夜の酒 1
一週間後。
可否通知の結果が出たと役場から連絡があった。
仮住所の朝明に封書で送られてきていたらしく、香は仕事を終えてからそれを知った。
「これ」
清掃員用の休憩室で宇春から、A4サイズの封筒を手渡される。隣には白月もいた。白月とは、あれから酒を酌み交わす仲になった。万が一在留資格が出なかった時のことを案じてくれていた。
万が一在留資格が出なかったらどうしよう。その時は凰に帰るのか。ぐるぐると思考が駆け巡る。
「李ちゃん?」
「王さん」
「どうしたんですか?宇春さんまで」
たまたま休憩室に入ってきたのだろう。王が不思議そうな眼差しで見ている。
「ちょっとね」
「……そうですか」
王は何かを察したように、荷物を持ち、一礼をすると部屋を出た。
宇春がはあっとため息を吐く。
「開けてみて」
香は封筒を破った。
○●○
「おめでとう」
その夜、祝賀会と称した飲み会が朝明で開かれた。静、白月、宇春が企画してくれたものだった。
静が香にお酒をつぐ。東亜で有名な焼酎らしく、かなり強い人でないと飲めないらしい。幸い、香は凰時代の付き合いもあり、酒は強い方だった。
「おいしい」
香は少し目を開いた。
「好みの味だといいけども」
静も微笑みながら、焼酎を含む。
「かなり好きかも」
「それは良かった」
静がまた香に酒をつぐ。そのついでに、静も自分のお猪口にとくとくと酒をついだ。
「お父さん、あんまり飲みすぎないでね」
ぴしゃりと宇春が窘める。分かった、分かったと軽く静は返した。
「もう」
「李ちゃんは、もうこれで鳳にいられるんだっけ?」
場の流れを切るように白月が言った。白月はお酒に弱いのか、東亜製の緑茶を嗜んでいる。
「そうだよ」
焼酎の水面にうつる顔を眺めながら、静が呟いた。
「そうですか」
それを聞いた白月が、無機質に口を開いたのだった。