第4章 〈フブキ〉♢1
「は〜い。皆様、今日も一日お疲れ様ですわ♪帰りのホームルームを始めましてよ。
———と、その前に、こちらの紙を後ろに回していただきますわ」
時は過ぎ、帰りのホームルーム前。
突如 壇上のイリーナ先生はそんなことを言いだすと、1番前の席に座る生徒に、数枚の紙の束を手渡す。
それを受け取った生徒は、後ろの席、また後ろの席へと次々に回っていく。
よく普通の学校とかでも行われるアレである。
「ほい、奏」
「おう、ありがと」
前の席に座る天堂から用紙をもらい軽く礼を言った後、俺はその内容へと目を通す。
書いてある議題は———進路希望調査について。
「後ろの席まで回りましたか?もうすでに目を通していらっしゃる方もいるとは思いますが、そちらは進路希望調査の用紙になっておりますわ」
進路希望調査。
言葉の通りならば、将来どんな道に進みたいかの希望調査である。これも学校では恒例と言える、ありふれたものの一つだろう。
ただ、なぜこのタイミングで?というのが、俺を含む大半の生徒の疑問であった。
「少し早いと思われるかもしれませんが、1年間を過ごす上で、目標を定めておくというのは大事なことですわ。本部直属の養成所、召繋師高等専門学校、本部職員......他にも、たくさんの選択肢が存在しておりますわ。この学園には資料もたくさん置いてあるので、目を通しておくことを勧めますわ。......それと、学園には召繋師以外の進路でも、様々なサポートが充実しております。どんなことでも遠慮なく、気軽に相談してくださいまし」
イリーナ先生はまるでこちらの心の中を覗いてるかのように、疑問に対する補足を入れる。
生徒のことを心から考えているような、嫋やかな女神の微笑み。
あまりの美しさに、不覚にも少しどきりとさせられる。
「———提出期限は1週間。急な話で申し訳ありませんが、じっくりと考えてくださいまし。よく考え、出した答えをワタクシにお聞かせ願えると嬉しいですわ♪」
......と、いかんいかん。今はそんなことを考えている場合ではない。
1週間という期限は、長いようで短い。
気づいたら、あっという間に過ぎてしまっていることがほとんどだ。
そうじゃなくとも、俺にはデバイスが使えないという最大の問題が残っている。
この進路希望調査が学園からの扱いに直接影響するかは定かではないが、できれば問題を解決した上で、堂々と召繋師と書きたい。
......それに、これは自分の問題と改めて向き合う良い機会なのかもしれない。
いつまでもこのままじゃいけないと思っていたところだったし、そろそろ俺も一歩を踏み出すべきではなかろうか?
よし。
一度、改めて自分自身の問題と向き合ってみるとしよう。