43/43
最終話
結局、当該国家任務に関わった者は皆処刑されてしまった。
雪はビルの屋上で煙草をふかした。
もともと煙草も酒もやらなかったが、香の死を機に手を出してしまった。
香が処刑された後、雪はスパイの仕事をやめ、全く関係のない学習塾の仕事についた。
スパイの仕事より遥かに平和で、給与も思ったよりもらえている。
あの後すぐ子供も生まれ、もう6歳になる。来年からは学校だ。
他国の人間を処刑したことについては、国際問題として批判されたが、別の国で大規模な戦争が起こったことですぐに忘れ去られてしまった。
香の死については、誰も泣いていなかった。
「雪先生、授業」
同僚の講師に呼ばれ、雪は煙草を消した。
今日も子供たちが待っている。雪は小走りで仕事に戻った。