命の恩人 3
「在留資格が取れれば良いんだ」
「在留資格……」
「在留資格は基本的には1年ごとに自動更新。3年を過ぎると国内のあらゆる手続きにおいて国民と同等のさまざまな権利が得られ、15年が過ぎれば国籍を申請できる……ですよね?張多さん」
「正確には少し違う」
張多は咳払いをした。
「最近法律が変わったんだ。権利の優遇措置を受けるための期間が5年に延長された」
「長いですね、自分のときと違う」
静が俯いた。
「在留資格ってどうやって取得するんですか?」
「鳳の国民で身元保証人を見つけ、役所に申請を通す」
「身元保証人……」
「国籍を申請する際にも、同じ身元保証人の承認が必要になる」
「……」
(身元保証人……)
「この期間、関係者は誰1人と欠けずに鳳で暮らす必要があるわけですよね」
「ああ」
15年を過ぎるまでは、在留資格があれど、元の国の国民である。
「身元保証人は、掛け持ちができないんだ」
「掛け持ち?」
「俺は一度静さんの身元保証人になってしまったから、静さんかもしくは他の人に頼んでほしい」
「分かりました」
張多は腕を組む。
「鳳の厄介なところでな、難民申請がないんだよな」
「え?!」
「静さんが来るちょっと前まではあったんだ。30年近く前、増えすぎた難民を食い止め、国を守るために難民という制度を廃止した」
「なるほど……」
「その代わりが身元保証人制度だ。鳳の国民1人につき外国人1人までなら在留を認めるようになった。不法滞在の外国人が多いように見えて、政府的には監視ができているんだ」
香は大きく頷いた。
在留資格のない不法滞在の外国人は行政サービスが受けられず、万が一罪を犯した時には国に強制送還されるらしい。
「あ、在留資格申請書だけはもらってきたから、一応」
張多は紙を取り出す。
「今書いてくれれば、俺が出してくるから」
「代理人が出しても大丈夫なんですか?」
「ああ。問題ない」
「分かりました」
香は紙にペンを走らせた。
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