掃除
(意外に簡単だな)
香は言われたように仕事をこなす。李美や他の清掃員からは驚かれたが、正直香からしてみればそこまで大変ではなかった。
むしろ、もっと仕事がほしいくらいだ。
仕事を終え、香は休憩室で一息ついていた。
「李ちゃん!」
後ろから声をかけられる。振り返ると、王が立っていた。
「すごいね、1日目なのに」
「ありがとうございます」
「私なんて、まだ全然。これでも入って3日目なの」
「まだまだよ」
李美がやってくる。香は軽く頭を下げる。
「美さん!」
「入って3年ならともかく、まだ3日。慣れればいいの」
「そうですよね!」
トンと王が手を叩く。
(随分と陽気な……)
「さ、明日も早いし、もう上がりなさい」
李美の言葉通り、2人は早々に退勤した。
○●○
「お疲れ様!」
朝明の正面に行くと、宇春が掃除をしていた。持っていた箒を置き、香に近づく。
「どうだった?」
「褒めてもらえた」
「そっか!良かったね」
宇春が笑みを浮かべる。香は面はゆいような表情を浮かべた。
「今日はゆっくり休んで」
「まだ昼だけど……」
朝明の清掃員は客室以外にも掃除をするらしい。本当はまだ仕事があるはずだ。
「初日だからね」
宇春が笑った。
「ちょっと待っててくれる?」
「え?」
「あと少しここを掃除すれば、私も昼休憩だから」
「わかった。……手伝うよ」
「いいの?」
「うん」
「……はい、箒」
宇春が差し出した箒を、香が受け取る。そのまま2人は掃除をし始めた。
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