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「冒険者ギルドから参りました太郎と申します。」
冒険者ギルドに依頼を出してももやしっ子の新人冒険者しか来なかった港の依頼であったが今回依頼を出して初めての使えそうな男が来たことで現場は騒然としていた。
「お前新人冒険者か。」
ようやく親方らしき人物が現れ話を始めた。
「ええ、そうですよ。」
「普通、その体格なら魔物狩ってた方が実入りがよさそうなんだが?」
「実は身体だけ鍛えて荒事はまだやったことがないんですよ。」
「それはしょうがねえな。じゃあバンバンやってもらうからついてこい。」
…
「おい新入り!そこの樽と袋持ってこいや!」
「はいただいま。」
太郎はせかせかと働いていた。
しかしながらジムなどのトレーニングとは違い重さ形状質感の異なる物の持ち運びは相当な重労働であった。
「おい新入り飯作れ!」
「えっ?」
「あと2時間飯時だ。俺たち港の人間は手が離せん。そこの材料使っていいから作れ100人分作れ!」
ほぼ無茶振り気味にきた飯作り。太郎は仕方なく材料を見る肉は見当たらなかったが変わりクジラ肉があったどうやら港で取れたものらしい。ほかにも乾燥きのこや新鮮な野菜があった。調味料はどれだけ使ってもいいらしい。
ピロンー給食のおばちゃんの知恵より調理をサポートします。
すると太郎の頭にレシピが入ってくる。すぐさま太郎調理に取り掛かる。
まず乾燥きのこの類を水で戻していく。
次に米を研ぐ、研ぐといってもそこまで研がない。かき混ぜればいいくらいだ。そして大きな鍋を3個用意して炊いていく。
「本来ならもうちょい水に浸けといた方がいいが今は時間が無いからしょうがない。」
続いて太郎はクジラの背脂を少量の水と共に鍋に入れ火をかけ始める。どうやら揚げ物を作るらしい。
「この昆布使っていいすか?」
魚についていた昆布を指して言う太郎。
「ん、勝手に使えてか海藻を食うのか?」
「ええいい味出しますよ。」
野菜と昆布を洗い切り始める太郎。トマト、人参、ほうれん草、ナスを適度な大きさに切る。昆布は四角く小さめにカットする。
次にクジラ肉を解体しやや厚め切っていき筋を包丁で刺すと塩を振り下ごしらえを終える。
次に卵を大量に割り溶き卵を作る。
それが終わるとごま油を引き野菜を炒め始める。順番は人参、ナス、トマトの順番だ。
「ほうれん草は最後に入れるまで我慢。」
そうこうしているうちにきのこが戻ったようだ。きのこ戻し汁を炒めている野菜たちの中に昆布と共に放り込んだ。
「ふう、次はきのこを切ってと。」
きのこをやや大きめに切り歯ごたえを残しておく。そして鍋に投入する。
「えーっとターメリックとシナモン、生姜、その他諸々。」
何故かあった石のスパイス挽きで香辛料をすり潰していく。
パチパチパチ
油の準備が終わったらしい。太郎はクジラ肉に溶き卵、薄力粉、パン粉の順番で衣を纏わせ揚げていく。クジラカツが揚がると油を切るため一端置いておく。
そして鍋にスパイスとほうれん草を入れる。
そして炊けた米を皿に盛り付けていく。
もうおわかりいただけただろうかそうカツカレーである。
本日のメニュー
乾燥きのこの野菜カレーとクジラカツ
「皆さん!できましたよ。」
太郎が港にいる人達に向かって叫ぶ。時間も丁度お昼だ。
「おう、野郎共飯だ!」
「「「オオオオオオォォォ」」」
港の積荷担当の責任者の声に呼応する野郎共。
「うお、なんだこれ。すげえ美味え!」
「なんかきのこが肉見てえに美味い。」
「このクジラのカツも肉汁が出て美味いぞ。」
中々好評のようである。太郎も食べてみる。
「まずはカレーからだな。」
パクリ
カレーは乾燥きのこの戻し汁を使ったことにより旨味がそのまま入り、トマトの酸味と旨味、ナスの甘味、ほうれん草の苦味と甘味、昆布の旨味が加わりそこにスパイスの辛味と香りが入ることで乾燥きのこと昆布香りを打ち消し相乗効果でより強く旨味を感じた。
「美味い!」
ある意味で野菜カレーとは言えないが肉を使うことなくここまで美味いカレーを食べたのは太郎は初めてであった。しかもたくさんの野菜もいっぺんにとれる正に給食。
続いてクジラカツ。
サクッ!
外はサクサクで中はジューシー、クジラ肉は風味は豚に近いものがありそれでいて魚肉のようなさっぱりとした脂で幾らでも食べれそうな旨さだった。
野菜カレーと一緒に食べれば箸が止まらない。
野菜カレーに少ない脂肪分をクジラカツで補給しそこにさっぱりとした野菜カレーで舌を引き締める正に無限ループ。
「新入り中々良いもの持ってんじゃねえか。たまにでいいからまた依頼を受けてくれや。」
「はい喜んで!」
こうして太郎の初依頼は終わった。