甘味屋
「俺買い物だけしてくから、先帰ってて」
飯屋を出た後、白月は街へ消えていった。
「煙管だろうね」
宇春が少し呆れた目で後ろ姿を見ていた。
「さ、帰ろう」
宇春と香は歩き出した。
お昼時の风蓝は、人がいつもより多かった。
東亜の甘味屋を摸した店で、宇春が立ち止まる。
「少し寄り道してく?」
宇春は、甘味屋に入りたそうな眼差しで香を見つめる。
香はやはり宇春には女優の才能があるのではないかと思った。可愛らしい表情をするのがどうにも上手い。
「行こうか」
香は思わず笑った。宇春は嬉しそうに笑う。
○●○
甘味屋の中は少し空いていた。
命令を済ませ、ふうっとため息を吐く。
宇春は練り切り、香は金鍔を命令した。
「東亜の国の文化もあるんだね」
香が口を開く。
「いろんな国の人が居るからね~」
しばらく沈黙が流れる。
「宇春、さっきの話って」
「ああ、白月のこと?」
「うん」
「大抵合ってる。大学諦めたのも事実だし」
「そうなんだ……」
「でも後悔はしてない」
「……」
「朝明でいろんな人に会えて、楽しい」
「そっか」
少しして、練り切りと金鍔がくる。
「美味しい〜!」
あまりに美味しそうに練り切りを頬張るので、香は少し驚いた。「一口、食べる?」と言われたけども、さすがにそれは断った。
「金鍔……」
香自身、金鍔を見たのはこれが初めてだった。口に含むと、甘さは控えめだが、上品な甘みが口の中に広がる。
「おいしい」
自然と口からこぼれ出た。宇春はいたずらを覚えた子供のように笑う。
「でしょ?」
「うん」
凰では食べられなかった味だ。
(すごいな)
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