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その探偵、天才魔術師  作者: 深夜翔
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過去の記憶

【一之瀬結衣 自室】

「どうしようグレちゃん、私、亮さんに助けられたの二回目だったよ」

グレちゃんは、亮さんが預かってきた、もう片方の子猫です。灰色だからグレー…グレです。安直すぎたでしょうか。でももう決めてしまいましたしこれで行きます。

「って、今はそういう事が言いたいのではなく!」

少し落ち着きましょう。グレちゃんはまるで他人事のように、可愛らしいあくびをしています。のんきなものです。

「はあ…」

私がこんなに悩んでいるのにはもちろん理由があります。それは今日の戦いでの時です。

『すまん、俺がもっと早く助けられていれば…』

亮さんがラックさんに言った言葉。私はあの言葉に聞き覚えがありました。それもそのはずです。私は随分昔に亮さんに会っていて、しかも助けられたんですから。

今まで忘れていたのはその記憶が、思い出したくないものだったからです。

 

 五年前

私は、その時、まだ小学生でした。お母さんとお父さんと普通に暮らしていました。普通というのは、想像通り、テストでいい点だったら自慢したり、少し怒られて泣いたり、食事をしながら笑ったり…。でもそんな生活が突然、壊されたのです。

私はその日も普通に学校でした。普通に友達と話して、そのまま帰ってきました。玄関を開けようとして鍵がかかっていたので、キッチンの裏口から入りました。たまにある事だったので、おかしいとは思いませんでした。そして、リビングに行くと驚きました。知らない男の人が、お母さんに拳銃を向けていたのです。私は、びっくりして声を出しそうになりましたが、必死にこらえました。急いでキッチンの陰に隠れて、もう一度確認すると、お母さんと目があいました。お母さんは、小さく首を振りました。おそらく、隠れていなさいと言うような感じだったのでしょう。私は、警察に電話しようと思いました。このころ、携帯やスマホなどは持っていなかったので、近くにあった電話から警察にかけました。

その時のやり取りは全く覚えていません。私も必死でしたから。

しかし、警察に電話ができたことで、緊張が少し和らいでしまったのです。受話器を戻すときに小さな音が出てしまったのです。そして不幸なことに、その音は男に聞こえてしまいました。男はキッチンにいた私を見つけ、怒りをあらわにしました。その目は、完全に狂っている瞳でした。私は怖くて動けませんでした。

男はすぐに銃を発砲しました。私は死ぬと思いました。しかしその弾は…

「うっ」

お母さんが私を庇ったのです。

背中からたくさんの血が流れていました。頭が現実に追いつくと、

「おかあさん…おかあさん!」

私は夢中でお母さんに駆け寄り肩をゆすります。

「ゆ…い…無事ね…よかった…わ」

その時だけ、時間がゆっくり流れているように感じました。

「なんで、どうして」

「バカね…親が子を守るのは…当たり前でしょ…」

だんだんと弱弱しくなっていくお母さんを見ても、その時の私には何もできませんでした。

「ハハ、殺しちゃったよぉ」

そしてその男も待ってはくれませんでした。

すぐに拳銃を私に向けます。

「逃げ…て…」

そしてお母さんも力が抜け動かなくなってしまいました。もう訳が分からなくなり、私は動けませんでした。私はもう死ぬんだと、そう思いました。しかし、

「ぐはっ」

男が急に横へ吹き飛び、動かなくなりました。

何が起きたか分からない私が顔を上げた時、そこには知らないお兄さんが立っていました。

「君、大丈夫か」

そう言って駆け寄ってきたお兄さんの後ろからは、たくさんの大人の人が…おそらく警察の人たちが入ってきました。お兄さんはすぐにお母さんの首に手を当て、そして静かに目を閉じました。私はそれを見て、手遅れだったのだと、そう悟り自然と涙が出てきてしまいました。そしてその怒りは、助けてくれたお兄さんや、警察の人に当たってしまいます。

「なんで!なんでもっと早く…そしたらお母さんは…お母さんは!」

今考えてみれば、なんて八つ当たりだったのだろうとそう思うけど、その時の私にそんな余裕はなかったのです。そんな私を見て警察の人たちは困ったようにしていました。けれども、そのお兄さんは、静かに私を抱きしめて、

「すまなかった…俺がもっと早く助けられていれば…」

そんなことを言いました。

私は、より大きな声で泣きました。そして思いました。この人は、なんて優しいのだろうと。急いでやってきてくれたのに、子供のわがままに、真摯に向き合って、謝って。

そのあと、私は警察に保護されて、お父さんに無事に引き渡されました。

そんな、嫌な思い出の中に、少しの温かさを残してくれたあの人が亮さんだったのかもしれません。

もしそうならば、私は二度も亮さんに助けられたことになります。何も返せていないのに、二度も……。

 

「みゃあ~」

猫の声…うーん…ゆっくりと目を開けると、カーテンの隙間から日が照らしています。

「わ!私寝ちゃってた!」

どうやら、考え事をしながら寝てしまっていたようです。

「おはよう、グレ」

うーーん。大きく背伸びをして立ち上がります。こんな時間ですか…。

「大丈夫です、今の私には亮さんのために出来ることがあります」

たくさん助けられてばかりですが、少しでも、お返しをできたら。

「少しづつでも返していきましょう!」

私はグレを抱き上げて、リビングへと向かいます。

「流石にまだ起きてないですか」

リビングを開けるとそこには誰もいません。

「よーし!頑張るぞい!」

こんなことは一人の時しかできませんが。

朝ごはんの準備をしているとリビングの扉が開きました。

「おはようございます、亮さん」

「ああ、おはよう。流石、朝早いな。助かる」

少し眠そうですが、亮さんも今日は少し早いと感じました。

亮さんはキッチンに入ると、コーヒーの用意をし始めました。

「あ、私が」

「大丈夫だ、ついでに君の分も入れておこう」

そう言って二つ準備をしてくれました。

「…ありがとうございます」

素直に渡されたカップを受け取ると、亮さんは自分の机に移動して、新聞を読みだしました。

私も急いで朝ごはんの用意をします。

すると、またしても扉が開きました。

「ご主人、何故起こしてくれなかったんだ」

ラックさんです。人型ですが。

「どうした、問題があったか」

「問題だ、俺は猫の姿では、ここの扉は開けられないのだからな!」

「そうだったな、すまない」

そんなやり取りを見ていると、少しうれしくなってきます。

私は亮さんがいなければ、今ここに、こうしていることができなかったでしょう。亮さんに助けられたこの命で、しっかりと感謝をしなければいけないと思います。そんな私は無意識に言葉を発していました。

「ありがとうございます、亮さん…」

「どうした?」

亮さんが不思議そうに聞き返してきました。

「なんでもないです、そろそろできますよ」

私は照れ隠しに、そう言いました。

これは、声には出せませんが、これからもずっと思っていることでしょう。

今この時間が、私にとっては何よりの宝物です、と。

こんにちは、深夜翔です。

今回も読んでくれた方ありがとうございます。

とりあえず書いておいた分は全て投稿し終わりました。ここまで読んでいる方には感謝しかありません


それでですね…もちろんこれからも更新して行く予定なのですが、1つ新しい物語を書こうと思いまして、少しばかり更新が遅くなると思います。待っていてくれる方がいるかは分かりませんが、もしも次に見た時にはもう一度読んでやろうと思って頂けると嬉しいです。

まぁとりあえずこんな所ですかね。では次回も読んでくれると嬉しいです。ではまた…さらば!

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