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スパイの男   作者: Suzura
25/43

新しい彼



「荷物ここでいい?」

「ありがとうございます」


買ってきた荷物を香と宇春で手分けして、香の部屋に運んだ。


(あれはやっぱり演技、そうだ、うん)


テキパキと動く宇春の横顔を香は、じっと見つめる。

さっきまでの甘い雰囲気は消え、いつもの宇春に戻っていた。


「どうした?」


宇春が怪訝な表情を浮かべる。


「なんでも、」

「凰から持ってきた荷物はどうする?」

「ああ……」


それは香にとって悩みの種でもあった。

機器類にはGPSが入っており、朝明から少し離れたこの場所に持ってきたら怪しまれてしまう。かといって、下手に壊したりすれば本部に知られてしまう可能性があった。


「今はとりあえず客室に置いてあるけど……」


消え入りそうな声で渋い顔をした香が呟いた。

そのさまを見た宇春が、ぽんと手を叩く。


「あそこなら!」


○●○


「……何?」


眉間に皺を寄せ、電卓と帳面を睨むその男は、白月バイユエといった。朝明では、静や宇春の補助を行っているらしい。


白月は、宇春の古くからの知り合いで、学校の同級生だとか。


不機嫌な表情の白月に物怖じせず、宇春が口を開く。


「荷物をさ、預かってくれないかなーって」

「荷物?!」

「うん、リーのやつを」

「お前、正気か??俺が変な目で見られるだろう。宇春の彼氏の荷物を俺が持ってたらおかしくないか??」


白月には一応、半分嘘の経緯を話してある。


『観光で来た朴琳という男と宇春が付き合い始め、結婚も視野に入れているため、宇春の家業である朝明の仕事を手伝うことになった』


実際は、密偵のような目的で来ていたし、名前も違うし、付き合ってもいないが……。


「第一、彼氏の荷物ならお前が持ってろよ」


正論を突かれ、2人はたじろいだ。白月が睨む。


「……さては」

「えっと」

「部屋が狭いからって荷物押し付ける気か!!」


香は思わず面食らってしまった。

そしてそれは宇春も変わらないようで、2人してポカンと口を開けた。


「悪いな、兄ちゃん。広い部屋を用意できなくて」

「あ、あ、いや」

「……仕方ない。預かってやるよ」


宇春と香は心底安堵した。








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