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また別の夏の日

なんかハーメルンって投稿サイトだと TeX コマンド出せるみたいなので、続きやるとしたらそっちでやります。

【定理 (Arhangel'skii) コンパクト第一可算 Hausdorff 空間 X の台集合は高々連続体の濃度を持つ】


「はい、証明していきます」


 この定理を示すよう、謎の無茶振りを受けていたのだった。数学者を四十年以上悩ませた問題である。


「方針としては、高々連続濃度集合の ω_1 増大列で全体を覆います。閉集合の ω_1 増大列について次の補題を用意しておきます」


【補題 第一可算空間 X の閉集合の増大列 (F_α : α<ω_1) について、その合併 F=∪_α F_α は閉集合である】


「これは、第一可算空間 では点列の収束について閉じていることで閉集合が特徴付けられるからです」


【証明.X で収束する F の点列 (a_n) を取る。各 n について a_n∈F_(α_n) となるような α_n が存在する。ここで ω_1 の正則性より α=sup α_n が存在し、すべての a_n は F_α に属する。よって閉集合 F_α で (a_n) は収束する。これは (a_n) が F 内で収束することを意味する //】


「そして高々連続濃度集合についても補題を用意します」


【補題 第一可算 Hausdorff 空間X の高々連続濃度部分集合 A に対し、X での A の閉包 Cl A は高々連続濃度を持つ】


「これは先の補題とだいたい同じようなやつかなあ」


 有理数(ありす)さんが相槌を打つ。実際、同じく点列を使った議論である。


「私は、わからない。証明して」


 留値愛(るちあ)さんから説明の要求があった。もちろん説明する。


【証明.A の点列全ての集合を S とおく。S の濃度は高々 c^ω=c すなわち連続である。Cl A の各点に対し、そこに収束する A の点列が少なくとも一つ存在する。それを選択すると Cl A から S への単射となる //】


「Hausdorff は、えーと、単射で使ったのか。一つの点列が二つ以上の点に収束しないからねえ」


「では主定理の証明に入ります」


【証明.閉集合の列 (X_α : α∈ω_1) を次のようなものとして定める。ただし各 x∈X について可算近傍基を固定し B_x とする。1) X_α の濃度は高々連続 2) ∪{B_x : x∈X_α} の有限部分集合の合併として書かれうる集合 U に対し、X_(α+1)⊂U ならば X⊂U となる。】


「この二番目のテクニカルそうな条件が、効いてくるんだろうね」


「ええ、作った集合列の合併が全体になることを示すのに使います」


【X の点を任意にとり X_0 とする.X_α が定まっているとき後続順序数 α+1 に対し X_(α+1) を定義したい。∪{B_x : x∈X_α} の有限部分集合の合併として書かれうる集合すべてを B_α と書く。B_α は高々連続濃度集合である。B_α の各元 U に対し、それが X 全体でなければ、その補集合の元 x_U を選ぶ。集合 {x_U : U∈B_α} は高々連続濃度集合である。上の補題より X_α∪ Cl{x_U : U∈B_α} は高々連続濃度集合である。これを X_(α+1) とする。条件 2) をも満たすことは明らかである。】


「力技だねえ。そういう U を持ってくれば x_U を元に持たないか全体を含むかの二択なわけだ。じゃあ極限順序数は? そこまでの合併取ればいいのかな」


「惜しいですね。合併とって、閉包をとります」


【極限順序数 α に対して各 β<α につき X_β が定まっているとき、X_α= Cl ∪{X_β: β<α} と定める。】


 合併をとったものは高々連続濃度集合なので、その閉包もまた高々連続濃度集合になるのだ。


「で、この合併が全体になるのかな。最初の補題を使えば閉集合にはなるよね」


「ええ、ということはコンパクトです」


【Y=∪{X_α : α∈ω_1} とおく。これは閉集合であり、したがってコンパクトである。Y=X を示すため、x∈X を Y が元に持たないとする。Hausdorff 性より各 y∈Y についてある開集合 U_y で y を元に持ち x を元に持たないものがある。これは B_y の元として取れる。Y の開被覆 {U_y : y∈Y} は有限部分被覆を持つ。それを {U_(y_i)} とする。各 y_i はある X_(α_i) の元である。その α_i たちの上限を α とする。X_α はすべての y_i を元に持ち、したがって B_α はすべての U_(y_i) を元に持つ。X_(α+1)⊂Y⊂∪{U_(y_i)} なので (X_α) の作り方から X⊂∪{U_(y_i)} となる。これは x が U_(y_i) の元でないとする仮定に反する。ゆえに Y=X となる ///】


「以上で証明は終わりです」


 有理数(ありす)さんは難しい顔で黒板を睨む。


「なーるほど、よくわからない集合族をとったらよくわからない感じで全体を覆っていい感じになるの、よくわからないねえ。これってコンパクトのところ弱められる? なんだっけ、Lindelöf ってやつかな」


「はい、そこで ω_1 の正則性をフルに使っていないんですよね。弱められます。そして第一可算とか Lindelöf の可算って部分を任意の基数 κ にしたとき、濃度 2^κ 以下って結論で定理が成り立ちます」


「それマジ? そういや言ってたねえ、これ解いた人は一般化までしたって」


「ん。位相、奥深」


「闇が深いとも言いますね」


 位相の闇は、深い。

こちらは完結設定とします。ありがとうございました。

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