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スパイの男   作者: Suzura
12/43

脱国


「……」

「その夫婦のおかげで、今こうして鳳の国籍を得られた」

「水月さんは……」

「……どうなったのか、分からない」

「そんな……」

「君は、どうする?」

「え……?」

「標的に知られてしまった」

「……」

「今もそうかな」

「はい」


被疑者に知られたら、処刑。


「家族は居る?」

「います」

「家族は?凰にいるの?」

「……はい」


香はただ、俯いて震えていた。官僚スパイとしての振る舞いは忘れ、ただの青年の顔をしていた。


「君、賭けをしないか?」


静は棚からあるものを取り出す。


「将棋」

「君たちの代でも習ったのかい?」

「はい。東亜の国の文化として」

「決まりは分かる?」

「ある程度なら」

「3回、対局をしよう。もし私が勝ったら君の情報を貰おう」

「俺が勝ったら……?」

「その時は、私を好きにすればいい。君の言うことに従うよ」

「……」


香と静は対局し始めた。


1回目は、香の勝ち。


「君、強いね」

「いえ」


2回目は、静が勝った。


「……勝てない」

「そうか」

「強いです」

「少し、本気を出したからかな」

「なるほど」

「さて、君の情報を1つ頂こう」

「……はい」

「君の名前は?」

「……李香」

「香か。分かった。さあ、次」


3回目も、静の圧勝だった。


「完敗です」

「香も強かったよ」

「いえ」

「さて、2つ目の情報を頂こう」

「はい」

「君は、脱国する気はないか?」

「え」

「帰れば処刑。運良く処刑を免れても、もしかしたら良い暮らしができないかもしれない。鳳に来てしまえば、ある程度の生活の保証ができる。どうだ、悪い話じゃないだろう?」

「……」


香はしばらく考え込む。


「家族が」

「なるほど……」


凰の国の官僚が万が一、国家任務中に脱国した場合、凰に残された家族は拷問の後、処刑される。


「母と妹が……」

「抜け道、あるよ」

「え?」

「凰の官僚規定では、"脱国した場合"だろ?」

「どういうことですか」

「病気ならば?」

「あ」

「出先で病気になったと連絡すればいいはずだ」 

「それなら……!!」

「君の家族は殺されず、同情の目で見られる。しばらくは安定した暮らしができる。国の目が離れた段階で、迎えに行けばいい。……どうする」

「……やります、脱国」

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