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集合と位相とかわいい触手持ち少年  作者: LOVE坂 ひむな
第一章 集合と位相 位相パート裏面
8/28

集合と位相の果て 位相空間論のはじまり

【定理 正則 Lindelöf 空間は正規である 

系 正則第二可算空間は正規、よって完全正則、よって距離化可能である 

系 コンパクト Hausdorff 空間は正規である】


【証明  X を正則 Lindelöf 空間、F,G を X の閉集合で F∩G=Ø とする。F の各点 x について x∈U_x⊂Cl U_x⊂X-G となるような開集合 U_x が取れる。X は Lindelöf なので {U_x}_x∪{X-G} は可算部分被覆 {U_n}_n∪{X-G} をもつ。同様に G も F と交わらない閉包をもつ V_n たちにより被覆される。U'_n=U_n-(∪_i=1 ^n Cl V_i), V'_n=V_n-(∪_i=1 ^n Cl U_i) とおくとこれはそれぞれ F,G の開被覆である。そして U=∪_n U'_n と V=∪_n V'_n は交わらない。///】


「二番目の系の方は似たようなやり方で簡単にできるから省略な」


「省略多くなってきたな」


【定理 Hausdorff 空間のコンパクト部分集合は閉集合である】


「二周目前提だしこれも省略しようと思っていたが省略しすぎと言われてしまったからやろうか」


「言ってみるもんだな」


【証明 X を Hausdorff 空間、K⊂X をコンパクトとする。x∈X-K とする。k∈K に対して x∈U_k, k∈V_k, U∩V=Ø となるような開集合 U_k, V_k が存在する。{V_k} は K の開被覆をなすので有限部分被覆 {V_(k_i)}_i=0,……,n をもつ。U_(k_0)∩……∩U_(k_n) は x の近傍で K と交わらない。///】


「さっき省略したのもこのノリだ。これを使うと次の便利な定理が示せる」


【定理 コンパクト空間 X から Hausdorff 空間 Y への連続な全単射 f:X→Y は同相写像である


証明 閉写像であることを示す。F⊂X を閉集合とする。F はコンパクトである。f(F) はコンパクトで、Hausdorff 空間のコンパクト部分集合は閉なので f(F) は閉である。】


「あとは——局所コンパクトだな」


【定義 Hausdorff 空間 X が局所コンパクト ⇔ x∈X と x を含む開集合 U に対し、x∈V⊂U かつ Cl V がコンパクトとなるような V が存在する】


「Hausdorff じゃない空間については考えないのかい」


 ブォオオオオオオオオ!!!!!!!


「Hausdorff だと同値になるいくつかの似た性質がっ、Hausdorff を課さないと同値にならずっ、定義の仕方が定まっていないのですよっ」


「そうなんだよな」


【各点がその点を内点にもつコンパクト集合をもつ空間は局所コンパクトである。特にコンパクト空間は局所コンパクトである。】


「これもまあやればできる」


「やればできる——そう言ってやらない。数学ならいいけど——」


 そうですね俺が留年なんかしているのもやればできると言い訳しながらやってこなかったからかもしれませんね。まあ別にいい。


「この局所コンパクトは位相の理論を応用するときよく出てくるらしい」


「測度を定義するのにもあると便利。商写像と相性がいい。局所コンパクトなノルム線型空間は有限次元。色々ある」


「教科書に載っていないやつだとこれが重要かな」


【命題 Hausdorff 空間の稠密な局所コンパクト部分集合は開集合である】


「稠密ってなんだっけ」


「閉包が全体に一致することだな。つまり Hausdorff 空間の局所コンパクト部分集合はある開集合とある閉集合の交叉で書けるということになる」


【証明 X を Hausdorff 空間、Y を稠密な局所コンパクト部分集合とする。y∈Y は Y における開近傍 S で Cl_Y S がコンパクトなものをもつ。X の開集合 U が存在して S=U∩Y となる。U⊂Cl_X U=Cl_X S⊂Cl_Y S⊂Y で、S=U となる。つまり y∈U⊂Y となる。///】


 さて、こんなものかな。


「——感動的な定理で締めくくりというわけにはいかなかったが、『集合と位相』で扱うような内容をもう一度みるという観点で色々見てきたな。それもこれで終わりと言っていいだろう」


「距離空間の完備化やっ、写像空間っ、やってなくないですかっ!?」


「まあそうだけど——ともかくしょこら、お前に教えることは何もな——くもないが、これで俺のところにい続けなくてもいいわけだ」


「ああ——そうだね」


「短い間だが、楽しかったぞ」


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


 留年の悲しみとして。みなが自分を置いていくというものがある。いつか吟遊も歌っていた。後輩に知り合いができたと思ったら先輩になり研究に打ち込んだり大学を離れたりして疎遠になっていくのが寂しいと。俺は後輩が先輩になることは経験していないが、かつての級友と疎遠になるのはわかる。


 留年生に限らない。これは人間の悲しみだ。人生のスピードが違うがゆえの孤独という悲しみなのだ。わかっていた。位相は抽象数学の入り口で、普通の人間はいつか本業の数学に専念するため位相の探求を切り上げることになる。少年しょこらもそうだろう。俺はその一歩目に付き合えたことを満足に思うことにしよう。


 そして寮の自室、ここのところ二人でいて手狭だったのが急に広く感じられるようになった部屋に戻り、疲労のまま寝台に倒れ込んだのだった。

目が覚めると、腕の中にしょこらがいた。


「おはよう」


 いたずらっぽく笑みを浮かべている。


「いや何やってんの。なんでいるの」


「いちゃいけないのかい」


「い続けなくてもいいと言ったと思うが」


「い続けなくてもいいってことは、い続けてもいいってわけだ」


 あ、普通にい続ける気なんだ。なんか勝手にもう会えないと思っていた自分がアホみたいだな。アホみたいだという話でした。


(なんか気が向いたらパラコンパクトやコンパクト化、一様空間を扱う続きとか掌編(ショート・ストーリー)とかやります)

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