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ただ今田中 太郎は冒険者ギルドに来ております。
えっ何お前始めての街で迷わなかったのって?
はい、私は迷いました。いやあ三回くらい道間違えちゃってその度に人に聞くけど路地裏の怪しい人とかに絡まれちゃってさ。「ねえ君うちで用心棒しない。お店の方安くするからさ。」とかって丸黒眼鏡のおじさんに言われたときは逃げ出しましたよ。
「ふう、なんとか辿り着いた。なんか怖そうな人が出入りしてるな。」
太郎、自分もその怖い人の部類に入っていることに気づかないほどに小心者であった。
そんな見た目ヤクザ精神ぼっちの太郎が意を決して冒険者ギルドのアメリカのガンマン映画によく出る飲み屋を思わせる扉を開ける。
そこには想像通りの酒場の風景があった。
度数の高い酒をカウンターで飲むギャング風のコワモテ髭親父やテーブルで和気藹々《喜々狂乱》として酒と骨つき肉を齧るバイキング風の漢達。女性などどこにも居ない、男子高(不良校)がそこにあった。
太郎はその光景を見るとすぐに回れ右。
「おい兄ちゃん待ちな!」
そこには筋肉モリモリで身体や顔にいくつもの傷を付けたブーメランパンツのハミ●ン男が立っていた。
「変態だああああーーーーーーーー!!!」
絶叫を上げる太郎。
「いや待て!お前も転生者だろ。」
変態は気になるキーワードを言ってきた。
「へ?」
「俺も好きでこんな格好してるんじゃねえよ。オフの日は普通の格好をしている。」
「でもなんでハミ●「俺の功績はスイミングパンツの改良だ。」………お大事に。」
「まあ、そう言うことだ。これだけ装備していると色々能力が上がるんだよ。」
バツ悪そうに言う変態。
「そう言うことですか難儀な能力ですね。でも望める能力は戦闘系にしなかったのですか?」
「いや戦闘系にしようか迷ったんだがこれは俺の死因が関係していてな。俺は生前彼女がいたんだが。」
「羨ましいですね。自分はずっと彼女なんていなかったものでして。」
口を挟み怒りながら言う。
「俺も社会人になって生涯初めての彼女だったしな。そいでよ、俺は彼女といざ脱童貞やろうとしたときなんて言われたと思う?」
「デカすぎ?」
変態の突き出ているものを見て言った。
「いいや逆だ。うわっちっさってな。」
「ということは……」
何となく全てを悟った太郎。
「それから俺はちょいと精神が病んじまって川に飛び込んで自殺したんだが。」
「なるほど。その時の担当の方が神様に。」
「俺の時はヤガラだったがな。」
「ヤガラ?」
「ああ、そいつはダツって言ってたけどな。」
「ああ、あの夏頃になると海水浴場の事故とかで聞く魚ですか。」
「おう、んで俺は頼んだよ。彼女に蔑まれないくらい大きくしてくれって。」
「なんと言うかご愁傷様です。」
ピロンープロテイン魔作成より漢のプロテインを作成可能になるなりました。
(なんだ?)
突然のアナウンスに顔をしかめるが今は変態の話に集中する。
「まあ、死因は精神状態が病んでの溺死だから強靭な精神力と水中呼吸を出来る能力を貰って、このスイミングパンツの能力と相まってこの港町で海でやる仕事してるんだがな。」
「自分も冒険者ってできますかね。」
「お前の体格なら楽勝だろ。」
「いやあ自分生まれてこの方喧嘩などしたことが無くて。」
「もしかして完全な一般人か?」
「ええ、これでもスポーツ系企業のプロテインの開発部に所属しておりまして。」
「へえ、じゃあその時に筋肉でもつけたのか?スポーツ系企業の福利厚生の中にはジムのマシーンが使い放題ってところもあるし。」
「いえ、筋肉は高校の時につけました。」
「高校?ボディビルダー部でもあったのか。」
「万年帰宅部でプロテイン呑んで通学路の山越えを行い始めたら自然とこうなりまして。元々ゲームとかの方が好きな性格で友達があんまりできなかったんですよ。」
「あー偶にいるよな。高校入ったら筋肉ムキムキになる奴。それなら喧嘩したことないのもわかる。」
「ですから本当なら荒事以外の仕事がしたいんですよ。」
海パン男は太郎のためを思いいい依頼が無いか考えると
「じゃあ船の積荷の上げ下ろしから始めたらどうだ。あの仕事は基本的に需要があるし、何より戦いはないからな。」
「何から何までありがとうございます。」
「いいってことよ。俺は佐藤 宏士ってんだ、いつでも話しかけてくれよ。」
そう言い変態もとい宏士は去って行った。