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スパイの男   作者: Suzura
32/43

夜の酒 1



一週間後。 


可否通知の結果が出たと役場から連絡があった。


仮住所の朝明に封書で送られてきていたらしく、香は仕事を終えてからそれを知った。


「これ」


清掃員用の休憩室で宇春から、A4サイズの封筒を手渡される。隣には白月もいた。白月とは、あれから酒を酌み交わす仲になった。万が一在留資格が出なかった時のことを案じてくれていた。


万が一在留資格が出なかったらどうしよう。その時は凰に帰るのか。ぐるぐると思考が駆け巡る。


リーちゃん?」

ワンさん」

「どうしたんですか?宇春さんまで」


たまたま休憩室に入ってきたのだろう。ワンが不思議そうな眼差しで見ている。


「ちょっとね」

「……そうですか」


(ワン)は何かを察したように、荷物を持ち、一礼をすると部屋を出た。


宇春がはあっとため息を吐く。


「開けてみて」


香は封筒を破った。


○●○


「おめでとう」


その夜、祝賀会と称した飲み会が朝明で開かれた。静、白月、宇春が企画してくれたものだった。


静が香にお酒をつぐ。東亜で有名な焼酎らしく、かなり強い人でないと飲めないらしい。幸い、香は凰時代の付き合いもあり、酒は強い方だった。


「おいしい」


香は少し目を開いた。


「好みの味だといいけども」


静も微笑みながら、焼酎を含む。


「かなり好きかも」

「それは良かった」


静がまた香に酒をつぐ。そのついでに、静も自分のお猪口にとくとくと酒をついだ。


「お父さん、あんまり飲みすぎないでね」


ぴしゃりと宇春が窘める。分かった、分かったと軽く静は返した。


「もう」

「李ちゃんは、もうこれで鳳にいられるんだっけ?」


場の流れを切るように白月が言った。白月はお酒に弱いのか、東亜製の緑茶を嗜んでいる。


「そうだよ」


焼酎の水面にうつる顔を眺めながら、静が呟いた。


「そうですか」


それを聞いた白月が、無機質に口を開いたのだった。







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