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帝都数学科学生会議・十二数将会議

 都内某所——帝数本部! 


「さてそれでは。帝都数学科学生会議・十二数将会議を始めよう……と言いたいところだが……」


 長テーブルの短辺、「お誕生席」に座った青年が会議の開始を宣言しようとして止め、テーブルを見渡した。豪華な椅子の半数以上が空いている。


「出席率が悪いぞ。三人は欠席の連絡を受けているが、他の四人はどうした。すでに定刻から三十分が過ぎているのだぞ。半分いないとはどういうことだ。いつものことながらひどいものだ」


 すると参加者の一人、席につかずに立ち、椅子の背に手をついてふらふらしている機巧狐耳と眼鏡をつけた女性が片手を挙げた。


「数学徒を十三人も集めるとなればこうなるのは当たり前だコャ。さっさと始めるのがいいコャ」


狐城(コジョウ) 蓮子(レンコ)

帝都数学科学生会議 第九数将

所属 帝国大学

専門分野 組合せ幾何学


「狐城さんの言う通りでありますね、立式会長。数学の人間は時間にルーズでありますから。夜の方が強い人も多いのでありましょう」


 ついで無造作に髪を伸ばし草で編まれた冠をかぶった大柄な者が手を挙げずに女性に同調する。


霧尾(キリオ) 桐仁(キリヒト)

帝都数学科学生会議 第十一数将

所属 学園都市大学

専門分野 計算機科学


「霧尾さん、発言する際は挙手を」


 会長・立式に最も近い席に座った小柄な影が戒めた。ポニーテールを高めに結い、ヴィクトリア朝メイド服を模したふりふりモノトーンに身を包んでいる。


(クルル) 環希(タマキ)

帝都数学科学生会議 第二数将

所属 帝国大学 情報科学科

専門分野 圏論


「夜の方が強い、とはオブラートに包んだ言い方だね。要は朝が弱いということだろうにね」


「加賀美さん、あなたもです。挙手してから発言を」


「はいはい、ごめんなさいね」


 ニヒルな笑みを浮かべつつ、枢の言葉に対しあしらうような謝罪を返した者が着ているのは、全身上から下まで真っ黒でありつつもふんだんにリボンやフリルがあしらわれたワンピースである。


加賀美(カガミ) 有理数(アリス)

帝都数学科学生会議 第六数将

所属 調布大学

専門分野 数値解析


「ん。今日集まったのは第二、四、六、九、十一。西向く侍——」


三田(サンタ) 留値愛(ルチア)

帝都数学科学生会議 第四数将

所属 オラ(ora)プロ(pro)ノビス(nobis)女子大学

専門分野 複素幾何学


「三田さん。挙手すればなんでも発言していい訳ではありません。小学校かここは」


 挙手した上でどうでもいいことを言う三田姉妹の姉・留値愛に対し枢は呆れ気味に注意した。ちなみに会議に三田姉妹が二人揃うことは滅多にない。ほとんどいつも片方だけが出席している。


「——さて、それでは」


 会長・立式が疲れた声を出した。


「——帝都数学科学生会議・十二数将会議を始めよう」


立式(リッシキ) 解斗(カイト)

帝都数学科学生会議 会長

所属 トキワの森大学

専門分野 数学


「まず前回欠席者のために前回の議題を振り返ろう。配布資料の一番をご覧いただきたい。合宿の行き先が決まった」


「おお」「会長やったね」「よくできた」「はなまるだコャ」「みなさん発言の際は挙手しなさい」


 真面目な話をする会長に対し茶化す声が上がる。会長はため息をついた。


「さて、仔細は資料を見てもらうとして、今回の議題に入ろう。二番をご覧いただきたい。都内各大学の学祭企画に関してだ。各論は総会で扱うことになるが大まかな方針はこの会議で決める。枢さん」


「はい。すでにご提出いただいた——中には提出していない方もいらっしゃいますが——データに従って、サクラの交換や展示テーマの調整などを進める予定です。提出していない方は速やかにご提出ください。誰とは言いませんけどわかっていますか加賀美さん」


「今メールしたね」


「はい。受け取りました。それで——」


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「——以上をもって十二数将会議を閉会します」


「ふう」「終わったコャー」「家帰って数学するか」


「狐城さん。最近木霊キャンパスはどうですか。変わりありませんか?」


 メイド・枢が所属大学を同じくする機巧狐耳の狐城に話しかける。二人は異なるキャンパスに通学しているのだ。


「コャ? ううん、上から降りてきた元先輩が少年を部屋に連れ込んでいるコャ」


「事案じゃないですか」


「所木由良のこと? 彼と少年なら大丈夫。だと思う」


 三田留値愛が割って入る。


「ご存知なんですか留値愛さん」


「この間会った。いい抱き心地。所木由良も位相空間に詳しい。色々教えてくれた」


「そうですか——留値愛さんのお気に召したのなら、私も久しぶりに木霊キャンパスまで足を運んでみましょうか」


「ん」


「所木なにがし——」


 枢は瞳に好戦的な光を宿らせた。


「——楽しませてくれればいいのですが」

帝都数学科学生会議 会員名鑑

(クルル) 環希(タマキ)

帝都数学科学生会議 第二数将

所属 帝国大学 情報科学科

専門分野 圏論


 数学科ではなく情報科学科の学生でありながら帝数の幹部に抜擢された天才。規格外の多い十二数将にあって、枢は常識を備えている。会議に全出席している唯一のメンバーでもある。議事録の作成を担当する。また組版に造詣が深く機関誌の編集を担っている。メイド服は趣味。サバットやカポエイラ、ムエタイ、テコンドーなどを基礎としたメイド拳法の使い手である。

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