1のエンディング、2のオープニング
広場にそびえる、断・頭・台っ!!
厚い雲に覆われ、今にも降り出しそうな灰色の空が、雨の匂いを交えながら重く低く垂れ込める。
万人がひしめく処刑場に現れたのは鎖に繋がれた、見目にも麗しき妖艶な黒髪の美女。
身に付けたドレスとローブは、今でこそ泥にまみれ破れてはいるものの、その豪奢さは彼女の高貴な身分と気位の高さを表している。
大いなる魔力を封じられても、猛き心いまだ折れず。
死刑執行人ですら、まるで自らの従者のごとく引き連れて、彼女が鋭い眼光を辺りに巡らせると観客から怨嗟の怒号が沸き起こる。
その様子を満足そうに微笑みながら、エクレアは威風堂々と断頭台に登った。
*
ハーッハッハッ、ハッハッハーッ!
今まさに断頭台のミシミシと軋む階段を登る、妾の名は『エクレール=G=ショコラレート=バレンタイン』。
フランスミテーナ帝国の女帝にして、最強と謳われし『黒雷の魔女』。
逆らう者には死、刃向かう国には滅亡を与え、かつては中央の大陸を制覇して栄華の限りを尽くしたものよ。
さらに妾は、世界各国の王族を一堂に会し、王の王による王のための格闘大会、『FOK』を開催したのだ。
そして勝ち上がった屈強な王たちを、妾の手で完膚なきまでに叩きのめし、ひねり潰し、全ての王の心をボッキボキに砕いて、世界制覇まであと一歩のところまで迫ったのだが……。
たった一人の小娘に、妾は破れた。
それからは、凋落の一途。
魔力を奪われた妾は捕らわれ、帝国は滅んだ。
そして今日、衆目を集めるこの場所で妾は処刑される。
ギロチンの刃が無慈悲に輝く、断頭台に妾は首を固定される。
「何か言い残した事はあるか?」
処刑人からかけられる形式的な質問に、鼻を鳴らしながら思いを巡らせる。
全力を尽くして戦い破れた事に、悔いなどあろうはずも無い。
だがもう一度、妾を倒した小娘……、『聖姫騎士ミルク』こと『ミルクレープ=ホイップクリーム=ホワイト』と再戦の機会があるならば。
「もう一度、妾こそが最強である事を証明するための闘いの場を」
それを合図とばかりに、刃が雷鳴と共に妾の首に振り下ろされた。
これが、1の妾の最期。
そして、これから始まるのは、2の妾の物語……。