表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界少女と家族生活 〜たまたま契約したので、世界救ってみていいですか?〜  作者: MATA=あめ
〜たまたま契約したので、世界救ってみていいですか?〜
5/82

第3章 〈大災厄〉♢1

 保健室の騒動そうどうから少し経ち、俺は自分の教室を目指すべく、学園の渡り廊下を1人歩いていた。

 


 この〈せいれいがくえん〉の校舎は3つの建造物と5つのエリアで構成されており、それぞれ第一棟、第二棟、第三棟といったように分かれている。

 

 保健室や訓練場くんれんじょうがあるのが第二棟で、教室があるのが第一棟だ。


 つまり教室を目指す場合、間と間をつなぐこの渡り廊下を通る必要がある。



 ちなみに、廊下の壁は透明なガラスによってつくられているため、遠くの景色がよく見える、と生徒の中でちょっとした人気スポットであったりもする。

 


 (今は......そろそろ6限目が終わる頃か)



 気がつくと、1日がほぼ終わりを迎えていた。

 

 そんなに眠っていた自覚はなかったのだが、スマホに表示されている時間が、俺に現実であることを教えてくれる。


 自分ではよく分からなかったが、やはり大きいケガだったようだ。



(———っと、危ない。あやうく忘れるところだった)



 そう言って取り出したのは、綺麗に折られた一枚のメモ用紙。保健室を去る際に、五月雨さみだれ先生から手渡されたものだ。


 後で必ず読むよう釘をされていたが、『重要』と赤字で書かれているあたり、よほど大事なことが書かれているのだろう。



 ......少し緊張きんちょうしてくるが、そのままというわけにもいかないだろう。

 

 よし、と。

 

 俺は意を決して、メモ用紙を開く———




君へ。


 やっほー⭐︎ 皆の憧れのお姉さん、五月雨さみだれ 睡蓮すいれんちゃんだ———』





 ———そっと、俺はメモ用紙を静かに閉じた。


 そうだな......うん、きっとこれは何かの間違いだ。


 そうに決まっている。


 えっと......多分、まだ寝ぼけているんだ!ずっと眠ってたわけだし。




 .......よし。


 もう大丈夫だ。これで心配はいらない。


 変な幻覚なんて見ない。もう何も怖くないぞ!


 そう意気いきんだ俺は、再びゆっくりと手元のメモ用紙を開く。




君へ。


 やっほー⭐︎ 皆の憧れのお姉さん、五月雨さみだれ 睡蓮すいれんちゃんだよ (^_−)−☆


さっきはありがとね♪(๑ᴖ◡ᴖ๑)♪

それと、色々驚かせて本当にごめんね(>人<;)

私、人と話すの得意じゃなくて......


ほら、私話すのすっごく遅いでしょ?

いっぱい、いっぱい

困らせちゃったよね?(;ω;)


でも、君が待っててくれるって言ってくれたの

私、すっっっっっごい嬉しかったよ!!

先輩以外の人からあんなこと言われたの、

初めて、だったから。


あーあ、不覚にも、いっぱいドキドキしちゃった(//∇//)

君は将来きっと、とっってもかっこよくなっちゃうよ!


......あ、今も十分かっこいいか!

もー!!この生涯しょうがい女たらしめ!

この、この!๑ ˃̶͈ ᴗ╹)σ"♡


......でも、その時は、1番に私を迎えに来てくれると嬉しい———かな?


———きゃっ!

言っちゃった、恥ずかしい!\(//∇//)\ \(//∇//)\


 

......こほん。

ごめん、色々脱線しちゃったね。


そろそろ本題に入るけど、

ズバリ、君の症状しょうじょうは打撲です!

しかも全身を強く打った、けっこう重いやつ!!


それと、きっとその時に頭も打っちゃったんだよね?

意識を失っちゃったのはそれが原因、病名で言うと脳震盪のうしんとうかな。

ただ、一通り検査した感じ脳の方に異常は見当たらなかったし、きっと一時的なやつだと思うから安心して。

今の感じだと、後遺症こういしょうとかの心配もないかな。


でもね、残念ながら痛みの方はそうもいかないかも。


一応いちおう処置しょちはしたけど完全に引いてはいない———特に1番強く打っちゃってた腰は、しばらく痛みが続くと思う。

痛みが完全に引くまでは、包帯も外せないかな。



———だからこそ、しばらくは絶対安静!!

早めの休息をとって、激しい運動は御法度ごはっと!!

絶対無茶とかはしないこと!!!

(`・д・)σ メッ!だよ!!



分かった?


お姉さんとの、お•や•く•そ•く


だぞ?(๑•̀ᴗ- )✩




それと———

よかったら、また遊びに来てね?

待ってるよ(*´˘`*)♡"


あなたの憧れのお姉さん 五月雨さみだれ 睡蓮すいれんより♡』



 

 「いや、誰だよ」



 ......やばい、思わず声に出てしまった。


 だが幸いにも、俺の周囲には誰もいない。


 今が授業中で本当に良かった。


 

 

 ———さて、色々ツッコミどころ満載の文章だが、まず最初にいだく感想はこれに尽きる。


 本当に誰だよ。


 何?あんな短い言葉の中に、これだけの意図が隠れてんの?あのボーっとした顔でそんなこと考えてたの?


 しかも途中の文章とか、所々(ところどころ)根が真面目なのが伝わってきて余計に痛々(いたいた)しい。


 なんだか、全体的に無理やりテンション上げようとしてる感が出てしまっているのが、さらになんとも言えないところだ。


 本人なりに頑張って書いたつもりなのだろうが、これではただの怪文書かいぶんしょだ。


 これもその先輩とやらの教えのせいなのだろうか。



 まぁ、もしかしたら、こっちが素という可能性も十分あり得るのだが......とりあえず、それはまた今度考えるとしよう。


 今、俺が考えるべきことは他にある。



 (絶対安静、運動は御法度ごはっと......か)



 俺は改めてそこの部分の文言もんごんに目を通す。


 やはり症状しょうじょうは打撲と、それによって起こった脳震盪のうしんとう。未だ引かない腰の痛みも、それが原因だ。


 無論、本来であるならば、メモに書いてある通り授業なんて受けている場合ではない。


 今すぐにでも帰って休息をとるか、もしくは病院へと行くべきなのだろう。


 

 ———()()()()()()()()()()()()()()

 


 「............」



 俺はふところに入れてあったデバイスを手に取る。が、やはりと言うか、相も変わらず一向に反応を示そうとはしない。



 そう。


 デバイスが使えないというのは、この学園では致命的ちめいてきな欠点となる。


 当然だ。なぜならこれは、召繋師リンカー能力のうりょくをサポートするための物であり、俺たち見習い召繋師リンカーにとってはなくてはならない物だ。


 もちろん、授業や成績にも大きく影響してくる。




 ......正直なことを言うと、デバイスが使えなくなってからというものの、学園からの評価は最悪だ。


 俺がなんとか退学をまぬがれているのは、それまでの功績こうせきと授業への出席が大きい。


 というか、実質それしか評価されるところはない。


 そんな中、仕方がないこととはいえ、今日の授業のほぼ全てをすっぽかしてしまったのだ。


 これは評価の上で、かなりの痛手いたでと言えるだろう。



 「......まぁ、どうせそろそろ授業は終わりなんだから、今さら評価も何もないんだが」



 そう独りごちながら、俺は小さく肩をすくめる。

 とはいえ、顔も出さずに帰るよりかは、はるかにマシなのも事実だ。


 そう考えると、やはり俺に早退という選択肢はない。



 俺は腰に広がる痛みを表に出さないようにつとめながら、再び自分の教室へと歩みを進めるのであった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ