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集合と位相とかわいい触手持ち少年  作者: LOVE坂 ひむな
第二章 エドワード・チェックの理論
18/28

無限への眺望と無限からの光芒 3

今回は定理実質一つしか示していませんね

 セミナーの再開だ。


「はいっというわけでね」


【定義 完全正則空間が絶対 Gδ であるとは、それと同相な空間を稠密部分集合として含むどの Hausdorff 空間においても、その集合が Gδ であること。

 Čech 完備であるとは、Stone-Čech コンパクト化の中で Gδ であることとする。】


【命題 完全正則空間 X のあるコンパクト化への包含写像 i:X→αX により誘導される連続写像 βi:βX→αX について、βi(βX-X)=αX-X となる。


証明 i の像は稠密で βi の像は稠密かつ閉つまり全体となる。ゆえに左辺は右辺を含む。

逆の包含が成り立たないと仮定するとある x∈βX-X が存在して βi(x)∈X となる。βi(x)≠x なので βi(x)∈U⊂Cl_βX U⊂βX-{x} となるような βX の開集合 U が存在する。X∩U は X の開集合である。一方 βi の連続性より βi(x)∈βi(Cl_βX (X-U))⊂Cl_αX (X-U) で、矛盾 ////】


【定理 完全正則空間 X について、次は同値である。

1 絶対 Gδ 

2 任意のコンパクト化 αX の中で X は Gδ である 

3 Čech 完備 

4 あるコンパクト化 αX の中で X は Gδ である


証明 1→2→3→4は明らかである。4→3→2→1を示す。


4→3 連続写像 βi:βX→αX による X という αX の Gδ 集合の逆像 X は Gδ である。

3→2 連続写像 βi:βX→αX による βX-X という σ コンパクト部分集合の像 αX-X は σ コンパクトである。

2→1】


「あー……」 


 と、ここで用意していた証明の不備に気づいた。


「どうかしましたか」 


「えっと、X を稠密に含む Y をとってその Stone-Čech コンパクト化を取ろうと思ったんですが、一般の Hausdorff 空間についてはコンパクト化ってできないなと気づきました。プラン B に行きます」


「プラン B があるとは頼もしいな。見せてもらおうか」


 相変わらず横柄な春遠葛だ。


「次を示します」


【定理 完全正則空間 X について、次は同値である。

1 絶対 Gδ 

2 あるコンパクト化 αX の中で X は Gδ である 

3 X の開被覆列 {u_n} が存在して、フィルター f は各 n について f∩u_n≠Ø であるならば X で触点をもつ】


 f とか u とかは本当は花文字の大文字を使って書いている。


「フィルターって有限交叉と包含で上とに閉じている空集合を元に持たない集合族ですよね。触点ってなんでしたっけ」


「えっと、フィルターの各元の閉包をとって全交叉をとったものの元です。書くと——」


【フィルター f の触点とは ∩{Cl F : F∈f} の点のことである。】


「この条件3は一見わかりづらいのですが、区間縮小法の一般化になっています。休憩前の距離空間で区間縮小法を使ったのと同様の論法を3から1では使うことになります」


「なるほど」「なるほどな」


【2→3 αX の開集合列 W_n によって X=∩_n W_n とする。自然数 n を固定する。各 x∈X について αX の開集合 W_x, Cl_αX W_x⊂W_n をとり、u_n={W_x∩X : x∈X} とおく。u_n が条件3を満たすことをいう。f を X のフィルターで f∩u_n≠Ø, n=1,2,… とする。


 f を含む極大フィルター h をとる。αX はコンパクトなので ∩{Cl_αX H : H∈h}≠Ø となる。この元 y をとる。全ての n についてある x_n が存在して U_(x_n)∈h となるから y∈Cl_αX U_(x_n)⊂Cl_αX W_x⊂W_n である。ゆえに y∈X となる。よって y∈∩{Cl_αX F : F∈f}∩X=∩{Cl_X F : F∈f} つまり y は f の触点となる。//


3→1 X⊂Y かつ Y の中で X は稠密とする。条件3の開被覆列 {u_n} をとる。各 U∈u_n について U'∩X=U なる Y の開集合 U' をとり、W_n=∪{U' : U∈u_n} とおく。X=∩W_n を示す。y∈∩W_n-X とする。y の Y における近傍全体を v とおく。


 {V∩X : V∈v} は有限交叉性を持ち空集合を元に持たない。各 n についてある U∈u_n が存在して U'∈v であるから {V∩X : V∈v} は各 n について u_n と交わる。よって {V∩X : V∈v} から生成される X のフィルター f はなんらかの触点 x をもつ。


 x≠y なのである V∈v が存在して Cl_Y V⊂Y-{x} となるが V∩X∈f なのでこれは x が触点であることに矛盾する。////】


「フー」


 話す予定ではなかったのだが、準備しておいてよかった。


「ん。Stone-Čech コンパクト化の普遍性、使ってない」


 そうなのだ。この論理構成では Stone-Čech コンパクト化の普遍性のありがたみがわからない。プラン A で行ければよかったのだが、破綻したからな。こういうこともままある。 


「じゃあ普遍性を含めたここまでの議論のありがたみを、具体例を通して見ていくことにします」

問題

・Čech 完備な空間の開部分集合は Čech 完備であることを示せ。 

・Čech 完備な空間の閉部分集合は Čech 完備であることを示せ。 

・Čech 完備な空間可算個の直積は Čech 完備であることを示せ。 

・Čech 完備な空間の Gδ 部分集合は Čech 完備であることを示せ。

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