仕事
翌日、朝早くから動き始める。
「あら、あなたが新入りの?」
香の顔を見るなり、その女性は言った。清掃員の部屋で咖啡を飲んでいた。名は李美という。
「よろしくね」
李美は香に手を差し出すと、ニコリと笑った。
「美さん、李ちゃんをお願いしてもいいですか洗手间に行きたくて」
「大丈夫よ」
宇春は頭を下げると、部屋を出ていった。
「……さて、まずは……」
李美は棚から围裙などの服を取り出し、香に渡した。併設された更衣室で香はそれに着替える。
「あらいいわね」
大きさを確認し、李美は頷いた。
「よし、ついてきて」
李美の後に香はただついていった。
「この時間はお客様が客室に居ないの。だから、今のうちに客室の掃除をするのよ」
客室の区画では、既に数人の従業員が掃除をしていた。李美がパンパンと手を叩くと、従業員が一斉に廊下に顔を出す。
「皆、掃除中にごめんなさいね。今日からまた新しい子が入るから紹介したいの」
従業員が香の顔を見て、ざわざわとする。
(やばい……)
「あら、イケメンね〜!」
誰かの甲高いような、野太いような声が響く。香が声の方に目をやると、女装をした男のような風貌の男が目をキラキラさせていた。
「ちょっと王ちゃん」
李美がたしなめると、王と呼ばれたその人物は静まった。
「ごめんなさいね、李ちゃん。最近入ったばかりで」
「いえ」
「えー、気を取り直して。李ちゃんです。宇春ちゃんの彼氏さん。今日からここで花嫁修業を行うみたいだから、皆よろしくね」
「は、花嫁……?」
「そうよね?」
「ええ、まあ」
「宇春ちゃん曰く、厳しくしても大丈夫とのことなので皆さんよろしくお願いします」
「き、厳しく……」
「はい、皆、ありがとう」
従業員は、一斉に掃除に戻った。
ご覧頂きありがとうございます!!!