ないし、考えたところで理解(りかい)できるはずもない。


 だからこそ、今考えるべきは次にどうするか。


 大きく(くる)ってしまった今の状況を、どう修正(しゅうせい)していくかにある。



 と———



 「............」



 爆発(ばくはつ)による(けむり)が晴れていき、そこに大きな人型(ひとがた)(かげ)があるのが分かった。



 そこにあるのは、(りゅう)と人とが()じった異形(いぎょう)怪物(かいぶつ)の姿。


 その表情(ひょうじょう)はどこか(かな)しげで、されども先程までの空虚(くうきょ)なものとも違う。

 


 「ドラゴニス......お前......」


 「ああ......」



 すると、ドラゴニスはいつも通りの———俺のよく知っている彼の仕草(しぐさ)で答えた。



 「元に......(もど)ったよ。(まもる)と、君たちのおかげでね」



 そう()らすドラゴニスの視線を追っていくと、彼の(うで)の中に、1人の少年が()(かか)えられているのが分かった。


 その体は(きず)だらけのボロボロであり、それとは対照的(たいしょうてき)に、ドラゴニスの方はさほど(きず)は多くない。


 

 そんな中、ドラゴニスのパートナーである少年だけが気を(うしな)っており、彼が爆発(ばくはつ)の瞬間に何をしたのか、容易(ようい)想像(そうぞう)はついた。

 


 「......思ったよりかは(きず)(あさ)いな。それくらいならば、五月雨(さみだれ)先生のところへ行けばどうにかなると思う」


 「ああ。君に言われなくとも、そうさせてもらうよ」



 きびすを返し、ドラゴニスはそそくさとこの場を去ろうとするが、なんとなく俺はその背中(せなか)を呼び止めてしまう。



 「......なぁ、ドラゴニス。俺がこんなこと言う資格(しかく)ないのは分かってるけど、そいつのことを、許してやってくれないか? 間違ってしまったとはいえ、お前のために(おこ)ってたわけなんだし」


 「............」



 そう言葉をかけるも、ドラゴニスは振り向かず、視線すら合わせようとしない。


 

 ただただずっとそこで立ち止まり、やがて大きなため息をついた。



 「......全く。君たち人間というものは、どうしてこう、ちゃんと話を聞いてくれないのだろうね。(まもる)も君も、私が何を言っても立ち止まってはくれなかった」


 「......ごめん」


 「今さら(あやま)っても許さないよ。私と君の関係は、もう終わったんだから」



 「でもね」と、自虐(じぎゃく)(てき)に、されども少しだけ(やさ)しい口調で、彼は続きの言葉を口にした。



 「今日のことを通して思ったよ。私は、君たちと同じかそれ以上に(よわ)い。

 ......今回、力に飲まれてしまったのは(まもる)じゃない。間違っていると分かっていながら、ずっと見ていることだけしかできなかったこの私。パートナーすら守ることのできない、(よわ)い私自身(じしん)だ」



 違う———なんて言う資格(しかく)は、今の俺にはない。


 それに、否定(ひてい)したい気持ちはあるが、多分彼の言っていることは(ただ)しい。


 残念(ざんねん)なことに、彼の言っていることはあまりにも(ただ)しすぎたのだ。



 「君があの時(あやま)ちを(おか)したのもきっと、私の(よわ)(ゆえ)のこと......自分のことばかりで、私が君の気持ちを分かってあげられなかったことにある。 

 ......だから、私は強くなるよ。強くなって......本当の意味での強さを手に入れるまで、君のことを許さない。それまで私は、君に会うつもりもない。

 君を許せる強さを手に入れたその時に、いつか......」



 と、そこまで言ったところで、彼は口を閉ざす。


 もはやこれ以上は、何も(かた)るまいと。



 そんな彼の(さび)しげに見える背中(せなか)に、俺は(みずか)らの(おも)いを吐露(とろ)する。

 


 「俺はもう......間違えないよ、ドラゴニス。お前の時のように、フブキを裏切(うらぎ)ったりはしない。

 だからそれまで———じゃあな、ドラゴニス」



 もう二度と、同じ(あやま)ちは()(かえ)さない。


 あの時と同じ場所、同じ相手......だけど、(ちが)未来(みらい)(もと)めて、俺は決意(けつい)を口にする。




 ———やがて、彼は何も言わずに自分の(あゆ)みを再開(さいかい)し、俺もまた、それを止めることはしなかった。





 次回投稿は、8月24日 12:00 と

 8月21日 木曜日 です。


 よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ