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異世界少女と家族生活 〜たまたま契約したので、世界救ってみていいですか?〜  作者: MATA=あめ
〜優しき少女の未来を、救ってみていいですか?〜
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第7章 傀儡 ♢2


 ドンと、目の前にあるドアを()()ばす。

 

 普通ならばありえない行動(こうどう)だし、我ながら礼儀(れいぎ)知らずにもほどがある。



 ———ただ、こと今回に(いた)っては話が別。


 それぐらいに俺は(いか)っていたし、彼女の元へと()けつけたかったのだ。



 (コイツが、【執行者(しっこうしゃ)】マインド)



 (あらた)めて、俺は彼女と対峙(たいじ)するその男へと視線を向ける。



 奴を一言(ひとこと)(あらわ)すなら、細身(ほそみ)陰湿(いんしつ)そうな、メガネをかけた少年。


 (あつ)だけで言ってしまえば、前回(ぜんかい)戦ったハスティルの方が断然(だんぜん)上だが、コイツもコイツで、生理(せいり)(てき)に受け入れ(がた)雰囲気(ふんいき)を放っている。



 「なんですか、あなたは? 一体、どこから入ってきたというのですか」



 メガネの位置(いち)(ととの)ながら、回転式(かいてんしき)のイスで体の向きを変える。


 俺という闖入者(ちんにゅうしゃ)(たい)し、少年はどこまでも(いぶか)げな視線を送ってくる。



 「そもそも、この部屋は関係者以外立ち入り禁止です。(くわ)しい場所だって公表(こうひょう)していないのに、一体なぜ———ッ! あなた、まさか———!!!」



 すると、(つくえ)に手をつき、ガタっという音とともにマインドがイスから立ち上がる。



 「失敗(しっぱい)しただけじゃ()()らず、裏切(うらぎ)ったというのですか!? どこまで私をバカにすれば気が()むんだッッ!!!!」



 何を思ったか、矛先(ほこさき)鏡美(かがみ)へと変え、突然激昂(げきこう)し始めるマインド。


 発言(はつげん)行動(こうどう)意味(いみ)不明(ふめい)だし、彼女を見つめるその視線も血走(ちばし)り、明らかに常軌(じょうき)(いっ)している。



 そんな、(そこ)()れない気味(きみ)の悪さを(おぼ)えながらも、俺はなんてことないふうに続けた。



 「別に、鏡美(かがみ)はお前のことを裏切(うらぎ)ったわけじゃねぇよ。俺がぶちのめして、無理やり聞き出しただけだ」


 「それでも、失敗(しっぱい)したのは事実(じじつ)でしょう? あれだけフォローしてやったというのに、この結果(けっか)......本当に、使えなくて始末(しまつ)()えない」



 やれやれ、と嫌味(いやみ)ったらしく首を横に振るマインド。



 ......陰湿(いんしつ)でねちっこい性格(せいかく)とは聞いていたが、本当にまんまだな。


 口調、声のトーン、仕草(しぐさ)


 本当に全てがその通りでしかなくて、聞いているこっちがイライラしてくる。



 「......つーことは、お前が鏡美(かがみ)に“召繋師(リンカー)()り”なんてやらせていた犯人(はんにん)だってことで、(みと)めるんだな?」


 「そうですね。でも、それがなんだと言うのです?」



 (あら)っぽくイスに(すわ)り直し、マインドは悪びれもせずに答える。



 「私は【執行者(しっこうしゃ)】のマインド。仮に全てあなたの憶測(おくそく)(どお)りだったとしても、それは正義(せいぎ)のためなのです。

 むしろ、その正義(せいぎ)一翼(いちよく)に選ばれたことを、(ほこ)りに思ってもらいたいものですね」


 

 ......一体、何を言っているんだ、コイツは?



 それがなんだ? 正義(せいぎ)一翼(いちよく)に選ばれたことを(ほこ)りに思え?

 


 さっきから言ってることが一つも理解できないのだが、本当に同じ人間なのか?



 「だいたい、そいつのような鈍臭(どんくさ)くて使えないような無能(むのう)を、誰が()(この)んで使うものですか。そいつがどうしても(おん)を返したいって言うから、自分から(つみ)(あがな)機会(きかい)が欲しいと言うから、あれこれ苦労(くろう)してチャンスを(あた)えてやっていたというのに......それも全部無駄(むだ)に終わった。本当、使えないにもほどがある」


 「........ッ!」



 ......(おさ)えろ、俺。



 ここで爆発(ばくはつ)すれば、全てがおじゃんだ。


 可能(かのう)(かぎ)り、奴から情報をあぶり出すんだ。



 「......お前の目的は、俺をここに(おび)()すことか」


 「まぁ、それが全てというわけではありませんが、それもありますね。事件(じけん)()こしていれば、あなたは必ず(くび)()()んでくると()んでいましたから」


 「そんなことのために......お前は無関係(むかんけい)なやつらを()()んだというのか......!」


 「いや、だから。さっきから言ってますけど、そもそもあなたたちの前提(ぜんてい)が違うんですって」



 すると、マインドは視線だけをこちらへ向け、できの悪い生徒に教えを()くかのように続ける。



 「いいですか? 【執行者(しっこうしゃ)】とは正義(せいぎ)、つまり私の意向(いこう)正義(せいぎ)そのものなのです。私がそれを(ぜん)とすれば正義(せいぎ)だし、逆に悪と(だん)じれば、それは(さば)くべき悪なのです。

 ......一見(いっけん)無関係(むかんけい)(もの)()()むというのは悪に見えるかもしれませんが、それもこの私の意思(いし)。つまりは正義(せいぎ)なのです。結果(けっか)として、【レジスタンス】壊滅(かいめつ)に大きく貢献(こうけん)でき、私の評価(ひょうか)も上がる。力無き人々(ひとびと)犠牲(ぎせい)(ともな)い、私がその(おも)いを()()いでいくのです。

 あぁ......これこそ至高(しこう)、人と人の理想(りそう)到達点(とうたつてん)! その(いしずえ)に選ばれた人々(ひとびと)を、あなたも(ほこ)らしいと思いませんか!!?? ねぇッ!!??」



 マインドが口にしたのは、そんなおぞましく、そして狂気(きょうき)じみた理想(りそう)だった。


 人と人の(ささ)()い。そこに絶対的(ぜったいてき)序列(じょれつ)()()み、片方だけが(みつ)をすする。

 序列(じょれつ)の高い方だけが絶対の意思(いし)となり、そのためならばどれだけ犠牲(ぎせい)や苦しみが(ともな)おうと仕方がない。


 それも全て、(とうと)正義(せいぎ)のためなのだから美しいのだと———



 「......で......かせたのか........」


 「はい? よく聞こえな———」


 「そんな理由で、鏡美(かがみ)を泣かせたのかッ!!!!!」



 ———さすがに、我慢(がまん)限界(げんかい)だった。


 正義(せいぎ)なんていう身勝手(みがって)(せん)()きだけでは()()らず、そんな独善的(どくぜんてき)野心(やしん)狂信(きょうしん)のために、彼女はずっと苦しんでいたなどと。


 ......あぁもうほんと、ふざけてるにもほどがある。



 「........ええ、そうですね。ならば、どうするというのです?」


 「鏡美(かがみ)の分まで、お前のことをぶん(なぐ)る」


 「正気(しょうき)ですか? 私は【執行者(しっこうしゃ)】のマインド。そんなことをすればあなたは———」


 「知るか、んなもん。【執行者(しっこうしゃ)】だろうが、なんだろうが関係ねぇ。俺の仲間(なかま)を泣かせるような野郎(やろう)は、誰だろうとぶちのめす」



 それっきり、俺たちの会話は途切(とぎ)れる。


 その引きつった顔を見るに、コイツもコイツで、俺が会話の通じないイカれ野郎(やろう)とでも思ったのだろう。



 ......どう考えてもおかしいのはコイツだし、俺としては非常(ひじょう)不本意(ふほんい)ではあるのだが、それならそれでいい。


 言葉を()わしたところで無駄(むだ)なのは分かるし、これ以上時間をかけたってイライラするだけだ。



 「........全く、話を聞かない野蛮人(やばんじん)にも(こま)ったものですね。ならば、仕方ありません———」



 そんな言葉とともに、マインドはようやくイスから立ち上がる。



 「あまり暴力(ぼうりょく)(うった)えるやり方は好きではないのですが......あなたがそう言うのであれば、お相手してさしあげましょう」



 と、(くら)い笑みを浮かべながら、マインドが(ふところ)からデバイスを取り出す。



 もはや、(たが)いに引くつもりはない。


 この一戦(いっせん)で、全ての決着(けっちゃく)をつける———



 「いくぞ、フブキ」


 「ん。どんと来い」



 そう(こた)えるフブキの表情(ひょうじょう)も、いつも以上に真剣(しんけん)そのものだ。


 これで、俺たちの(おも)いは(かさ)なった。



 いくぞ———



 「「リンク•アライズ!!!」」



 マインドがデバイスに()れ、俺はフブキと手を(かさ)ね、(さけ)ぶ。


 俺たちだけに宿(やど)る、(おも)いを(つな)げる力を。



 「クフフ......さて、出番(でばん)ですよ———〈絶心(ぜっしん)〉タナトスッッ!!!!」



 ———瞬間、マインドの足元(あしもと)に浮かび上がった灰色(はいいろ)魔法陣(まほうじん)より、巨大(きょだい)(むくろ)が姿を(あらわ)す。


 王族(おうぞく)のような衣装(いしょう)に身を(つつ)み、身体(からだ)(いた)(ところ)(へび)のような模様(もよう)(きざ)まれた(くさり)()かれている。


 中でも目を引くのが、()(たけ)はあるであろう巨大(きょだい)(かま)

 その姿はまるで、(たましい)(もてあそ)死神(しにがみ)のようだった。

 


 「先手(せんて)必勝(ひっしょう)......といきましょうか。タナトス!!!!」



 そんなマインドの号令(ごうれい)とともに、死神(しにがみ)が手に持った大鎌(おおがま)()るう。


 すると、すぐさま切り口から紫色(むらさきいろ)衝撃(しょうげき)()が生まれ、フブキ向かって飛んでいく。



 ———そこそこの(はや)さはあるが、(かわ)せないほどではない。


 横に飛び、フブキはなんなく回避(かいひ)する。



 「クフフ......なるほど、それがあなたのサーバント———“被験体(ひけんたい)X”の力ですか。確かに、デタラメな身体(しんたい)能力(のうりょく)だ。だが———」



 その言葉に合わせるように、死神(しにがみ)大鎌(おおがま)(かま)える。



 「こんな(せま)い場所では、それも十全(じゅうぜん)には発揮(はっき)できない———!!

 やりなさい!! 〈絶心(ぜっしん)〉タナトス!!!!」



 大鎌(おおがま)()るい、その切り口から再び紫色(むらさきいろ)衝撃(しょうげき)()飛来(ひらい)する。



 ......しかし、1発では終わらず、また1発、もう1発と紫色(むらさきいろ)衝撃(しょうげき)()()()なく放たれる。


 その全てを(かわ)すフブキだったが、ここは室内(しつない)。奴が攻撃する(たび)に、逃げ道はどんどん無くなっていく。



 ———否、それだけじゃない。


 昼間(ひるま)二対二(タッグマッチ)、そして鏡美(かがみ)との激闘(げきとう)


 連戦(れんせん)に続く連戦(れんせん)で、確実にフブキに疲労(ひろう)()まっている。


 いくら彼女と言えども、あの衝撃(しょうげき)()(なみ)()(くぐ)って、一撃(いちげき)も喰らわずに近づくというのは(むずか)しい。



 ......かと言って、あの紫色(むらさきいろ)衝撃(しょうげき)()に当たるというわけにもいかない。


 どんな力があるのかは知らないが、あんな禍々(まがまが)しい攻撃、当たればひとたまりもないのは明らかだ。



 「もう......やめて......!!」


 「鏡美(かがみ)......?」



 (ふる)えるような声を上げながら、突然鏡美(かがみ)が俺の足にしがみつく。



 「やっぱりアイツには勝てない........いくら宇野(うの)君でも、アイツに勝てるわけがなかったんだ......!! 私が全ての責任(せきにん)を取る......私が傀儡(かいらい)になって全て終わらせるから........だからこれ以上、フブキちゃんに戦わせないで........!!!」


 「............」



 ———やっぱり、マインドを見てからの鏡美(かがみ)様子(ようす)がおかしい。


 今までのことがトラウマになっているというのもあるのだろうが、この(こわ)がり方は、はっきり言って異常(いじょう)だ。


 明らかに、普通の精神(せいしん)状態(じょうたい)ではない。



 「アヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!!!! そうです!! その通りですっ!! 結局あなたはあの時と変わらない!! 私に助けられた時と同じように、ただただ(ふる)えているしかないのですよ!!!」



 と、マインドの耳障(みみざわ)りな嘲笑(ちょうしょう)が響き、その(たび)に足にしがみつく鏡美(かがみ)(ふる)えは大きくなる。


 やがて、一頻(ひとしき)り笑い終えると、マインドは(あざけ)るような視線をこちらへ———否、鏡美(かがみ)へと向けた。



 「クフフフフ......本当、無様(ぶざま)なものですねぇ......。まぁ? 今から頭を()げて許しを()うと言うのであれば、考えてあげなくもないですよ? 私の(さば)きを受けた後ならば、傀儡(かいらい)として、(そば)に置いておくのもやぶさかではありません。

 ......もちろん、2人仲良く一緒(いっしょ)にね?」


 「ッ!? ......私はそれでもいい。でも、宇野(うの)君は......!!」


 「そういうわけにはいかないでしょう? これだけのことをしておいて、なんのお(とが)めもなしなんて、そんなバカな話があるわけないじゃないですか。彼もあなたと同じ同罪(どうざい)です。

 ......もっとも? 私の寛大(かんだい)措置(そち)によって、学園にいられるだけありがたいと思うことですねぇ!!?? アヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!!!!」



 再びマインドの耳障(みみざわ)りな嘲笑(ちょうしょう)が響き、最悪(さいあく)(きわ)まりない終わりが宣告(せんこく)される。



 どの道、フブキが近づけない以上、このままでは勝ち目はない。



 そう。これで、俺たちの()み———



 (っていうのが、奴の勝利(しょうり)条件(じょうけん)なわけか)



 ———フブキの|動きが(ふう)じられ、それに鏡美(かがみ)絶望(ぜつぼう)していく。


 もはやどうすることもできなくなり、俺は誰も(すく)うことができなり、(ひざ)をつく。


 


 ......あぁ、()()()()()()()()()()()


 これでようやく、確信(かくしん)()た。



 「........なんですか、その目は? 私の慈悲(じひ)を受けたいと言うならば、もう少し態度(たいど)というものが———」


 「うるせぇな。いい加減(かげん)、ピーチクパーチク(わめ)くのはやめたらどうだ、メガネ野郎(やろう)?」


 「メガネ野郎(やろう)———!?」



 と、よほど(しゃく)(さわ)ったのか、マインドがこめかみに青筋(あおすじ)を立てる。



 「......あなた、今なんと言ったのですか? あろうことか、この私にメガネ野郎(やろう)などと———!!」


 「ああ、言ったぜ。お前に精神(マインド)なんて大層(たいそう)な名は似合(にあ)わねぇ。ただのメガネ野郎(やろう)十分(じゅうぶん)だ」



 べっと(した)を出して、挑発(ちょうはつ)して見せる俺。


 本当に子どものような、青筋(あおすじ)を立ててるような相手にするとは思えない、幼稚(ようち)でくだらない挑発(ちょうはつ)



 すると、(いか)りが一周(いっしゅう)して困惑(こんわく)にでもなったのか、マインドも、そのサーバントである死神(しにがみ)もピタリと動きを止める。



 「......あなた、自分で何言ってるのか分かっているのですか? この()(およ)んで、とんだ強がりを........!!」


 「へぇ......なんだ、お前本気(ほんき)で気づいてないのか」


 「気づいてないですって........?」



 「ああ」と、俺は見せつけるように、口角(こうかく)を上げる。



 「お前の(たね)なんて、()()()()()()()()()()()()()。だから今までのは全部、その確信(かくしん)()るための茶番(ちゃばん)にすぎない。お前はまんまと、俺たちの手のひらの上で(おど)らされていたんだよ」



 俺のその言葉に、奴だけでなく、鏡美(かがみ)唖然(あぜん)とするのが分かった。



 しかし、そんな反応(はんのう)など()にも(かい)さずに、俺は不遜(ふそん)態度(たいど)(くず)さない。



 「......ハッタリを........今さらそんなものが、この私に通用(つうよう)するとでも?」


 「ハッタリなんかじゃないさ。だって、お前のタナトスの能力(のうりょく)は———」


 「ッ!! タナトスッッ!!!!」


 『............』



 瞬間、フブキ向かって死神(しにがみ)大鎌(おおがま)を振るい、先程(さきほど)同様(どうよう)紫色(むらさきいろ)衝撃波(しょうげきは)飛来(ひらい)する。



 ......やがて、不意(ふい)()かれたフブキに衝撃波(しょうげきは)着弾(ちゃくだん)し、彼女はその場で(ひざ)()る。



 「......? 今、何かした?」



 ———なんてことはなく。


 何事(なにごと)もなかったかのように、フブキは可愛らしく小首(こくび)(かし)げていた。



 「バカな......一体、何を........!?」


 「言ったろ? ハッタリなんかじゃないってさ」


 「ッ......!」



 先程と違い、マインドが明らかに(あせ)った様子(ようす)を見せる。



 これで、少しは理解してくれただろう。

 


 なぜなら、今フブキがやって見せたのは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()



 「まず一つ———マインド、お前のその力は完全(かんぜん)無欠(むけつ)じゃない。その代償(だいしょう)として、戦闘(せんとう)(りょく)のほとんどを犠牲(ぎせい)にしている」


 「「!?」」



 一つ目の(たね)()かしは、奴が周囲(しゅうい)()()ませていた誤解(ごかい)


 彼女たちの意識(いしき)()(めぐ)らされた、(いばら)正体(しょうたい)



 ......やがて、それに食ってかかってきたのは、奴ではなくその被害者(ひがいしゃ)である鏡美(かがみ)だった。



 「嘘だ......だってアイツは、私よりも全然(ぜんぜん)強くて......」


 「本当にそうか? なら思い出してほしいんだが鏡美(かがみ)()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」


 「!」



 ———ずっと、考えていた。



 使えないだの無能(むのう)だのそんなことを言う相手を、なぜ奴はずっと傀儡(かいらい)なんかにしていたのか。


 強い、強いと自分のことを豪語(ごうご)するのに、なぜ傀儡(かいらい)なんて必要だったのかと。



 だって、おかしいだろ?


 そんなに自信(じしん)があるならば、自分の手で俺を排除(はいじょ)すればいい。

 わざわざ自分より弱いやつらにやらせないで、ハスティルみたいに(なぐ)()んでくればいいだけだったんだ。



 ......なのに、奴はそうしなかった。


 あろうことか、今この時まで姿すら(あらわ)そうとせずに、戦いを全て鏡美(かがみ)や他のやつらに(まか)せていた。

 

 一度も戦いの場に出ようとせずに、あたかも自分は強者(きょうしゃ)だという(つら)をしていたのだ。



 「そうだ........私、なんで........ずっと......この人に、勝てないって........」



 そんな言葉が()れ、彼女の手足(てあし)から(ふる)えが消えていく。


 ようやく、これで彼女は解放(かいほう)されたのだ。



 ———そう。


 これこそが、戦闘(せんとう)(りょく)犠牲(ぎせい)にした、〈絶心(ぜっしん)〉タナトスの能力(のうりょく)


 サウンド•フォックスのジャミング•リザウンドと非常(ひじょう)酷似(こくじ)していて、決定的(けっていてき)に違う能力(のうりょく)だ。



 「お前のタナトス能力(のうりょく)。それは、強烈(きょうれつ)精神(せいしん)干渉(かんしょう)(けい)能力(のうりょく)———より正確(せいかく)に言えば、心を()()る力だ」



 鏡美(かがみ)がやって来る前の“召繋師(リンカー)()り”事件(じけん)

 それは他ならぬ、奴自身(やつじしん)()こしていたものだ。


 そして、その手口(てぐち)はほぼほぼ鏡美(かがみ)と同じ。目撃者(もくげきしゃ)傀儡(かいらい)として、ターゲットを(おそ)わせるという悪辣(あくらつ)なやり方だ。


 しかし、()たような二つの事件(じけん)にも、実は大きな違いがある。


 鏡美(かがみ)と奴の大きな違いは、傀儡(かいらい)となった人間のその後だ。



 鏡美(かがみ)の場合には、脳波(のうは)異常(いじょう)きたして意識(いしき)不明(ふめい)となる物理的(ぶつりてき)外傷(がいしょう)があるが、奴の被害者(ひがいしゃ)にはそれがない。

 意識(いしき)(うしな)うまでは同じでも、その後はせいぜい記憶(きおく)混濁(こんだく)する程度でしかない。



 これに関しては調べもついているし、実際に診断(しんだん)した五月雨(さみだれ)先生にも確認を取ってある。



 「実害(じつがい)はなく、けれども相手のことを(あやつ)人形(にんぎょう)にできる。鏡美(かがみ)のように脳波(のうは)に何かしてるわけじゃないのなら、考えられるのはそれしかない。

 そして、能力(のうりょく)の方はともかく、お前の戦闘(せんとう)(りょく)はめちゃくちゃ低い。それも、俺どころか鏡美(かがみ)にすら勝てないほどに。

 ......だからお前は、俺を排除(はいじょ)する傀儡(かいらい)とするために、鏡美(かがみ)にあの力を使った。自分の能力(のうりょく)傀儡(かいらい)にした暴漢(ぼうかん)(おそ)わせ、その(すき)()くことでな。

 戦闘(せんとう)(ちゅう)、やけに降参(こうさん)(すす)めてきていたのもそれが理由だ」


 「そ、それは......(あわ)れなあなたたちに、私からの慈悲(じひ)(あた)えてさしあげようと———」


 「じゃあ、今すぐかかってこいよ? 俺たちは、逃げも隠れもしないぜ?」


 「............」



 ......静寂(せいじゃく)


 どれだけ待とうとも、死神(しにがみ)はぴくりとも動こうとはしなかった。



 (やっぱり、な......)



 奴の能力(のうりょく)正体(しょうたい)は、強力(きょうりょく)精神(せいしん)干渉(かんしょう)(けい)の力。しかも、見ている(かぎ)り、時間(じかん)制限(せいげん)もないという破格(はかく)のものだ。



 ———ただし、この世界に完璧(かんぺき)なものが存在(そんざい)しないように、奴の力にもいくつかの制約(せいやく)がある。


 これだけ強力(きょうりょく)な力でも、奴には二つもの弱点(じゃくてん)存在(そんざい)しているのだ。



 その内の一つが、戦闘(せんとう)能力(のうりょく)皆無(かいむ)ということ。


 さっきの戦いを見ても分かるように、奴はほぼほぼ戦闘(せんとう)ができない。それも、図体(ずうたい)だけの見かけ(だお)しで、本当は人間の俺にすら勝てるか(あや)しい腕力(わんりょく)なのだ。

 そのせいか、戦いが始まってからずっと、奴はフブキに近づこうとすらせずに、あの紫色(むらさきいろ)衝撃(しょうげき)()()ってくるだけだった。


 当たり前だ。だって、近接(きんせつ)戦闘(せんとう)にでもなれば、一瞬で勝負(しょうぶ)は決まってしまう。というか、戦闘(せんとう)になった時点(じてん)で、ほぼほぼ勝ち目なんてないんだ。


 だからこそ、奴には鏡美(かがみ)のような()わりに戦ってくれる(こま)が必要だった。


 戦いを()け、かつ(みずか)らに目が向かないような立ち回りが必要(ひつよう)不可欠(ふかけつ)だったのだ。



 今回、奴が戦いに(おう)じたのも、そうせざるを()ない状況に俺が()()んだからにすぎない。



 ———しかし、そんな弱点(じゃくてん)があったとしても、力が強力(きょうりょく)であることには変わりない。こんな()()きなどせずとも、(おれ)自身(じしん)にさっさと力を使っちまえば、決着(けっちゃく)なんてつくはずだ。



 そこで(かぎ)となってくるのが、もう一つの弱点(じゃくてん)である、()()()()()()()()()というものだ。



 奴の性格(せいかく)もあるだろうが、俺にはずっと、その言動(げんどう)が引っかかっていた。


 やけに鏡美(かがみ)否定(ひてい)し、(ののし)り、絶望(ぜつぼう)させるような投げかけ。俺と会話してても、すぐに彼女へターゲットを()()える不自然(ふしぜん)さ。


 俺にはどうしても、奴が鏡美(かがみ)(こわ)がらせようとしてるようにしか見えなかった。



 ......だが、だからこそ気づいた。


 マインドは、鏡美(かがみ)能力(のうりょく)自覚(じかく)させないように、あえて強い言葉を使っているんじゃないのかと。



 ......おそらく、奴が鏡美(かがみ)から()()った心は勇気(ゆうき)

 恐怖(きょうふ)に立ち向かっていく勇気(ゆうき)を、奴は彼女から奪い取った。


 その状態で恐怖(きょうふ)(しん)(あた)えることによって支配(しはい)し、彼女を無理やり(したが)わせていたのだ。



 戦闘(せんとう)ですぐ俺に力を使わなかったのも、(この)んで使わなかったわけじゃない。俺の心が()れるまで使えなかったのだ。


 ()正面(しょうめん)から力を使ったとしても、(わざ)を受けたという自覚(じかく)や心の持ち方次第(しだい)解除(かいじょ)されてしまう。


 だから奴は、先に鏡美(かがみ)やフブキに勝ち目がないことを見せつけることで、俺の心をへし()ろうとしていたのだ。



 「フブキ」


 「ん」



 と、多くを(かた)らず、フブキは2つ返事でタナトスの方へと歩き出す。


 自分が何をするべきか、彼女も分かっているから。



 「や、やる気ですか......! 能力(のうりょく)がバレていようと、いくらでもやりようは......!!」


 「............」



 ずんずんと、フブキは(あゆ)みを止めない。



 「........あぁ、分かった!! あなたたちは地位(ちい)が欲しいのでしょう!? ならば、()()きといきましょう!! ここで私を見逃(みのが)すならば、私が上に話を通しましょう!!! だから———」



 ペラペラと、わけの分からない的外(まとはず)れなことを言ってくるも、全て無視(むし)


 一歩(いっぽ)、また一歩(いっぽ)とフブキがタナトスとの距離を(ちぢ)める。



 「待て———待って!! 分かった!! 分かったから、まだ話し合える!! 今なら話し合いを———」


 「お前はそう言って、鏡美(かがみ)(さけ)びを一度でも聞こうとしたのか」



 ———いや、していない。



 よって、そんな言葉など聞く価値(かち)なし。



 その場で微動(びどう)だにしないタナトスに、フブキが思いっきり(こぶし)(たた)()む。



 「ひっ......ぎゃああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!?????」



 フブキの一撃(いちげき)を受け、あっという間に死神(しにがみ)が消えていく。


 戦闘(せんとう)ができないという特性(とくせい)(じょう)、たった一撃(いちげき)でも、フブキのそれは致命(ちめい)(しょう)となる。



 ———しかも、残酷(ざんこく)なことに、それでもサーバントが(たお)されたことには変わりない。


 すぐさまその反動(はんどう)激痛(げきつう)へと変わり、使役者(しえきしゃ)であるマインドへと(おそ)いかかる。



 「いーじー......なんてもんじゃない」



 と、(ほの)かな灰色(はいいろ)(かみ)()らし、退屈(たいくつ)そうにフブキが()()てる。


 表情(ひょうじょう)自体(じたい)はいつもと変わらないが、おそらく、彼女も奴の(おこな)いには相当(そうとう)頭に来ているのだろう。


 その(いか)りをぶつける相手として、タナトスではフブキにとって(もの)()りない。


 そりゃ、悪態(あくたい)の一つや二つはつきたくなってしまうだろう。



 ———さて。



 「お前の負けだ。そろそろ覚悟(かくご)決めてもらうぜ?」


 「............」



 (かた)で息をしながら、その場に(ひざ)をつくマインド。


 さっきまであんな(なさ)けない悲鳴(ひめい)を上げていたわけだし、正直すぐ(たお)れるとばかり思っていたが、現実(げんじつ)は違った。


 (くさ)っても【執行者(しっこうしゃ)幹部(かんぶ)とでも言うべきか、ずっと視線だけはこちらへと向けてくる。



 「........クフフ......フフッ........あひゃひゃひゃ

ひゃひゃ........!!」



 ———突然、その場で(ひざ)をついたまま、マインドが(くる)ったように笑い出す。


 不気味(ぶきみ)としか言えないその奇行(きこう)に、俺は内心(ないしん)(まゆ)をひそめる。



 「......どうしたんだ、突然? とうとう頭がイカれたか?」


 「いえ......あなた方が、ご自身(じしん)で何をしたのか理解していないようでしたので、つい......」



 顔中に脂汗(あぶらあせ)をかきながら、マインドは気味(きみ)の悪い笑みを浮かべる。



 「私は【執行者(しっこうしゃ)のマインド......この学園の意思(いし)にして正義(せいぎ)........つまりは、絶対的な支配者(しはいしゃ)です。

 ......そんな存在(そんざい)反旗(はんき)(ひるがえ)すなど言語(ごんご)道断(どうだん)!!! これは、学園への反逆(はんぎゃく)行為(こうい)だッッ!!!!」



 両手(りょうて)を広げ、血走(ちばし)った目でマインドが(わら)う。



 「この(けん)は、私が告発(こくはつ)します!! そうなれば、あなた方の愚行(ぐこう)は明るみとなり、必ずや(しか)るべき(さば)きを受けることになるでしょう!!

 アヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!!!! 残念(ざんねん)でしたねぇ!? これであなたたちは終わりです!!!!」 



 ......やはり、そう来たか。



 (たん)なる()台詞(ぜりふ)......と言うには、いかんせん無視(むし)できない内容(ないよう)だ。


 こんなふざけた奴ではあるが、学園で立場があるのも事実(じじつ)。俺たちの弁解(べんかい)なんぞよりも、影響力(えいきょうりょく)が高いのもまた道理(どうり)なのだ。



 奴の一言(ひとこと)によって俺たちは悪者(わるもの)になり、鏡美(かがみ)は“召繋師(リンカー)()り”の黒幕(くろまく)として(さば)きを受ける。


 そんな、俺たちにとって最悪(さいあく)なシナリオを、コイツには実現(じつげん)できる力がある。

 所詮(しょせん)コイツを(たお)したところで、強行手段(きょうこうしゅだん)に出られれば、負けるのはこっちなんだ。



 ———と、だからこそ、その対策(たいさく)もしやすいんだけどな。



 「———これ、なーんだ?」


 「あ?」



 そんな軽い調子とともに、俺は秘策(ひさく)とも呼べるブツを取り出す。


 この状況をひっくり返すことのできる、俺たちの最終(さいしゅう)兵器(へいき)を。



 「なんですか、それは?  見たところ、マイクのように見えますが........?」


 「ああ」



 そう。


 俺が(ふところ)から取り出したのは、一本のマイク。


 最終(さいしゅう)兵器(へいき)とは名ばかりの、なんの変哲(へんてつ)もない普通のマイクだ。



 「お(さっし)の通り、これは拡声(かくせい)機能(きのう)()きのマイク。放送(ほうそう)()の知り合いから(あず)かったものだ」



 ここで言う放送(ほうそう)()の知り合いというのは、(くだん)の金髪女子生徒である愛澤(あいざわ) 恋歌(れんか)だ。


 鏡美(かがみ)がここを(おとず)れる前に、前もってコンタクトを取っておいたのだ。



 「これって本当に便利(べんり)でよ〜 ワイヤレスで、そのままスピーカーに(つな)げられちまうんだ。セッティングさえすれば、すぐに音声(おんせい)だって収録(しゅうろく)できる」


 「......さっきから、何の話をしているのですか?」



 わけが分からない、といった様子(ようす)(まゆ)をひそめるマインド。



 確かに、ここまでならただのマイクの宣伝(せんでん)だ。そんなことを今ここでやる必要性(ひつようせい)はないし、一見(いっけん)頭がおかしくなったとしか思えないだろう。


 ......ま、ここまでなら、の話だけど。



 「......ただ、残念なことに、コイツは不良品(ふりょうひん)らしくてな? ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 「!」



 聞き(のが)せないその一言(ひとこと)に、マインドの表情(ひょうじょう)が変わったのが分かった。


 電源(でんげん)が入りっぱなし......つまりは(いま)現在(げんざい)も、マイクが音を(ひろ)い続けてるということ。



 それを横目で見て取った俺は、(かす)かに口角(こうかく)を上げる。



 「おまけに、無駄(むだ)機能(きのう)だけは良くてさ? めっちゃ小さい音も拾うから、どんなに聞かれたくない話でも、スピーカーからダダ()れになっちまんだよなぁ」


 「あなた......まさか........!!」



 ———ああ、そうだ。


 ここまで言えば、奴も何を言いたいか分かるだろう。


 俺が今このために用意(ようい)した、()みの一手(いって)を。


 

 「———あ、いけね。あろうことか、胸ポケットに入れっぱなしだったせいで、さっきのやり取り全部放送(ほうそう)されちゃってたわ........マジ、メンゴ♡」



 と、いつかの不知火(しらぬい)がやっていたように、下手くそなウィンクとともに(した)を出す。



 ———そう。


 今さら解説(かいせつ)するまでもないだろうが、ここまでが俺の作戦(さくせん)だ。


 良くも悪くも“召繋師(リンカー)()り”の(うわさ)が広まってしまっているこの状況で、ただコイツを倒すだけでは()りない。鏡美(かがみ)利用(りよう)されていたことを(しめ)さない(かぎ)り、この事件(じけん)解決(かいけつ)しないのだ。


 かと言って、黒幕(くろまく)であるこの男がそれを(みと)めるはずもないし、闇雲(やみくも)(いど)んだところで、【執行者(しっこうしゃ)権限(けんげん)で、鏡美(かがみ)(つみ)()せられて終わりだ。

 


 ......そこで考えたのが、奴に自白(じはく)をさせた上で、それを放送(ほうそう)してしまうという作戦(さくせん)だ。


 鏡美(かがみ)接触(せっしょく)することで油断(ゆだん)(さそ)い、俺が神経(しんけい)逆撫(さかな)ですることで自白(じはく)を引き出す。



 後はそれをどう周りに(とど)けるかだが、ウィングさんの調べで愛澤(あいざわ) 恋歌(れんか)放送(ほうそう)()なのは知っていたし、彼女と上手く交渉(こうしょう)さえできれば、機材(きざい)に関してもクリアできる。


 仮にダメだったとしても、奴の発言(はつげん)さえ記録(きろく)できてしまえばいい。規模(きぼ)は小さくなるかもしれないが、録音(ろくおん)した音声(おんせい)を、学園側に提出(ていしゅつ)しちまえばいいだけだ。



 ......ま、まさかこんな都合(つごう)のいい欠陥品(けっかんひん)があって、しかも『面白(おもしろ)そうだから、いいよ〜』の二つ返事で()してもらえるとは、さすがの俺も予想できなかったけど。

 

 彼女のことだ。鏡美(かがみ)利用(りよう)された(いか)りというのもあったとは思うが、今ごろきっと、俺は爆笑(ばくしょう)(たね)にでもされているのだろう。


 まぁ、おかげ様で、全ては上手くいったんだけどな。



 「最初から........これが(ねら)いで......始めから、私を()めるつもりで........!!」


 「ひでぇこと言うなぁ......たまたま修理(しゅうり)(たの)まれてて、それを忘れてただけだって。な?」



 と言うのも、もちろん嘘だ。


 仮にたのまれたとしたって直すことなどできやしないし、そんな危険(きけん)なブツを持ち歩くはずがない。


 その証拠(しょうこ)に、普段(ふだん)この不良品(ふりょうひん)マイクは、放送室(ほうそうしつ)奥底(おくそこ)へと封印(ふういん)してあるらしい。

 愛澤(あいざわ) 恋歌(れんか)の話によると、そうした上で、そもそも電池(でんち)すら入れないようにしてあるとのことだ。


 下手をすれば、その場のやり取りが全部放送(ほうそう)されちまうからな。



 「放課後ではあるが、人がいないというわけじゃない。お前のしてきた悪行(あくぎょう)は、今この学園にいるやつらに全部筒抜(つつぬ)けだ」



 そしてその中には、イリーナ先生を(ふく)めた、まだ仕事(しごと)途中(とちゅう)教員(きょういん)大勢(おおぜい)いる。


 無論、学園長だって例外(れいがい)ではない。


 普段(ふだん)は【執行者(しっこうしゃ)】の言いなりのお(かざ)りじいさんらしいが、それでも決定権(けっていけん)(ゆう)してるお(えら)いさんだ。



 ———そんな人物の耳元(みみもと)にも、奴のしてきた悪行(あくぎょう)(とど)く。



 “召繋師(リンカー)()り”の、真の黒幕(くろまく)として。



 「これで終わりだ、マインド。 .......分かったら、二度と鏡美(かがみ)の前に姿を(あらわ)すなッ!!!!!!!!」



 (おれ)自身(じしん)(いか)り———そして彼女の流した(なみだ)を、一つにしてぶつける。




 やがて観念(かんねん)したのか、精神(マインド)の名を持つ少年は、その場に(たお)()すのであった。





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