第1章 〈異世界よりの来訪者〉♢Side:【レジスタンス】
「な、何が起きたの........?」
少女は、思わずそんな声を漏らした。
だが、それもそのはずだ。
ほんの数分前。
自分たちが命懸けで対峙していた〈ハイ•ワイヴァーン〉。
その〈ハイ•ワイヴァーン〉が、少女の前に佇む光の壁とぶつかり合おうとしていた、その刹那。
『——!? ——!!!!!?? ———!!!!????』
突如、けたたましい断末魔を上げながら倒れ、光の粒子となって消えていく。
あっという間に残骸は消えさり、その場には何ひとつなくなってしまったのだ。
———そして訪れる静寂。
そこだけ切り取ってしまえば、多分1分も経っていない。
本当に、夢を見ているような気分だった。
「———やぁ、ケガはなかったかい?」
「!」
すると突然、少女の後方より、少し中性的な声が響く。
少女がおさのげ髪を揺らしながらそちらを振り向くと、そこには奇妙な2人組がいた。
1人は、漆黒のゴスロリ風のドレスに身を包んだ、落ち着いた雰囲気の女性。
そしてもう1人は、車イスに乗った中性的な顔立ちが特徴の少女だった。
「危ない目に遭わせてしまってすまない。思いの外、彼が頑張るものでね......すっかり入るタイミングを見失ってしまったよ。ははは」
「笑いごとではありませんよ、マスター」
爽やかな笑みを浮かべる車イスの少女に対し、呆れ気味の反応を示す黒衣の女性。
........とてもじゃないが、緊急事態の最中とは思えないテンションだった。
「そ、そんなことよりも......彼は!」
「ん? あぁ、安心したまえ。彼なら私たちが責任を持って、然るべき処置を行うさ。もちろん、君のパートナーについても同様だ。......ね? 編入生の鏡美 雛子くん?」
「え———」
なぜ、私の名前を知っているのか......?
動揺するおさげの少女———鏡美 雛子をよそに、車イスの少女は続ける。
「編入早々に災難だったね。
......けどまぁ、今のこの世界ではよくある話さ。だからこそ、私たちが存在するわけだしね。そうだろう?」
すると、少女の言葉に応じるように、先程のブロンド髪の長身の男も、車イスの少女の元へとやってくる。
初めて正面から見えるその顔には、なぜか形容し難い仮面がついていた。
と、男が自分の元へやってきたのを横目で見届けた車イスの少女は、改めて鏡美 雛子へと顔を向け宣言する。
「———さて。ようこそ、我が〈星麗学園へ。君たちの学園生活は、私たち【レジスタンス】が保証しよう」




