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太郎は布団で目を覚ました。
「知ってる天井だ。」
そうこれは太郎の田舎にある母の実家と同じく梁がそのまま見える天井だった。
「って言うことは。」
家の中を駆け巡ると母の実家の内装と全く同じだった。
「なんかメッセージかなんか無いのか?」
家の中の隅々まで探してみるがそんなものは無かった。
ふと太郎は思いつき外に出る。
外には石畳で作られた街道が広がっていた。太郎は驚きこそしたものの目的の物を探す。
「あ、やっぱりここにある。」
田中 太郎宛
家についてだがお主の記憶から一番その町に馴染んでお主の住めるランクの奴を探した結果そうなった。
あとお主は今日からこの国の住民ということになっている。住民票は同封してある。
一応冒険者という職業があるがこれは準備をしておけよ。半分都会人のお主だそう易々と別世界の暮らしに変えられまい。家に井戸はついておるのでな。火は薪を買え。1ヶ月分の生活費は入れてある。
では汝に良き人生を。
と書かれていた。
…
太郎は部屋に入り悩んでいた。筋肉神もといタコ神が下した処置は言わばリストラされた社員が次の仕事に就くための最低ラインのようなものだった。
文句はないが見知らぬ土地で仕事を探すのは難しい。取り敢えず腐っても会社員だったので営業の心得を持っている。故に商人でもなろうかと思っていた太郎であったが手紙の内容を見るに冒険者が就職するには最も早いようだ。
「ああマジで就職先どうしよう。」
その様子はまるで就職先が決まらない大学生のようであった。(高校生はそれ専門の特別職員がいることが多いため迷う人がそこまでいないと思いそう書きました。)
「うん、悩んでもしょうがない。スキル確認してから決めよう。そっから冒険者になって金が溜まったら転職だ。先ずは就職せねばおマンマ食いっぱぐれちまう。善は急げだ。」
太郎はそういい部屋から飛び出そうとしたが
「っとまだスキル確認が先か!」
冒険者になるのはまだ少し先のようであった。ツッコミどころの多い筋肉である。
「プロテイン作成!!」
しーん
側から見るとすごく痛い人。
「え、マジ!?」
自分がすごく痛い人になってしまったためあたふたする太郎。しかし彼は気が付いていないここが彼以外誰も居ない家だということを。
ピロン
プロテイン作成と言ってからたっぷり1分経ってパネルが現れた。
「何故時間差!?しかも1分も!」
ツッコミどころの多い仕様である。
何はともあれパネルを見る。
♦︎♦︎♦︎
作成可能プロテイン一覧
究極の筋肉 砂糖味
マッスルプロテイン
ダイエットプロテイン
ウエイトプロテイン
フレーバー
チョコ/バニラ/ヨーグルト/イチゴ/ プレーン /フルーツオレ
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「以外と少ないのか?」
あまり味と種類がそんなに無かったことに疑問を浮かべる太郎。
「まあ良い取り敢えずポチッとな。」
太郎は究極の筋肉をタップする。
♦︎♦︎♦︎
承知しました。
究極の筋肉を作成します。シェイカーはお付けしますか?
YES/NO
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「じゃあYESで。」
ポンッ!!
容量3リットルの缶と某有名プロテインメーカーのパッキンの着いていないシェイカーが出てきた。
「おっ!ちゃんと商品名まで書いてある。取り敢えず開けて飲んで見るか。」
いったん部屋を出て井戸の水を汲みに行く。
「いやあ懐かしいな。まんまジブリだよ。」
ポンプ式の井戸は団栗が良く拾える丘を思わせる古く味のあるいいものだった。
ザパァ
ペロッ
「うん見事な軟水だな。中々旨いな。これならプロテインにも合いそうだ。」
太郎は缶を開けるとプロテインをシェイカーの中に入れ井戸から汲んできた水を入れシェイクする。
シャカシャカシャカシャカ!
ぴちょ、
「あっやべ、振りすぎた。」
パッキンの着いていないシェイカーで強く振るとよくやる現象である。
まあ程よく溶けたので飲んでみる。
グイッ
「あっま!!」
そりゃあ砂糖味なのだから甘いのは当然である。
「けどコイツはそのまま売り出せるな。」
砂糖の代用品として生み出せばたいそう売れるであろう甘い味に商人としての大成を夢見る。
こうして未来設計図を描きながら太郎のスキル確認は終わった。