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あれから3時まで荷物の上げ下ろしを行うと依頼は終わりだと伝えられた。
「報酬は明日降りるからな。そういやお前さん、もしかしてカラリの生まれか?」
「カラリ?」
「カラリってえのは香辛料が豊富に取れる国で何故か剃髪が多い国だ。香辛料を使う技術も東部の国々の中でもトップクラスで薬としての使い方、料理としての使い方が両方共にカラリの連中に敵うものは居ないと呼ばれるくらいなんだがあんちゃんの料理がそれに似ててな。」
「剃髪、香辛料?」
太郎には真っ先に思い浮かぶのは世界宗教の一角を生んだ国。
「その様子だと違うみたいだな。あんたの体格から見てカラリの武術を習っていたのかと踏んだんだけどな。」
「武術。」
「ああなんでも鍛錬をする際に特殊な油を使うことで魔物を圧倒できるらしいぞ。」
剃髪、香辛料、世界宗教の一角、武術、このワードからある人物を知る人はすぐにでも思い浮かぶだろう。
「あのうもしかしてですけどその武術を伝来した人って釈●って言いませんでした?」
「そこは知ってるんだな。」
はい確信、転生者。ある意味当然超有名人物。正式名称ガウタマ・シッダールタ、仏の祖であるブッタにまで上り詰めた人物のことである。
「他にもイエ●って人とかは居ませんでしたか?」
「いや聞いたことは無いな。」
「そうですか。」
どうやら神の子はここにはいないらしい。もしくは知られていないだけかもしれないが。
「んじゃあ仕事を再開するか。」
「はい!」
再び仕事の再開だ。
「んじゃあ今度ピアノとかいう楽器を運ぶから絶対に落とさないように頼むぞ。」
「はい!」
なんとピアノを丸ごと運び込むらしい。バカでかい船があってこそできる荒技だが木造船の長い航海で傷んでいないのが不思議だった。
「ピアノってバラして持ってたりしないんですか?」
「そうしたいのは山々なんだがこっちの方に技師がいなくてな。そら6人がかりで持つぞ。」
「はい!」
ピアノはベンチプレス120kgは余裕であげられる太郎からしてみれば6人がかりなら余裕のなんのでむしろバランスを考えるのが難しかった。
ピアノを運び終わると
「後は帰って大丈夫だぞ。報酬はギルドに振り込んで置くから明日受け取ってくれ。色付けて置いたぜ。」
サムズアップして答える親方。
「ありがとうございます。ではお先に失礼します。お疲れ様でした。」
「おうお疲れ様。」
こうして太郎の異世界初の依頼は終わったのだった。