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総会発表 リハーサル

「——以上で発表を終えます」


 リハーサルは、緊張して早口になったか予定より数分早く終わった。


「ご苦労。みんな、どうだ」


 帝数会長・立式が十二数将の方を見やる。定例会議では全員が揃うことはまずないという十二人だが、今日は揃っている。全員を知っている訳ではないが十二人いるので多分揃っているのだろう。ここでうち八人の承認が得られれば総会で発表ができる。


「第十二数将緋滝沢、アクセプト」 

「第十一数将霧尾 、アクセプト」 

 ……

「第五数将三田真理愛、アクセプト」 


「八人の承認を得たな。これで所木由良の発表は認めることとなる。一応他の四人も聞くか」


「第四数将三田留値愛、リジェクト」


「えっ」


「第三数将三辻、アクセプト」

「第二数将枢、アクセプト」

「第一数将春遠葛、アクセプト」


 こうして、アクセプト十一人リジェクト一人により俺は総会での発表の許可を得た。今日の通りのものを本番で見せても問題はないことになる。ただ、リジェクトの評価を下したのが三田姉だったというのが少し心に引っかかった。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「留値愛さん、なぜリジェクトなのか聞いてもいいですか」 


 総会で発表することになっているのは何も俺一人ではない。今日はその全員のリハーサルが行われるのだが、合間に休憩時間が挟まれる。その休憩時間で三田姉に尋ねてみた。


「んー、中身には問題ない。けどそれを信じる心が足りない」


「信じる心ですか」


 アツい概念が出てきたな。


「わかりやすく言うと、本当にその内容を面白いと思えているかということ——聴衆が面白いと思いそうなものを用意するのではなく、自分の面白さを聴衆に伝えるということ」


「よくわからないんですが、どうすればより良くなるんでしょうか。題材選びからやり直した方がいいんですかね」


「今日の題材は自分で面白いと思っていないの?」


「そんなことはありませんが」


 面白くないと思っているなら講演なんかするわけがない。


「なら、題材を変える必要はない。原稿を書き換える必要すらない。必要なのは心構え。この面白いものを一人でも多くに伝えたいという心。気が急くぐらいでちょうどいい。ただし語り口は冷静に——まあ今日ぐらいのペースなら大丈夫」


「なるほど。少しわかった気がします。でも、それでリジェクトしますか普通」


「すでに八人がアクセプトしていたから、問題ないと思った。それに——期待、してるから」


「そうですか。——期待、していてください」


 ——帝都数学科学生会議総会まで、あと 28 日。

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