34/43
ある夜のこと
「本当におめでとう」
白月や静と別れ、香と宇春は2人で朝明の裏手にいた。見渡す限りに夜空が広がっている。とても星が綺麗だった。
「ありがとう。皆のおかげだよ」
「これからは安心だね」
法律に反しなければ、これからは鳳国民と等しい生活が受けられる。宇春が優しく微笑んだ。
「朝明を離れてもいいからね。離れたくなったら」
「え?」
「鳳って国は、案外広くてさ。いろんな場所があるの。……香、キラキラしてたから」
「キラキラ……」
宇春がその場に座り込む。
「知らない場所、知らない景色、いっぱい見たほうがいいよ。見られるうちに」
「……」
「やめたくなったらいつでも言ってね」
「……俺は」
「ん?」
香は言葉に詰まる。
「さて、そろそろ戻ろっか」
「宇春」
歩き出した宇春が振り返る。
「これからも、よろしくお願いします」
宇春が静かに目を開いた後、優しく微笑んだ。
「ええっと」
言葉に迷いながら、香は頭を掻く。その様子を見て、宇春がまた微笑んだ。
「こちらこそ、よろしく」
月明りの下、2人は揃って笑い合った。