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スパイの男   作者: Suzura
24/43

買い出し 2


(き、きまず……)


宇春は演技上手なようで、買い出しの最中、誰に会っても香が不審者扱いされることはなかった。


(もう少し違うやり方もあったんじゃ)


……とも、思うが、今更後には引けなくなった。


必要な服や日用品を買い揃えていく。


鳳の製品は、凰よりも比較的安価で質が良かった。物流も安定しているのか、小さな店でも商品が補充されていた。元は同じ国だったと史実で習ったが、統治者が違えばこれほどまで差が出るのかと香は愕然とする。


(こっちで生まれたかった)


こんなこと考えていたら、向こうでは統治者への不敬罪で処刑台行きだ。


「なーにやってるのっ、リー


気がつけば、宇春が覗き込んでいた。


「ごめん、ちょっと」

「あらあら」


衣服ふくを売っている店の店主が微笑む。


「しかし、あの宇春ちゃんがね。おめでたいわ~」

「えへへ」

「彼氏くん、宇春ちゃんを頼むよ!」


店主にぽんと肩を叩かれる。香は驚きの混じった愛想笑いを浮かべた。


「さ!買うよ!」


ニカッと宇春が笑った。


宇春は演技上手だ。可愛らしい表情を心得ている。

香は小さく笑った。


「これと、これ、これもください」


衣服ふくを、宇春は次々に買っていった。その量に目を見張らせた香は、宇春を呼び寄せ耳打ちをする。


「俺お金そんなに……」


凰から支給された資金もある程度なくなってきていた。

衣服ふくだけでその資金はとうに尽きてしまう。


「出世払いにしてもらおっかな」

「え」

「嘘だよ。半分奢り、ちょっとだけ出世払い」 



「宇春ちゃーん」


店主が呼ぶ。宇春は钱包さいふを広げ、支払いに向かった。


○●○


「結構買ったね!帰ろっか!」


空が橙色になってきた。人混みの中、宇春と香は並んで歩く。なぜか香よりウキウキとした表情の宇春を見つめながら、ゆっくりと歩をすすめていた。



ご覧頂きありがとうございます!

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