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異世界少女と家族生活 〜たまたま契約したので、世界救ってみていいですか?〜  作者: MATA=あめ
〜優しき少女の未来を、救ってみていいですか?〜
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第5章 約束 ♢2


 あの激動(げきどう)の朝が過ぎ、あっという間に午後の実戦形式授業。


 ()()めていた(きり)も晴れ、天候(てんこう)良好(りょうこう)


 ———あれからは敵の襲撃(しゅうげき)もなく、俺たちはついに、クラス内二対二(タッグマッチ)本番(ほんばん)(むか)える。



 「いよいよ、だな......」


 「........うん」



 少し、緊張(きんちょう)をはらんだような声で、そう返してくれる鏡美(かがみ)


 ......と言っても、先に試合(しあい)(おこな)うのはサーバントなしのグループであるため、俺たちの出番(でばん)はまだ先だ。


 だから、今は体力(たいりょく)温存(おんぞん)の意味でも、近くにある木陰(こかげ)へと場所を移していた。



 「なぁ、鏡美(かがみ)。ちょっといいか?」


 「あ、うん......どうしたの?」



 草むらで遊んでいるフブキとサウンド•フォックスから少し(はな)れ、俺は彼女を少し奥の方へと呼び出す。



 本当は彼女の不安(ふあん)(まぎ)らわすためにも、今(おこな)われている試合(しあい)を見るべきなのだろうが、今はそれよりも優先(ゆうせん)すべきことがある。



 「お前に、ちょっと渡したいものがあってな」


 「?」



 可愛らしく小首(こくび)(かしげ)鏡美(かがみ)に、俺は例のペアチケットを差し出す。



 「嘘......これって........」


 「映画(えいが)のペアチケットだ。優勝(ゆうしょう)(いわ)いに、2人でどうかなって......」


 「!?」



 チケットを目にし、心底(しんそこ)(おどろ)いたように目を丸くする鏡美(かがみ)


 その分かりやすくも可愛らしい反応(はんのう)に、俺はやや早口(はやくち)になりながらも言葉を続ける。



 「......って言っても、用意(ようい)したの俺じゃないし......まだ優勝(ゆうしょう)できるって決まったわけでも......あー、ほんと、何言ってんだろうな、俺! 今のは忘れて———」



 ———その時、トンと、背中(せなか)()しに(あたた)かい何かが、優しく()れるのを感じた。



 「すごく......(うれ)しい......」



 (ひか)えめに、されども心の(そこ)から()れたような言葉が耳に入る。


 ゆっくりで、どこか甘酸(あまず)っぱくなっていく空気感(くうきかん)

 そのあまりにも未知数(みちすう)感覚(かんかく)に、次第(しだい)に自分の心臓(しんぞう)が言うことを聞かなくなる。



 「鏡美(かがみ)、お前......」


 「ダメ」



 ———返ってきたのは、そんな(やわ)らかな拒絶(きょぜつ)の声。



 「今は......ダメ......()ずかしい、から........」



 それっきり、彼女の言葉は途切(とぎ)れた。



 ......今、俺の後ろでは何が起こっているのか。


 ()たして彼女は、どんな表情(ひょうじょう)をしているのか。


 知りたいような......知ってしまえば、二度と(もど)れなくなってしまうような。


 そんな、緊張(きんちょう)とはまた違う高揚感(こうようかん)全身(ぜんしん)(つつ)()み、不思議(ふしぎ)と俺はその場から全く動けなくなる。



 「............」



 ———やがてしばらくそうしていると、背中(せなか)()しに()れていた(ぬく)もりがそっと(はな)れた。


 同時(どうじ)に、先程の(みょう)感覚(かんかく)からも解放(かいほう)され、俺も彼女の方へと体を向ける。



 「.......そのためにも......まずは勝たなきゃ、だね」


 「......ああ。反省会(はんせいかい)にしないためにも、全力(ぜんりょく)で勝ちにいくぞ」



 そう(こた)える彼女の(ひとみ)には、一切(いっさい)(まよ)いも感じさせなかった。































  









 「サウンド•フォックス! コンプレス•ロア!!」


 「ガウ!!」



 ———クラス内二対二(タッグマッチ)、サーバント持ちグループ一回戦(いっかいせん)第一(だいいち)試合(しあい)にて。


 鏡美(かがみ)号令(ごうれい)により放たれた圧縮(あっしゅく)された衝撃波(しょうげきは)(かたまり)が、対峙(たいじ)するサーバントの隊列(たいれつ)(くず)す。


 完全に(きょ)()かれたのか、ぎこちなく後方へと下がり、(あら)たに立て直そうとするも———



 「わっ! ......ごめん」


 「いや、こっちこそ———」


 「どこを見ているの?」



 そんなやり取りが聞こえた(おり)にはもう、()()していたフブキが、相手サーバントの背後(はいご)へと回っていた。


 

 そのまま、円を(えが)くように(まわ)()りをし、2体を同時(どうじ)にノックアウトする。



 「———そこまで!! 勝者(しょうしゃ)宇野(うの) (かなで)鏡美(かがみ) 雛子(ひなこ)ペア!!!」



 イリーナ先生が判定(はんてい)(くだ)し、周囲(しゅうい)観衆(かんしゅう)から大きな声が上がる。


 全ては作戦(さくせん)(どお)り。


 俺たちの完全勝利(しょうり)だ。




 「やったぁ........!」


 「ああ。俺たちの勝ちだ」



 先程の木陰(こかげ)へと場所を移し、2人でハイタッチを()わす。



 ......正直なことを言うと、かなり物足りないくらいにあっさりとした勝利(しょうり)だった。


 個々(ここ)実力(じつりょく)もそうだが、連携(れんけい)精度(せいど)に天と地ほどの差がある。


 サーバント同士(どうし)相性(あいしょう)も悪いし、主人(しゅじん)たる召繋師(リンカー)判断(はんだん)も遅い。


 咄嗟(とっさ)場面(ばめん)でも遠慮(えんりょ)が多かったし、あれでは以前の俺たちかそれ以下だ。



 「お? 2人とも、やってんね〜」



 そんな緊張感(きんちょうかん)のない、間延(まの)びしたような声が聞こえ、俺と鏡美(かがみ)は顔をそちらへと向けた。


 見やると、そこには予想通り、(くだん)の金髪ギャルの姿があった。



 「よう、愛澤(あいざわ)調子(ちょうし)はどうだ?」


 「そりゃもう、ばっちぐーよ。今のうちなら、アンタたちにだって負けないよ」


 「気が早ぇよ。その前に、まずは一回戦(いっかいせん)、だろ?」


 「ん? 何言ってんの、かなっち?」



 俺のそんな()いかけに(たい)し、愛澤(あいざわ) 恋歌(れんか)はこてんと首を(かし)げる。



 「うちらの試合(しあい)なら、()()()()()()()()()()()()? あっという間に瞬殺(しゅんさつ)しちゃって、試合(しあい)した気にすらならなかったよ〜」



 あっけらかんとした様子(ようす)で、とんでもないことを言い出す愛澤(あいざわ) 恋歌(れんか)に、俺と鏡美(かがみ)絶句(ぜっく)した。


 愛澤(あいざわ) 恋歌(れんか)のペアが戦うのは第二(だいに)試合(しあい)、つまりは俺たちの次だ。


 ここまで移動するのに5分くらい時間を(ゆう)したと考えれば、試合(しあい)自体(じたい)は1、2分くらいで終わったことになる。



 俺たちだって15分くらいかかったというのに、もはやそんな()ではない。


 明らかに、立っている次元(じげん)が違う。



 見習(みなら)いとは言え、同じサーバント持ちの召繋師(リンカー)瞬殺(しゅんさつ)とは......



 コイツ、一体どんな手を使ったんだ———?



 「———時間になりましたわ。出場者(しゅつじょうしゃ)皆様(みなさま)は、定位置(ていいち)に着いてください」



 と、驚愕(きょうがく)する俺たちをよそに、イリーナ先生から集合(しゅうごう)合図(あいず)がかかる。


 愛澤(あいざわ) 恋歌(れんか)は視線だけをそちらへとやると、いつものように気怠(けだる)そうな様子(ようす)で続けた。



 「なんだ、もうそんな時間か........ま、そーゆーわけだから、お(たが)い頑張ろうぜ。

 ひなぴも、悪いけど容赦(ようしゃ)なんてしないから」


 「あ........うん......私も、負けない........」


 「ん........じゃ、先行ってっからな〜」



 と、一瞬だけぎこちない様子(ようす)を見せながらも、最後にはいつもの調子でその場を()る。


 あっという間にその背中(せなか)は見えなくなっていき、(なか)呆然(ぼうぜん)とする俺たちだけが取り残される。



 「鏡美(かがみ)......」


 「うん......大丈夫......」



 俺の言いたいことを(さっ)するかのように、短く答える鏡美(かがみ)



 ......正直なことを言うと、なんとなく、こうなることは分かっていた。


 アイツは必ず決勝(けっしょう)に上がってくる。そんな確信(かくしん)は、俺や鏡美(かがみ)の中にだってきっとあった。


 ただ、実際にそれを目の前にしてみると、しかもそれ以上のことをされてしまうと、やはり思うところがある。



 本当に勝てるのか? 自分たちでアイツらに対抗(たいこう)できるのか?


 いくら努力(どりょく)をしてきたからと言ったって、不安(ふあん)を感じないなんてことはない。



 ———それに、愛澤(あいざわ) 恋歌(れんか)もそうだが、そのチームメイトというのも気になる。


 アイツが(みと)め、それもこんな功績(こうせき)(たた)き出してしまえるような人物、十中八九(じゅっちゅうはっく)タダ者ではない。


 一体どこの誰なのか、はたまた何者(なにもの)なのか。


 愛澤(あいざわ) 恋歌(れんか)の言った、やりにくいとはどういう意味なのか。俺の中の不安(ふあん)好奇心(こうきしん)が、際限(さいげん)なく(ふく)()がっていく。



 って———



 「なんでお前がここにいるんだよ!?」


 「ん?」



 決勝戦(けっしょうせん)試合(しあい)開始(かいし)(まえ)にて。


 しれっと愛澤(あいざわ) 恋歌(れんか)の隣に立つその人物に、俺は思わず(さけ)びを上げた。



 ......しかし、そんな俺の(さけ)びにも全く(どう)じず、そいつはいつも通りの能天気(のうてんき)な調子で口を開く。



 「なんでってそりゃ、決まってんだろ? 俺がお前らの対戦(たいせん)相手(あいて)だからだよ、(かなで)きゅん?」


 

 と、自慢(じまん)の外はねの髪を(はじ)きながら、カッコつかないカッコつけをかます対戦(たいせん)相手(あいて)———もとい、()() ()


 ずっと謎に(つつ)まれていた愛澤(あいざわ) 恋歌(れんか)のチームメイトは、まさかの三度(さんど)(めし)よりナンパ()きの、俺の親友(しんゆう)だった。



 「俺はな、(かなで)......お前に今、めちゃくちゃジェラシってるんだぜ?」


 「は? お前、何言って———」


 「とぼけんじゃねぇ!」



 すると、なぜか天堂(てんどう)(あつ)い(?)(なみだ)を流しながら、ビシッと俺の方を指差す。



 「知ってんだぞ! お前ら訓練(くんれん)(しょう)して、毎日(まいにち)毎日(まいにち)イチャコラと! 放課後だって、ず〜っと遅くまで一緒(いっしょ)にいやがって!!」


 「いやだから、それはあくまで訓練(くんれん)一貫(いっかん)であって———」


 「それだけじゃねぇ! この前なんか、誰もいない2人っきりの密室(みっしつ)で、長い時間お楽しみみたいだったじゃねぇか!!」


 「言い方ぁ! それっぽく言ってるけど、2人でカラオケ行ってただけだからな!!!」



 大事(だいじ)試合(しあい)前だというのに、一体何を言っているんだ、コイツは。


 ここに立ってる以上、もっと(ほこ)りとか(おも)いとか、そんな(あつ)い何かはないのか!


 分かってはいたことだが、無茶苦茶(むちゃくちゃ)にもほどがある。



 「......大体(だいたい)、それを言ったらお前、この前彼女できたとか喜んでたじゃねぇか!! あの話はどうなったんだよ!?」


 「それは......! その......なんていうか........一時(いっとき)の気の迷いだったというか......その........な......?」



 ......あぁー、なるほど。


 破局(はきょく)しちまったんだな? 


 それか、(ばつ)ゲームかなんかだったとかな。



 ———この天堂(てんどう) (りん)という少年、顔は良い方と(ささや)かれてはいるのだが、いかんせん下心(したごころ)丸出しで異性(いせい)と接するため、まともにモテたためしがない。


 大体(だいたい)はこっぴどく振られ、仮にOKを出されたとしても、そのほとんどは遊びか(ばつ)ゲームという始末(しまつ)


 (うわさ)では、一回だけまともに()()ったこともあるらしいが、それを本人(ほんにん)に聞くと「やめろ! 思い出したくない!!」と、ひどく(おび)えた様子(ようす)拒否(きょひ)される。



 (よう)するに、何が言いたいかというと、とことん恋愛(れんあい)女神(めがみ)(きら)われている可哀想(かわいそう)なやつということだ。



 「〜〜〜〜〜〜とにかく!! お前みたいに、可愛い女の子と好き放題イチャコラしてるようなやつを、絶対許すわけにはいかない! この俺の(ほこ)りにかけてでも、必ずぶっ(たお)してやる!」


 「......それは、ちょっち聞き捨てならないな〜」



 そう声を上げたのは、ずっと沈黙(ちんもく)(つらぬ)いていた愛澤(あいざわ) 恋歌(れんか)だった。



 ......その、天堂(てんどう)見据(みす)える(するど)い視線。


 おそらく、自分のチームメイトの動機(どうき)があまりにも不純(ふじゅん)だから、一言(ひとこと)物申(ものもう)したいということなのだろう。



 そうだ、言ってやれ愛澤(あいざわ)


 大事(だいじ)試合(しあい)(まえ)に、わけ分かんないことばっか言ってんじゃねぇって!



 「うちみたいな、可愛い美少女が近くにいてその言い草とか、さすがにどうかと思うな〜? それとも何? うちみたいなのは、可愛くないとでも言いたいわけ?」


 「そ、それは........」



 やけに(あつ)(はっ)しながらそんなことを言う愛澤(あいざわ) 恋歌(れんか)に、途端(とたん)にたじたじになる天堂(てんどう)


 

 いや......ツッコむとこ、そこ?


 もっと他にないのか? 


 そんなことのためにチーム組んだのか?とか、そんなんで本当に勝てると思っているのか?とかさ。



 まぁ、言わんとしてることは、分からなくもないんだけど......



 「........そんなことない!! れんたんだって十分(じゅうぶん)可愛いよ! 美人(びじん)だし(かみ)とか綺麗(きれい)だし! 後......けっこうおっぱい大きいし!!」


 「きんも。二度と(しゃ)べんな、くそ野郎(やろう)



 まるでゴミを見るかのような氷の視線に、見事撃沈(げきちん)される天堂てんどう



 ......いやまぁでも、今のは明らかに天堂(てんどう)が悪い。


 『十分(じゅうぶん)可愛い』って発言(はつげん)だけでも失礼(しつれい)だし、最後のなんて女性に対しては論外(ろんがい)だ。


 こういうのがモテない要因(よういん)だし、それを悪気(わるぎ)なくやってるのが、またタチが悪い。



 「.......こほん。お話中申し訳ないのですが、そろそろ始めてもいいですかしら? 時間も(かぎ)られていますので」



 と、笑顔のまま(ほお)をひくつかせるイリーナ先生に、「すいません......」と、俺たち3人は素直(すなお)に頭を下げた(鏡美(かがみ)は1人であわあわしていた)。



 ......色々(いろいろ)とツッコミどころは満載(まんさい)ではあるが、今はそんなこと気にしている場合ではない。


 それに、天堂(てんどう)がここにいるということは、コイツにも自分のサーバントができたということに他ならない。



 それは親友(しんゆう)として(うれ)しい(かぎ)りだし、同じ見習(みなら)召繋師(リンカー)としても(ほこ)らしい。


 コイツの努力(どりょく)は誰よりも近くで見てきたし、そんな相手と今一番(いまいちばん)試合(しあい)ができるなど、光栄(こうえい)(かぎ)りではないか。



 ———さぁ、ぐだぐだ考えるのはやめて、そろそろおっ(ぱじ)るとしようじゃねぇか!



 「「「「リンク•アライズ———!!!!」」」」



 4人の声が(かさ)なり、先程の(なご)やかな空気が一転(いってん)する。



 俺の光はフブキへと、鏡美(かがみ)の光はサウンド•フォックスへと()び、そして(つな)がる。


 瞬間、世界のしがらみから解放(かいほう)され、彼らの本来(ほんらい)の力が呼び()まされる。

 


 「———〈歌姫(うたひめ)〉トロイ•マーメイド」


 「———来い、〈メルト•ワイヴァーン〉!!!!」



 愛澤(あいざわ) 恋歌(れんか)の元には、巨大(きょだい)なハープを持った、石に(すわ)人魚(にんぎょ)


 そして、天堂(てんどう)の元には、()(さか)(ほのお)()(まと)いし、中型(ちゅうがた)翼竜(よくりゅう)



 海を連想(れんそう)させる人魚姫(にんぎょひめ)に、空を支配(しはい)せし(ほのお)翼竜(よくりゅう)


 海と空、(つい)なる世界(せかい)(いろど)る2体の怪物(かいぶつ)が、俺たちの前に立ちはだかる。



 ———って、



 「お前それ、人造(じんぞう)サーバントじゃねぇか!!!」


 「あ、バレた?」



 「テヘ♡」と、(全く可愛くはなかったが)可愛らしく(した)を出して見せる天堂(てんどう)



 その、〈ネオ•ワイヴァーン〉を少しデカくしたようなフォルム。


 ()(さか)(ほのお)(ほのお)狭間(はざま)から見える、結晶(けっしょう)機械(きかい)中間(ちゅうかん)のような表面(ひょうめん)


 急にサーバントができたと聞いておかしいとは思っていたが、こんなの、素人(しろうと)()から見たって人造(じんぞう)サーバントなのは一目瞭然(いちもくりょうぜん)だ。



 「......確かにお前の言う通り、〈メルト•ワイヴァーン〉は人造(じんぞう)サーバントかもしれないけどよ。でもコイツは、俺のパートナーとして学園側から支給(しきゅう)された、立派(りっぱ)なサーバントなんだぜ?」


 「............」



 ......んな、バカな。


 確かにそういった話はよく聞くが、それにしてはタイミングが良すぎる。


 それこそ、何かしらの不正(ふせい)を使ったのではないかと思うほどには。


 何しろコイツは、バカな上に行動力(こうどうりょく)化身(けしん)だ。自分の目的のため......もとい、可愛い女の子のためなら人に()められないようなことだってできてしまう。


 さすがに不正(ふせい)冗談(じょうだん)にしたって、何かしらをやらかした可能(かのう)(せい)十分(じゅうぶん)高い。


 例えば、駄々(だだ)をこねまくって、無理くり学園側から(たまわ)った、とかな。



 「......と、思うかもしれませんが、事実(じじつ)ですわ。(しん)(がた)いことに、天堂(てんどう)君の功績(こうせき)は、正式(せいしき)に学園側から(みとめ)られているんですの。それも、〈ネオ•ワイヴァーン〉の上位個体(じょういこたい)である、〈メルト•ワイヴァーン〉が支給(しきゅう)されるくらいには。

 だから、これは天堂(てんどう)君が駄々(だだ)をこねてというわけではなく、日々(ひび)努力(どりょく)(みと)められたその(あかし)で、たまたま今回と(かさ)なっただけ。本当に(しん)(がた)い話とは思いますが、不正(ふせい)じゃないことだけは保証(ほしょう)(いた)しますわ」


 「先生〜、なんか(とげ)がないか〜?」



 うん......まさにエスパーとしか言いようのないイリーナ先生の補足(ほそく)に、苦笑(にがわら)いを浮かべる天堂(てんどう)



 なるほど......本当に(しん)(がた)い話ではあるが、(すじ)(とお)らないこともない。


 それに、確かにタイミングは良すぎるが、決して可能性(かのうせい)がゼロということもない。

 実際、天堂(てんどう)成績(せいせき)優秀(ゆうしゅう)なわけだし、たまたまタイミングが(かさ)なるなんてことも十分(じゅうぶん)あり()る。

 


 ......一応(いちおう)、本当に何もやらかしてないのかだけ、後で確認しておくとしよう。


 親友(しんゆう)として。





 「......鏡美(かがみ)、とりあえずまずは作戦(さくせん)(どお)りに———」



 ———と、俺が言い終わるその刹那(せつな)()(さか)(ほのお)を身に(まと)った翼竜(よくりゅう)が、一瞬でフブキへと肉薄(にくはく)していた。



 (うで)をクロスし、それをほぼ反射的(はんしゃてき)防御(ぼうぎょ)するフブキだったが、〈メルト•ワイヴァーン〉は空中(くうちゅう)へと飛び上がり、すぐさま体勢(たいせい)を立て直す。



 からの、滑空(かっくう)攻撃(こうげき)四方八方(しほうはっぽう)より(おこな)われる猛攻(もうこう)が、フブキに()()なく(おそ)いかかる。

 


 (なんだ———あの、デタラメなスピードは———!?)



 一撃(いちげき)一撃(いちげき)威力(いりょく)は高くない。されども、驚異的(きょういてき)なのはその(はや)さ。



 〈ネオ•ワイヴァーン〉はもちろんのこと、その飛行速度(ひこうそくど)は、空の支配(しはい)(しゃ)たる〈ハイ•ワイヴァーン〉にすらも引けを取っていない。


 ......いや。むしろ、体格(たいかく)が少し小さくなってる分、〈ハイ•ワイヴァーン〉よりも小回(こまわ)りが()き、攻撃と攻撃の間に(すき)がない———!



 「まだまだッ!!」



 その言葉の通り、〈メルト•ワイヴァーン〉はしつこくまとわりつき、(すさ)まじい速度(そくど)滑空(かっくう)攻撃(こうげき)()(かえ)す。


 フブキはなんとか反応(はんのう)できているが、防戦一方(ぼうせんいっぽう)。俺は(いま)だに、その姿すら目で追えていない。



 「ッ......!! フブキ、一旦(いったん)後退(こうたい)だっ!! 鏡美(かがみ)!」


 「う、うん!! サウンド•フォックス!」



 すると、すぐさま俺の意図(いと)(さっ)してくれた鏡美かがみが、サウンド•フォックスに合図(あいず)を出す。



 ———ソニック•ブーム。


 (すさ)まじい速度(そくど)衝撃波(しょうげきは)が、空中(くうちゅう)を飛び回る翼竜(よくりゅう)の姿を(とら)える。



 だが———



 『〜〜〜〜〜〜♫』



 〈歌姫(うたひめ)〉がハープの(げん)に指を()れ、美しい音色(ねいろ)がその場に響き渡る。


 すると、ソニック•ブームが翼竜(よくりゅう)へと(とど)くその瞬間、()()()()()()()()()()()



 「ちょっと、かなっち〜、うちのこと忘れてもらっちゃ(こま)るんですけど〜?」


 「「!!」」



 およそ、戦闘(せんとう)(ちゅう)とは思えないテンションで、(くちびる)(とが)らせる愛澤(あいざわ) 恋歌(れんか)



 ......決して、忘れていたわけではない。


 されども、あまりにも予想外の干渉(かんしょう)に、俺も鏡美(かがみ)も完全に思考(しこう)停止(ていし)していた。



 「よっしゃ、れんたんナイスアシスト!!」


 「だから、その呼び方やめてくんない? マジキモいんですけど」



 真っ白な頭の中で響く、そんな場違(ばちが)いなやり取り。


 と同時に、〈メルト•ワイヴァーン〉も元の場所へと後退(こうたい)していき、俺もどうにか現実世界(げんじつせかい)へと意識(いしき)(もど)す。



 「フブキ! 大丈夫か!?」


 「うん......なんとか......」



 〈メルト•ワイヴァーン〉が後退(こうたい)したのを見計(みはか)らい、(ひざ)をつくフブキの元へと()()る俺。



 ......見たところ、目立(めだ)つような(きず)はない。

 

 だが、あの鉤爪(かぎづめ)のせいか所々(ところどころ)()(きず)があり、服も一部(いちぶ)()()げてしまっていた。



 しかし、あのフブキが、たった少しの攻防(こうぼう)でこの有様(ありさま)


 少なくとも、一回戦の相手とは(かく)が違っていた。



 「どう、かなっち? これがうちらの実力(じつりょく)。これなら、アンタたちに勝つのだって夢じゃないよ?」


 「はっ......まだ始まったばかりだろ? 勝ち(ほこ)るには、ちっと(はえ)ぇんじゃねぇか?」


 「ひゅ〜、言うねぇかなっち? そういうとこ、うちはカッコいいと思うよ? ただね———」



 すると、いつかの彼女がそうしてたように、そのエメラルドの(ひとみ)が、獲物(えもの)(ねら)(へび)のものへと変化する。



 「そっちが様子(ようす)()してたように、こっちも少し観察(かんさつ)してただけだから。

 ———お(たが)い、こっからが本番(ほんばん)っしょ!! トロイ•マーメイド!!」


 『———!!』



 ———瞬間、ハープを(かま)え、〈歌姫(うたひめ)〉が美しい旋律(せんりつ)(かな)で始めた。

 すると、すぐさまそこに美しい歌声(うたごえ)(くわ)わり、(おだ)やかで、広大(こうだい)海原(うなばら)を思わせる幻想(げんそう)が、その場に完成(かんせい)されていく。



 「うぉ〜〜〜〜!!!! み な ぎ っ て き た———————!!!!!!!!!!」


 「アンタに使ったんじゃないし、いいから早くやって」


 「わ、分かったよ......行け、〈メルト•ワイヴァーン〉!!!」



 すると、〈メルト•ワイヴァーン〉がこちらへと身体(からだ)の向きを変え、()()()()()()


 次に気づいた時にはもう、丸腰(まるごし)のフブキへと肉薄(にくはく)しており、そのまま強烈(きょうれつ)体当(たいあ)たりをかます。


 

 (なんだ......!? さっきまでとは、まるでスピードが......!!)



 そんなことを考えている(おり)にも、フブキはどんどん()()まれていき、あっという間に後方へと()げられていく。


 ......スピードだけではない。パワーだって明らかに違う。


 

 いくらスピードが上乗(うわの)せされてるとはいえ、あのフブキが正面(しょうめん)から(ちから)()けするなど———



 「ッ! もしかして、あの歌か!?」



 〈歌姫(うたひめ)〉があの歌を歌い出した瞬間———あの広大(こうだい)海原(うなばら)出現(しゅつげん)したその瞬間、〈メルト•ワイヴァーン〉の動きが変化(へんか)した。


 もしあの歌に、強力(きょうりょく)なバフ効果(こうか)があったとしたら?


 それによって、〈メルト•ワイヴァーン〉が強化(きょうか)されているのだとしたら———?



 ......もしそうなのだとすれば、先に(たた)かなければならないのは———



 「近づけさせねぇよ!!!」



 と、そんな俺の思考(しこう)見抜(みぬ)くかのように、()(さか)翼竜(よくりゅう)体勢(たいせい)を変え、再びフブキに猛攻撃(もうこうげき)仕掛(しか)ける。


 (さいわ)い、先程の攻撃を一度受けていたからか、かろうじて防御(ぼうぎょ)は追いついている。

 だが、それに専念(せんねん)させられるあまり、フブキはその場から一歩も動けていない———!



 「ならば、私が....... サウンド•フォックス!!!」


 「ガウ!!」



 サウンド•フォックスが口を開き、(すさ)まじい密度(みつど)衝撃波(しょうげきは)を作り出す。



 ———コンプレス•ロア。


 極限(きょくげん)まで圧縮(あっしゅく)された衝撃波(しょうげきは)が〈歌姫(うたひめ)〉向かって飛んでいく。

 

 ......しかし、辺りに広がる大海原(おおうなばら)幻想(げんそう)が、(きば)()くその暴威(ぼうい)を一瞬にして()()んだ。



 「そんな......!? なんで......」


 「ふふん。そんなこと言って、本当は気づいてるんしょ? アンタのサウンド•フォックスじゃ、うちの〈歌姫(うたひめ)〉には(とど)かないって」


 「!?」



 ———鏡美(かがみ) 雛子(ひなこ)最大(さいだい)火力(かりょく)(わざ)、コンプレス•ロア。


 信じ(がた)いことに、ソニック•ブームとは(くら)べものにならないほどの威力(いりょく)(ゆう)しているこの(わざ)すら、〈歌姫(うたひめ)〉の力によって()されてしまった。



 ......ここまでくると、もはや威力(いりょく)がどうこうとか、そういう問題(もんだい)ではない。


 もっと別の......何か根本的(こんぽんてき)な、鏡美(かがみ)攻撃手段(こうげきしゅだん)(ふう)じられてしまっている。



 (なんなんだ......この場で一体、何が起こっているというんだ........!!)



 ジリジリと()()められていく感覚(かんかく)に、俺の全身(ぜんしん)徐々(じょじょ)(あせ)りに()まっていく。



 音を(あやつ)鏡美(かがみ)(わざ)が全て(ふう)じられ、戦場(せんじょう)を飛び回る(ほのお)翼竜(よくりゅう)が、〈歌姫(うたひめ)〉の(かな)でる旋律(せんりつ)奮起(ふんき)し、フブキの()()(はば)む。



 ———そしてその全ての事象(じしょう)が、あの場で旋律(せんりつ)(つむ)ぐ〈歌姫(うたひめ)〉を中心(ちゅうしん)に引き起こされている。


 言うならば、場の完全(かんぜん)なるコントロール。〈歌姫(うたひめ)〉による、〈歌姫(うたひめ)〉のためのコンサート会場(かいじょう)



 今やその演目(えんもく)の全てが、(あるじ)たる愛澤(あいざわ) 恋歌(れんか)の手によって(にぎ)られてしまっている。




 「———さぁ、かなっち。優勝(ゆうしょう)は、うちらがいただいていくよ」



 そんな、絶望的(ぜつぼうてき)宣告(せんこく)とともに、俺たちの試合(しあい)佳境(かきょう)(むか)えていく。




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