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その探偵、天才魔術師  作者: 深夜翔
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昔からの1戦

 【神谷探偵事務所】

俺たちは帰ってくるとコンビニで買ってきた弁当で昼飯を済ませた。

今日はいろいろあって疲れていたのか一之瀬君は飯を食べた後すぐに部屋に戻ってしまったので、リビングには俺と奴の2人だ。

「それで?お前はいつまでここにいるつもりだ」

帰ってきてからもしれっと居座っている榊原に問う。

「今日は仕事があるのだろう?」

「いや、今日はお前に付き添うからと言ってあるから、今日はもう暇なんだよ。夕方までここで暇をつぶさせろよ」

「まったく、最近ずっといるではないか」

「いいだろー」

そう言ってソファでぐだっとしながら答える榊原。

もうこうなっては話を聞かないので放っておく。

俺はテレビをつけてニュースを見る。今週のニュース一覧と言ってキャスターがコメンテーターと一緒に一週間の出来事を振り返っているようだ。

強盗に空き巣、不正政治に殺人。目立つのはそのどれもに魔術が絡んでいるところか。

「なんだか暗いニュースばかりだよなあ」

榊原が何気なく言う。

「そんなものだろう、魔術は痕跡が残りにくく、発見も難しい。魔術が進歩していくほどに、犯罪は増えていくのだろうな」

悲しいことだが、仕方のないことなのだろう。犯罪者はそりゃ捕まりたくはないと思う。そしてそこに、捕まる可能性が下がる魔術(もの)があれば使いたくもなるだろう。

「そうだよな…魔術は便利な反面、危険も一緒に伴うわけだから、使用者によってどうなるかはわからないもんな…」

やはり警官としては納得がいかないようだ。少し空気が重くなる。まぁいつもは特に気にしないのだが、今は少し動きたい気分なので提案してみる。

「榊原、久しぶりに一戦やるか?」

突然の提案に一瞬驚いた榊原だが、その意味に気付いたのだろう。今は気づいて貰わないと困るのだが。

「いいな!さっきはあんまり動かなかったから消化不良だったんだ」

大きな声で言う。

俺たちは立ち上がると廊下へと歩を進め、階段の裏側の通路を曲がると地下への階段がある。そこを下っていくと体育館ほどの大きなスペースに出る。

「相変わらず家の地下にこんなものがあるなんて信じらんねえよなあ」

「研究には実際に試してみる事ほど大切な事は無い。身近に魔術を試せる場所があるのは便利だぞ」

この部屋は魔術の試し打ちなどができるようなスペースだ。壁には魔力を通さない特殊な素材が使われている。並の攻撃ではヒビひとつ出来やしない。

「俺は研究なんてしないからなぁ…」

昔から勉強よりも運動だったこいつらしい発言だな。訓練にもちょうどいいので、昔は榊原とよく模擬戦をしていた。

少し思い出してみるが今も昔も榊原は変わっていない。とにかく相手より早く動き拳で殴る。遠距離は殴って相殺する。同じ近距離ならゴリ押しで。

どう見ても脳筋以外の何者でも無いのだが、なんでも極めると中々の強さになるものだ。

「今日はどうする?魔術はありでいいか?」

俺は榊原に尋ねた。

俺と榊原では相性が悪い、普通にやっては俺の遠距離攻撃が有利すぎる。なので、使う魔術を決めて相手をする。俺の魔術は簡単に相殺できるほどヤワなもんじゃないからな。

「そうだな…今日は中級魔術まで使っていい事にしよう!」

「いいのかそれで」

その意見には少し驚いた。中級となると、火属性魔術ならば相殺どころか腕ごと吹っ飛ばせる威力のものがある。人相手に正面からぶつける事はしないが、牽制に使える上に爆風で動きを止めることもできるのだ。さすがに自重はするが脳筋の榊原からでは不利でしか無い。

「ああ、試したいこともあるしな!」

そう言って見たことのある手袋を取り出す。

「なんだ、お前が持っていたのかそれ」

「ああ、俺も一応衝撃魔術使えるからさ。痕跡消すの手伝っていたんだよ」

「そうか」

そう言いながら俺たちは距離をとる。

「行くぞ」

「おう!」

榊原は始まったとたん強化魔術をを使い、まっすぐ突っ込んでくる。俺は初級水魔術の、“水刃”を両サイドから放ちつつ横によける。

「おらあああ」

榊原は水刃にまっすぐ突っ込み、魔力で拳を強化して殴る。水刃ははじけ飛び、水がしたたり落ちる。相殺か…

「やはり脳筋だな…」

小さくつぶやき、同じように水刃を放ち続ける。しかしこれも同じようにはじき飛ばされる。

「どうした神谷!これじゃあ俺には効かないぜ!」

「そうだな」

榊原は加速魔術を発動し物凄い勢いで走ってくる。さらには強化魔術も使う。

二重構築か…奴も訓練はしているらしいな。

殴ろうとする榊原を真上に飛び回避すると中級水魔術“水爆弾”を榊原の上に発動する。すると大きな水の球が現れる。そして、

ボンッ

とてつもない水が部屋全体に吹き飛ぶ。俺は障壁を張りこれを防ぐ。

「強化魔術をなめるなあ」

まだまだとびしょ濡れになった榊原が突っ込む。直撃したはずだがまったくダメージはないようだ。

ここまでくると、強化魔術無しでも中々の防御力のうきんを誇れるのではと少し関心する。

しかし動きが単調で読みやすい。

「甘いな」

俺は足元に設置型の陣を張り、障壁を使って空中に退避する。

「!?」

榊原は勢いを殺せずに魔術陣へ突っ込む。もちろん魔術が発動する。

初級雷魔術“放電”

普通は少し感電する程度の威力だが、ここは水浸しだ。しかも榊原は濡れている。

つまり…

「ぐあっ」

もろに電気に感電し、膝をつく。これなら少しはダメージが入るだろう。何も考えずに水魔術をぶっぱなすほど俺はバカでは無い。

しばらく榊原は動かないので、これ以上は無理かと力を抜いた。

そして念の為に大丈夫かと様子を伺って俺は驚いた…榊原が少し光を帯びている。

「な!回復魔術…だと」

あの脳筋が?回復…だと。物理で殴るのが大好きなあいつが…。なるほど、あいつなりに勉強をしていたという事か。

まあやっと頭を使ったともいえるが。

「まだまだいけるぜ!」

復活した榊原はすぐに加速魔術で突っ込んでくる。しかし、またしても意外な事をする。榊原の横にそっくりの分身が出てきた。

幻惑魔術まで使えるようになっていたのか。

二人の榊原は両側から同時にパンチを繰り出す。

「障壁」

俺は二つの障壁を展開し防御をする。

ゴンッと拳が障壁に当たる。

「それを待っていたぜ!」

そう言った榊原が、そのまま拳を押し込み衝撃魔術を使う。手袋の効果も同時に発動する。障壁ももちろんの事魔力を使って展開しているものだ。よって、

パリーンッ

「ちっ…」

俺はすかさず上に飛びつつ距離をとる。手袋の効果で障壁を壊すとは…

「やるな、随分と勉強してきたようだ」

素直に褒める。流石に焦ったな…。

「あれでも攻撃できねえのか…早すぎるだろ」

「仕方ない、魔術が効かないとなるとやるしかないか」

もはや会話が成り立っていないがスルーだ。俺は加速魔術と強化魔術を使う。

「なんだ、神谷!お前も近距離の良さが分かってきたのか!」

「あほか」

俺は一気に踏み込む。ボンッッ。

俺以外の奴が見ていたとすれば、消えたように見えたかもしれない。

一瞬にして榊原の懐に飛び込むとストレートに正面から殴る。

「な、ちょっ」

榊原は速さについてこれずにもろにパンチを食らう。かろうじて手を交差し防御はしたようだ。しかしその衝撃までは殺せずに勢いよく壁まで吹き飛ぶ。

「それは強すぎるぜ…」

何とか立ち上がるが既にボロボロだ。

「まだ続けるか?」

俺は後ろから迫ってくる分身を殴り消滅させると、榊原に聞く。どうやら全ての策を使い切ったようだ。

「参った、降参だ。まったくどんだけ強いんだよ」

壁に寄りかかり手を挙げて首を振る。

榊原に近寄り回復魔術を使っていると、不思議そうに尋ねてくる。

「なんだよあの速さは、同じ魔術を使っていたのに見えなかったぞ」

「魔術を重ね掛けしていたからな」

「重ね掛け?」

「そうだ、加速魔術を二回使うと効果が重ね掛けされる。二重構築の応用だ」

「そんなことができるんだな…ちょっと待てじゃああの時お前は三重構築をしてたのか!?」

「まあそうだな」

すると、がっくりと肩を落とすと笑みを浮かべて榊原は言う。

「そらぁ勝てねえわけだ…」

少し落ち込んでいるようだ。

「まあそう落ち込むな、俺も結構危なかった。初めてだろう、あそこまで俺を追い詰めたのは」

俺は慰めも兼ねて称賛の言葉を贈る。事実、多少制限はしていたもののギリギリだったのだから。

「まあな!俺も結構成長しただろ!」

すぐに立ち直った。切り替えが早い奴だ。

「とりあえず戻るとするか」

これ以上褒めると調子に乗るので、早めに会話を切る。

そして、俺たちは1階に戻る。流石に動き過ぎた。

「シャワーくらい浴びていくか?」

「いいのか!そりゃあもちろん、使わせてもらうぜ」

「タオルは2段目に入ってるぞ」

「サンキュー」

俺はリビングに戻ることにする。

リビングの扉を開けるとキッチンに一之瀬君がいた。

俺に気付いた彼女がエプロン姿でキッチンから出てくる。近くまで来ると何やら不思議そうな顔で見つめてきた。

「あ、えっと…」

「すまんな、少し地下で訓練をしていた」

「地下…ですか」

「そういえば言ってなかったか、この事務所は地下があるんだ」

「そうなんですね」

「…今度見せてやるぞ」

 何気なく言うと、一之瀬君は少し赤くなる。

「…はい」

何故そんなに赤くなるのか分らんが、確かに彼女が来てから、この事務所やその周辺の案内をあまりしていなっかたような気がする。まあそんな暇がなかったとも言えるが。

「料理の準備か?」

キッチンを覗きつつ、エプロン姿なのを見て言う。

「そうです。一応今の内に準備をしておこうかと」

「助かる、俺は料理には疎くてな」

「い、いえ…大丈夫です。私料理は得意なんです」

「それは楽しみだ」

彼女はパタパタとキッチンに戻る。

俺は本棚に向かい本を一冊取り出すと、ソファに座り読書を始める。暇な時は読書をするに限る。

しばらくして、榊原がタオルで頭を拭きながら戻ってきた。まるでトレーニング後のおっさんのようだ。

「いやーシャワーサンキュー!おっ結衣ちゃん料理してんのか!」

いつもながら声がでかい。本を置き、視線を向ける。

「お前はいつまでいるんだ?」

もうすぐ夕方だ。まさか今日もここで飯を食べていく気だろうか。榊原が置いてあったスマホを手に取り、電源を入れるとティロンと音が鳴った。どうやらメッセージが来ていたようだ。

「如月からか…何かあったのかな」

榊原がスマホを開く。そして慌ててこちらを見る。

「やっべ、本部から連絡来てた、電源切ってたから気づかなかった。やらかした…」

「知らんわ、さっさと本部にかけたらどうだ」

榊原は慌てて電話をかける。

「榊原です、すみませんちょっと電源を切っていて。はい、はい、今ですか?大丈夫です!ちょうど近くにいるので、では」

電話を切るとほっとしたように胸をなでる。

「呼び出しか?」

「いや、近くで事件だってさ。人が足んないからいけるかってさ」

「そうか」

急いで準備をして「じゃあまた」と言うと榊原は出て行った。

後に残るのは穏やかな静寂である。

「うるさいのがいなくなると静かだな」

何となくつぶやく。

聞こえるのはキッチンの料理の音だけ。久しぶりに何もない時間だ。

俺は閉じた本を再度開き、読書を再開する。今は静かなこの時間を大切に使うとしよう。

今回はかなり短くなりました。

個人的にはこのくらいの方がいいと思ってますけど(楽)

とりあえず、どうも深夜翔です。

そして、長い話が好みの方、すみません。次回は割と長くなっているので期待しないで待っていてください(笑)

………あれですね、そろそろここに書くことも無くなって来た気がしますね(ネタ切れ)

まぁここまで読んでくれる方がいるか分からないですけど…読んでくれてる方は有難いです。

そんな感じで、次回も読んでくれると嬉しいです。

ではまた…さらば!

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