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きこりと妖精

作者: 古谷啓一

 昔々ある所にきこりが暮らしていました。きこりは真面目で働き者だったので村で人気者でしたが悪い隣人からは嫌われていました。

 ある日きこりは森で妖精と出会いました。その妖精は羽を木にぶつけてしまい怪我をしていたのできこりは持っていた薬をつけて治してあげました。

「きこりさんありがとう。お礼にいい物を見せてあげる」

 妖精はきこりを森の奥にある花畑に連れて行きました。綺麗な花畑を見て嬉しくなったきこりは言いました。

「妖精さん、僕は君を愛している、一緒に暮らそう」

「ありがとうきこりさん、でも一日考えさせてください。明日の夜またここで会いましょう」

 妖精はにっこりと笑い森の奥に去っていききこりも村に帰りました。しかし二人は悪い隣人が後を付けて来て話を盗み聞きしていた事に気が付きませんでした。隣人はこう思いました。

「いいなぁ、どうしてきこりばっかりいい思いをするんだ、邪魔してやる」

 次の日の夜、隣人はきこりが羨ましかったので森に松明で火をつけました。しかし悪い隣人はうっかり者だったので被っていた帽子と松明を森に落としてしまいます。きこりは村人から森が火事になっている事を聞いて大急ぎで森の入り口に向かいました。

「大変だ、妖精さんを助けに行かなくては」

 そこに村長が現れてきこりに言いました。

「まさか森に入る気じゃないだろうね?やめなさい、死ぬだけだ」

「村長さん、僕は行かなきゃならないんです」

「何故だね?」

「約束したからです」

 きこりは妖精を助ける為に水を被り燃える森の中に入って行きました。一方きこりを待つ妖精の前に鼠が現れました。

「おい妖精、火事だぞ、早く逃げろ」

「いいえ、私は逃げません」

「え?ど、どうしてだい?」

「きこりさんを待っているからです」

「バカだなぁ、どうせ来ないから早く逃げなよ」

「いいえ、きこりさんは必ず来ます」

「どうしてそう言い切れるんだい?」

「私を愛していると言ってくれたからです」

「はっはっは、言っているだけで思ってはいないんだよ。人間は自分が一番大事なんだから」

 鼠は笑いながら逃げていきました。その頃きこりは燃える森の中で悪い隣人の帽子と松明を見つけて隣人が火を付けた事を知りました。

「あいつのせいだったのか」

 きこりは戻って隣人を責めるか悩みますが妖精との約束を改めて思い出し森の奥へ進みました。すると途中で鼠が現れました。この鼠は人間が嫌いなので嘘をつきました。

「お前がきこりか、妖精はとっくに逃げたよ、残念だったね」

「いいや、妖精さんは絶対に待っているよ」

「ど、どうして分かるんだよ?」

「約束したからさ」

「バカだなぁ、約束は相手を騙す為にするんだよ」

「それは違うよ!妖精さんの笑顔は輝いていたもの」

「そんなの演技だよ、笑顔は相手を騙す為の仮面なんだよ!」

 その時です。鼠の後ろにあった木が倒れてきました。

「危ない!」

 きこりは鼠を突き飛ばして助けました。しかし腕に木の枝が刺さって怪我をしてしまいました。鼠は驚きながら言いました。

「ど、どうして助けてくれたんだよ?」

「別に理由なんてないよ、僕がしたかったからしただけだよ」

 きこりはそう言うと森の奥へ進んで行きました。一方悪い隣人は村の酒場でお酒を沢山飲んでいました。そして酔いが回って来たので「森を燃やしたのは俺なんだよ」と言ってしまい偶然通りかかった村長に聞かれてしまいました。村長は怒って言いました。

「村を追い出されたくなかったら火を消してきなさい」

 隣人は反省してバケツに水を汲むと火を消しに行きました。その頃きこりは困っていました。道が倒れた木に塞がれて通れなくなっていたからです。

「もうダメだ、、」

 さすがのきこりも心が折れて引き返そうとしました。するとさっきの鼠が現れました。

「おいきこり、こっちに近道があるぞ、ついて来い」

「君はさっきの鼠じゃないか、どうして僕を助けてくれるんだい?人間が嫌いなんだろ?」

「さあね、僕がしたかったからかな」

 鼠はにっこり笑ってきこりを近道に案内しました。

きこりは遂に花畑へ辿り着きました。妖精は満月に照らされながら振り向いて言いました。

「ありがとうきこりさん、本当に来てくれたのね」

 きこりは花畑を渡ると妖精の目を見つめにっこりと笑い抱き締めながら「愛している」と言いました。

妖精は「嬉しい」と言って涙を流しました。すると空から雨が降ってきました。二人の愛に心を打たれた神様が助ける為に雨を降らせたのです。またたく間に火は消えて森は元の姿に戻りました。そして二人は結ばれて仲良く幸せに暮らしました。


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