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上司たち 1
凰幹部たちの話です
その一報は、香の上司、雪にも届いていた。
「こんなの間違ってます!」
警務省の廊下を行く幹部に、雪は責めた口調で問う。
「他国内での身体拘束行為は、国際問題に発展しかねない行為です。今すぐやめるべきです」
香の脱国行為は、雪にも話が届いていた。その影響で、雪は二週間の停職処分を受けていた。そして、それが明けたばかりだった。
官僚の脱国行為は、上司もその責任を問われる。量刑は1番重いもので、無期懲役だという。万が一、上司自身も関与していた場合は一家全員死刑になる。本来は停職処分で済まない重罪なのだが。
「私に歯向かうのかね?」
雪の上司が言う。
「ですが、」
上司ははあっとため息を吐く。
「私の手を煩わせないでくれ」
上司はそう言いのこすと、どこかへ消えていった。
雪は自分の不甲斐なさを噛み締めた。