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ショートショート集

その先に待つもの

作者: 青樹空良

 ついに見つけた。

 ずっと探していた財宝だ。


「ハカセ、ようやく見つけましたね」

「ああ、やっとだ。やっと長年の夢が叶ったんだ」


 私は助手と手を取り合って喜びを分かち合う。


「ああ、これまで幾多の苦難を乗り越えて、とうとう私たちはやったんだ!」

「はい!」

「あるときは山を登り、あるときはガケを下り、この遺跡を見つけたときにはどれほど心がおどったことか」

「はい!」


 助手はキラキラとした目で私のことを見ている。

 それから財宝に目を向けた。

 やはり、そっちの方が気になるのか、私の言っていることが理解出来ていないのか。


「では」


 私は財宝へと手を伸ばす。

 ああ、ずっと夢に見ていた瞬間が今ここに。


「あー! 勝手に戸棚開けて!」


 その声に、私はびくりと手を止める。

 ふり返ると、


「二人ともおやつならさっき食べたでしょう? それは明日の分! 勝手に棚から出しちゃいけないって、いつも言ってるでしょ」


 ママが目をつり上げている。


「しかも、なにその格好は。遠足はまだずっと先だよ?」

「えーと」


 遠足に見えるかな。

 冒険家のつもりだったのにな。


「えー、おかし食べちゃダメなの?」


 妹はそんなことどうでもよさそうで、お菓子が食べられないことを残念がっているようだ。


「ほらー、リュックも水筒も勝手に出して、ちゃんとしまっておきなさいよ」

「……はーい」


 私はしゅんとしながら、身につけていたものを片付ける。


「おかし食べれなかったね、おねえちゃん」


 妹はまた別の意味でしゅんとしている。

 いやいや、一緒にしないで欲しい。

 私はそんなに食いしんぼうじゃない。


 昨日の夜、遺跡とか探して冒険する番組を見ていてどうしてもやりたくなっただけなんだ。

 だって、だって!

 すごくわくわくするから!

 お菓子は私にとってはすごい財宝な設定だったってだけなのに。


 それと、昨日番組で見た難しい言い回し。

 使ったこともないような言葉だったから舌をかみそうだったけど、口に出すとすごく気持ちが良かった。

 本当に冒険してるみたいで。


 今日、私を待っていたのは財宝じゃなくてママのお説教だったけど。

 いつか待ってて、私の本当の冒険!


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