表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
スパイの男   作者: Suzura
40/43

雪と雨 



「雪」


警務省の廊下。雪は休憩室の椅子で項垂れていた。

偶然なのか、計ったのか、ユイが通りかかる。


自販機で咖啡コーヒーを2つ買い、投げるように雪に手渡す。咖啡コーヒーの蓋を開けると、雪の隣に腰掛けた。


「あの後輩。お前の。凰入りしたってよ」

「……」

「司法にかけられる。間違いなく、死刑だな」


雪は俯いた。


「お前、元気ねえなあ」


雨がかかっと笑う。


「お前のその顔、せいせいするわ」


雨は咖啡コーヒーを飲み干すと、空になった缶を捨て場に投げ捨てる。


「お前のその顔が見たかったんだよ。あーあ、あいつを送り込んだのは大正解だったな」

「……まさか」

「上手く働いてくれたよ。ワン官僚。清掃員に化けるなんて、本当天才だよな」

「お前……!!」

「おっと、俺は何も悪くないぞ。もちろんワンも」

「……」


凰では、他官僚が万が一脱国しようとしていた場合、その様子を報告することは美徳とされている。そのための手段は何を使っても罪にはならない。


雨は高笑いをすると、雪の前ににじり寄る。


「大体、目障りなんだよ。偉方の一族の血を引いてるからって何でもかんでも許される。出世だって約束されている。はっきり言って、邪魔」

「それは、」


雪にとって、それは1番触れられたくないことだった。


○●○


「偉方の血、ね」


雨が去った後、雪はため息を吐いた。


雪の母親は、凰の国の始祖の血を引く人らしい。一般人で警務省官僚だった父親と結婚してからは、女だということもあり、皇族から離れることができたそうだ。


雪自身、それを知ったのは何の因果か警務省に入ってからだった。


警務省には、大学を出た後、他の人と変わらず試験に合格して入った。なのに、色眼鏡で見られることばかりだった。


頼んでいない贔屓までされ、居場所は無くなった。

皇族の片割れとはいえ、雪に力はない。香やその仲間を救えるほどの力はない。今まだ警務省にいるのは、ただのお情けだ。


「何の力もないのにな」


色眼鏡を割り、純粋に慕ってくれていた後輩。大罪を犯したとはいえ、大切な後輩だ。


雪はまた項垂れた。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ