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恋獄  作者: みや
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クラスメイト

「朱莉ー!クラスでドッチボールやるって!外行く?」



「うーん..行くー!」



小学5年生のようやく涼しくなって来た秋の昼空。

私は友達に誘われて校庭に繰り出した。

元々私は、そこまで運動が得意というわけでもない。だから、出来れば外で、ましてや運動神経が丸わかってしまう球技などやりたいとは思わない。


でも、朱莉のクラスは、イジメ防止策としてスクールカーストを軽減させる為に、定期的にクラス全体で外で遊ぶという習慣がある。

これは特に先生が決めたことではなく、自分達で自主的に決めたこと。

なのだが、当然生徒が決める事は、暗黙の了解でいわゆる陽キャラの生徒が引っ張るもの。

イジメの打開策は、全員が仲良くなる事として、結果的に昼休みに皆で遊ぶというものに落ち着いた。


正直嫌だったけれど、否定する勇気も代替案も特に浮かばなかったから、仕方ないのだ。



「なんかさ、運動苦手な私達からすると、本当辛いよねー。」



「超わかる。まぁ、適当にやり過ごすしかないね」



そんな愚痴を言い合いながら、眩しい陽だまりの中へと出た。昼休みはさすがに人が多く、場所取りすらままならないくらいだったが、

既に何人かコートを作成してたり、そっちのけで先にキャッチボールを始める男子や、グループで固まって駄弁っている女子が見えた。

こういう光景を見ると、性格別れるなぁと思う。



先にコートを作っている何人かの中に、自分達も混ざり靴の裏に力を入れた時だった。



「おいふざけんなよ!」



そう声が聞こえた瞬間ボールが朱莉の身体に当たって跳ね返った。

言葉を発する間もない出来事で、ボールが来た方に目線を向けると、一人の女子がこちらに駆けてきた。



「ごめん!」



たった一言、そう言いながら当たったボールを回収して、元の場所に戻って行った。

遠くからちゃんとコントロールしろよとか、そんな会話が聞こえる。


なんだか無性に

腹が立った。



別にボールが来た事は仕方ない事だし、一言でもちゃんと謝ってきたのだから。何も咎める事もない筈なのに。

多分あの感情は、嫉妬だ。



女子なのに、当たり前のように男子の中に混じって、対等に渡り合っている。

かと言って、女子のグループからも嫌な噂を一切聞いた事はない。

クラス全員と自然な付き合いが出来ている子だった。


彼女の名前は、卯月 幸恵。

女の子だけど、いつも服装はわりと男の子っぽくて、アディダスとかのTシャツやズボンを好んで着ていた。

まぁ、活発な女子ならよくある事だろうと大して朱莉は気にとめていなかった。

ただ、スポーツ万能で、ヤンチャな性格寄りの幸恵を、ちょっぴり羨ましく思う事はあった。

だから、多分性格は合わない。

遠目に眺めるだけ。

たまたま班が一緒になったりする事もあったが、なるべく壁を作って接する事にしていた。



前に、うちの事嫌いなの?ってストレートに聞かれた事もあったけど、全力で否定した。

そりゃそこまで直球で聞いてくると思わなかったから、内心焦ったし、以来当たり障りなくを心掛けるようにはしている。




そんなこんなでドッチボールが始まった。

私はあくまで、逃げに徹する。

足は引っ張りたくない、でも目立ちたくない。

スポーツが苦手な生徒は大体このやり方でやり過ごす。

この日も順調だった。筈だったのに..。

残り内野も少なくなって来た頃だった。



「如月!!ボール取れよ!!」



男子の野次が飛んでくる。

そんな事言われても..,半ばやきになっていた。

だからかもしれない。


気付いたら目の前に、ボールを片手に取った卯山幸恵がいた。

投げられる。全力でやられたら、当たる。


そんな距離感。



一瞬彼女と目が合った。




パシッ


振りかぶった彼女からボールが放たれ、

私はそのボールを真っ直ぐに受け止めていた。

仲間の歓声が聞こえる。

ボールをパスしろと声が聞こえる。

私は無我夢中で、外野へボールを投げた。



そこからはあまりゲームの内容は覚えてない。初めて運動の得意な子から、ボールを受け止められたという達成感と高揚感。

結果負けてしまったが、その結果は私にとっては然程問題ではなかった。



昼休み後の余連が鳴り、友達と教室へ戻るところ、ふと思い返したのだ。



そう言えば、さっき卯山幸恵の投げたボール。

彼女の速球とは思えないくらい

簡単なボールだったような気がする。


手加減してくれたのだろうか...。




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