表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
スパイの男   作者: Suzura
29/43

飯屋



掃除を終え、2人は掃除道具を返しに行った。


「よし、お昼にしよっか!」


ちょうどそこに白月が通りかかる。


「お、宇春」

ユエ

「今から昼か?」

「うん。リーちゃんも」


白月がチラッと香を見る。香はドキリと体が動いた。

露骨に白月の顔がゆがむ。


「俺、そんなに怖い?」

「え?」

ユエ、強面だから昔から怖がられててさ。ちょっと敏感なんだよね」


トントンと宇春が白月の肩を叩く。


「笑顔つくっても怖がられるの結構くる」

「仕方ない、仕方ない」


昔からの幼馴染2人がじゃれ合う。香は複雑な思いで見つめていた。


リーさんだっけ」

「は、はい」

「俺こんな顔だけど怒ってないから。……だから、仲良くしてくれると嬉しい」

「……はい!もちろん!」


白月がぎこちなく笑う。それにつられて、香も笑った。


「さて。メシ行くか!」


○●○


昼時の飯屋は混んでいた。


3人が選んだのは、地元の名店の麺屋だった。白月のお気に入りらしく、宇春も何度か来たことがあるらしい。


「奢りだ!」と、宇春曰く珍しく上機嫌な白月が言った。香はちょっと高めの担々麺を頼んだ。


「李ちゃんさ」


白月が言う。


「宇春のこと、よろしく頼んだよ」

「え?」

「宇春のこと」

「ちょっと、何急に」


宇春がトンと白月の肩を叩く。


「宇春、こんなんでも苦労人だからさ」

「ちょっと、酒飲んでる?」

 

茶化すように笑う宇春だが、少しさみしげな表情をしていた。


「幸せになってほしいんだよ、俺は。幼馴染として」

「……」


香は茶化すわけでもなく、真剣な眼差しで見ていた。


「本当は高校はおろか、大学まで行ける学力があったのに、中学出てからずっと親父さんと2人きりで朝明を経営して」

「……」

「何言われても、何されてもニコニコして耐えて。だからさ……って。ごめん」

「……」


宇春のいつもの笑顔は消え、ただ、俯いていた。


ご覧頂きありがとうございます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ