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ポエムアンドラブ

作者: サクラブ

初めて投稿したものです。感想や批判でもいいです。どこが駄目だったかアドバイス下さい。

「 不思議先輩のことが好きです。付き合って下さい。」

私には分からないことがある。例えば、電話ごしの彼が私に告白している意味が分からない。

「 どうして私のことが好きなの?」

「 だって、部活で悩んでいたとき親身になって相談にのってくれたから。」

人として当たり前のことなのになぜ彼は好きになったのだろう。

「 人が悩んでいたら相談にのるのは人として当たり前よ。」

「 当たり前じゃないですよ。不思議先輩の当たり前に人のために何かをすることが好きです。」

彼が私のことを好きなのは分かる。でも、なぜ彼はそのことを私に伝えたのだろう。なぜ彼は私と恋人関係になりたいのか。私には理解出来なかった。

「 …ごめんなさい。あなたが私に向けている感情は私は持ってない。」

「 ……そうですか。僕のほうこそごめんなさい。」

彼は私の言葉を聞いて落ち着いた声で謝った。彼は謝って電話を切った。あの言葉で良かったのだろうか。断るのが正しい選択だったのだろうか。テストの問題は分かるのに日常生活は分からない。彼の相談にのったのは道徳の教科書では正解だから。でも告白の正解はどこの教科書にものっていない。


翌日

 私はお母さんの墓参りに行っていた。お母さんは私が3歳の頃に病死してしまった。お母さんの記憶は覚えているのに、お母さんの墓を見ても何も思わない。どうしてなのだろう。墓参りから帰っていると足元に1枚の紙が飛んできた。私は紙を拾い上げ読んだ。

「 アイマイミーな私

私は誰だろう

私は誰だろう

あなたも彼も彼女も

そして

私も

私を知っていて

本当の私を見たことはない


あなたも彼も彼女も

そして

私も

透明人間は知っていて

透明人間を見たことはない

私は透明人間」

これは…。なんだ。言葉は分かるのに内容は理解できない。

「 あ、君が僕の言葉を拾ってくれたんだね。」

目の前には男子がいた。

「 あなたは隣のクラスの四月一日さん。」

「 隣のクラスってことは同級生か。よく僕の名前知ってたね。」

…。本人は自覚ないだろうが、同学年の中では有名である。将来の夢は吟遊詩人と公言している四月一日 雷[わたぬき らい]。好きな人に毎回自作ポエムを渡して告白する。一度も恋が実ったことはないらしい。

「 どうしてここに?」

「 僕は休日に公園のベンチで、言葉を紡いでいるのさ。」

休日にポエムを公園のベンチで作っているそうだ。

「 良かったら、君のためにポエム作ってあげるよ。」

「 え。」

「 ここで会ったのも神様の筋書き。ベンチに座って。」

私は四月一日さんに言われて四月一日さんの隣に座った。

「 そうだ。君の名前は。君は僕の名前は知っていても僕は君の名前を知らない。君のためのポエムなのだから名前は知っていないと。」

「 私は不思議 奈々[ふしぎ なな]。」

「 良い名前だ。ちょっと待ってて。」

四月一日さんは私の名前を聞いて微笑んで言った。四月一日さんはメモ帳を取り出してすらすらと書いていった。5分後、四月一日さんは私に紙を渡した。私は紙に書かれた文字を読んだ。

「 太陽と雨

太陽は世界の光と影を見せる

雨は世界の光と影を隠す

雨は降り続けても

いつかは晴れる

太陽と雨どちらも

一部の人を幸せにする

一部の人を不幸にする

太陽と雨どちらも

誰かのためにある」

「 どうだったかな。」

四月一日さんは私の目を見て言った。 

「 私には分からない。何が正解なのか。」

「 正解なんてものはないよ。不思議さんの率直に思ったことでいいんだよ。」

「 私は感情が抱けないのです。」

「 えっ。」

四月一日さんが私の言葉にびっくりした。

「 昔は泣いたり笑ったりしていました。今は事実確認でしかないんです。思い出のものを見てもただ記憶にあったとしか思わないんです。」

だからポエムというものも私には意味がない。そう言おうとした時、四月一日さんは言った。

「 じゃあ。僕のポエムを指導してくれない?」

「 え。」

今度は私が驚いた。

「 僕の今のポエムはただの紙のように薄ペっらい。僕はいつか誰かの心に響くポエムを作りたい。だから君の心に響くまでポエムを読み続けてくれないか。」

「 はい。」

「 ありがとう。」

私はなぜか考える前に答えてしまった。そこから私は休日に公園のベンチで四月一日さんのポエムを読むようになった。四月一日さんと会わない休みはなかった。


1年後

 私はお父さん宛の手紙をお父さんの部屋に置いておこうと思った。お父さんの部屋に入るとたくさんの本や書類があった。手紙はデスクに置こうとした。デスクに置いてあった書類の文字に目がいった。そこには「不思議 奈々のボディのメンテナンス。感情のアップデート。」と書いてあった。

「 奈々?」

そのときお父さんが部屋に入ってきた。 

「 お父さん。これどういうこと?」

私は書類をお父さんに見せた。お父さんは目を見開いて言った。

「 奈々。……実は不思議 奈々は10年前に交通事故で亡くなってお前はアンドロイドだ。」

私は最初、お父さんの言葉が分からなかった。

「 私は一人しかいない家族を亡くして悲しんだ。だからお前を作った。最初はボディを作った。ボディは誕生日ごとに作り直したんだ。そして次にお前の記憶は不思議 奈々の0歳から7歳までの記憶をデータ化したものだ。記憶はデータ化ができたが感情までは作れなくてな。」

何を言っているんだ。何を。私はお父さんを押しのけて家を出た。私は人間じゃないの。私はお父さんの娘じゃないの。私はいつもの公園に来ていた。雨が降っていた。公園のベンチには雨合羽を着た四月一日さんが座っていた。

「 やぁ。不思議さんどうしたんだい?濡れてるよ。」

四月一日さんはいつものように微笑んだ。

「 私は不思議 奈々じゃないの。」

「 何を言っているんだい。君は不思議 奈々さんだろ。」

「 不思議 奈々は10年前に亡くなってるの。私は不思議 奈々の記憶が打ち込まれたアンドロイドなの。」

私は四月一日さんの胸ぐらをつかんだ。彼は何も悪くない。私の八つ当たりだ。分かっているのに体が勝手に。

「 私はもとから存在していない。透明人間だったの。告白もお母さんの墓参りにも何も思わなかった。」

私は声を荒らげて言った。

「 だっては感情がなかったから。なにもかも偽物だったんだよ。」

「 違う。僕にとっては偽物じゃない。」

四月一日さんは私が今まで聞いたこともない声をあげた。いつもは微笑んでいる顔が怒っていた。

「 不思議さんはここに毎週欠かさず来てくれた。僕に呆れずポエムを読んでくれた。」

四月一日は話し続ける。

「 不思議さんがポエムを読むときの優しい声。不思議さんがポエム読み終わった後の一瞬の笑顔。不思議さんのそんなところが僕に夢を与えてくれた。僕と不思議さんの時間は偽物じゃない。」

四月一日さんは私の目をじっと見て真剣に言ってくれた。

「 僕は僕と一緒にいるときの不思議さんしか知らない。でも僕は君が大好きだ。もっと君を知って理解したい。僕の側にこれからもいてくれませんか。」

私の顔に水が流れている。雨のしずくだと思っていたけど瞳から流れていた。四月一日は私に抱きついた。

「 私でいいの?アンドロイドなんだよ。」

「 君がアンドロイドで何が駄目なのさ。」

四月一日は私の耳元で囁いた。

「 本物の不思議 奈々じゃないんだよ。」

「 僕が知っている不思議 奈々は君だけさ。」

「 ポエムの告白じゃないの?」

「 今の僕のポエムでは君への愛は語れないよ。」

雨は降り止み、晴れた。空に虹がかかっていたことを私達はその時知らなかった。なぜなら四月一日 雷は私の唇にキスをした。四月一日 雷は私をずっと離さなかった。

読んでくれてありがとうございます。

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